ランサーズで81個もの候補を出してもらいつつロゴデザインをディレクションしたときの話
弊社のスマートフォンのハードウェア部分を一緒に開発している深センのOEM/ODMからパッケージや端末背面のデザインをいただき、とてもかっこよかったので感動しました。
ちなみに弊社のサービスのロゴはこちら。「燃えさかる太陽」をイメージしており、名刺交換する際によく「かっこいいですね!」と言っていただけることが多いです。
このようなデザインになったのは、2年前の8月当初からこのような使われ方を想定していたからです。ではどのようなデザインへの考え方、企画や準備、実際の製作をへてこのようなデザインができあがったのか紹介したいと思います。
デザインへの考え方
私は2012年から2014年までデザイン系の大学に所属しており、特にグラフィックデザインを集中して学習していました。主に南雲治嘉先生や藤巻英司先生、中村泰清先生、小藤先生などから教わっていました。
1年生の5月のフォトショもイラレも全然使えないときから座学をさぼってインターンシップに行き、そこで発生した分からないことを実学の授業で聞くようにしていました。その結果、1年間で製作した作品は60個ほどとなりました。
最初は各先生から課題に対して褒められるものの、だんだんといかに自分が作品製作に集中できないか、表現力がとぼしいか、逆に企画やディレクションが得意かが分かってきて、デザイナー側からは離れることを決めました。
正直小学校から授業中に落書きをしている人や自分の内面を伝える際に作品を通してしか伝えられないと固く決めている人の表現力には全然かないませんでした。それが分かってからは徹底的にディレクション、マーケティング、市場調査、社会・政治・歴史・文化などの勉強に集中していくこととなります。
さて、ここで学んだ「デザイン(Design)」とは何だったのでしょうか?その日本語訳は「設計」であり、一番わかりやすい領域は建築(Architecture)です。なぜなら「住む人の心地よさ(目的)に合わせてどんな部屋の構造(手段)にしたらいいか」を考えることがまさに設計だからです。南雲先生の言葉で言えば「デザインとは愛」です。なぜならある人のためを思って手段を講じるからです。
以下は各デザインの領域になりますが、このすべてのデザインに共通することとは「目的を達成するための手段作り」なのです。
※出典:UXについて理解が深まる!ユーザーエクスペリエンス概念図まとめ【全26枚】
グラフィックデザインにおける手段とは、色、レイアウト、フォント(文字)のことを言い、その特徴は「誰にどんな内容を視覚的に伝えるのか?」ということです。その歴史は古く、ラスコーの壁画にまでさかのぼります。
このような考え方を強くもっているからこそ、デジハリを中退したあとに入ったスタートアップでの広告運用の際にも、起業してサービスを考える際にも、常に顧客のことを第一に考えるようになっています。Airbnbの創業者はデザイナーであり、多くの人はその手段をクレイジーだと言いますが、デザイナーにとってはその手段は結果的に発見したにすぎません。
デザインの準備や企画
そんな考え方を持ったうえで、大学時代のインターンや課題での製作や今回紹介するランサーズでの製作依頼の前に、どんな準備や企画書を作ったのかを説明します。
上記で書いたようにデザインにおいて重要なのは「誰のためなのか?」ということです。例えば原宿にいる女子高生なのか、新橋のサラリーマンなのか。それを徹底的に具体的にすることがとても重要です。
その一番親しみのあるまとめ方は「5W2H」です。グラフィックデザインを通して考えてみます。
今回のランサーズの場合は以下のように設定しました。
ロゴを製作するにあたっては以下が基本知識となります。実は「ロゴ」にはロゴマーク、シンボルマーク、ロゴタイプに分けることができます。
出典:http://brandesign.jp/about-lo-ma.html
これは完全に私の価値観ですが、Facebook、Google、Amazonのようなロゴタイプだけのロゴデザインは否定的です。Appleのようなシンボルマークを中心としたロゴデザインが肯定的です。
また左右対称のシンボルマークに否定的です。なぜなら静的で動的ではないからです。動的でなければ印象付けることに弱くなってしまいます。
他にも白黒や2色での印刷を考慮しておくとか、たくさんの色を使うと視認性が低くなるため3色までにするとかもあります。
こういった準備をして実際に2017年08月29日、ランサーズで依頼を出しました。
ランサーズでの実際の製作過程
デザインを行う上でいつも使っている方法があります。それは「藤村龍至氏の超線形設計プロセス」です。
今までデザインプロセスは、「センスで決まる」と勘違いされるほどに、製作過程はブラックボックスで、最終成果の理由があいまいでよく分かりませんでした。途中製作状況を共有したとしても「なんか違うんだよなあ」はよくある話で、仕事の期限が延びていくのです。
それを解決するのがこのプロセスであり、簡単に言えば製作過程を徹底的に段階的にクライアントと共有し、連続的な対話を行い、少しずつ決めていきます。これを藤村さんは建築で行われますが、私はグラフィックデザインの場で使いました。
※藤村さんの製作プロセスの一例
例えば今回製作が終わるまでに17個もの追記をしています。もちろん「後戻りしない」なので「AではなくやっぱりB」というものではありません。例えば以下のような追記です。
追記からも分かるように、既存の太陽のロゴはたいてい立体的(影ができる)になったり、炎のゆらめきが複雑になってしまったりします。シンプルにしてしまうと簡単な丸や四方八方に光が伸びるだけになってしまうので、このように少しずつの修正が適していたのもあります。
この結果、81個もの提案を出していただき、製作依頼へのお気に入りは53個、閲覧数は1800となりました(これが他に比べて少ないのかもしれませんが、私の目的に対してではかなり良かったと思います)。
もちろんデザイナーによってはコミュニケーション量が多くなってしまうためこのようなやり方が合わない人も多くいると思います。それもあって製作費を通常よりも高く設定しているのです。(大学生のときの相場は1製作0.5-1万円でした)
最後に
デザインの定義を最初に説明したところで分かった方もいるかもしれませんが、これは伝統的なデザイン領域(建築、グラフィック、インダストリアル、エディトリアルなど)に限りません。目的と手段の組み合わせの数だけ「~~デザイン」は生まれ、人生もまたデザインできるのです。
そして常にデザインの良さは目的の分析精度の高さ(つまり「準備」)によって決まります。もちろん手段での技巧の高さも重要ですが、どんなに技術がすぐれていても、準備が不十分であれば何をしていいか、何が正解なのか分からなくなるのです。
今までやってきた常識や習慣が重要視されたり、質問しづらい雰囲気がったりすることで、どんな職業や業界でも目的はないがしろにされがちです。その結果、手段だけが重要視される「手段の目的化」が行われます。
私は「手段を目的化」する人とは一切付き合わないようにしていますが、それでも最近あったのは、知識を共有するセミナーの目的(受講生の知識が向上すること)よりも、セミナーの時間や質問数(という手段)が制限される場面に出くわしました。
いったい何が本当に重要なのか?第一の目的なのか?目的を大事にするデザインの思想がもっと広く普及することを願ってこのnoteを書きました。最後までお読みいただきありがとうございました。