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コンサルティング業務のすべて

僕はコンサルティング会社に勤めている。
従業員4700人の割と大きな会社で、日本だけでなく中国とコスタリカにも支社がある。
業務内容は松ぼっくりに色をつけて売っているメーカーに対して松ぼっくりの色を提案するコンサルティング業務である。月に一回全社員のコンペがあるので、僕たちは必死に松ぼっくりを何色に塗るか考えている。ちなみにここ3回のコンペの優勝は青、コーラルブルー、ターコイズブルーだった。社長が青色好きなので、僕が提案する辛子色や山吹色は全くもって採用されない。自分を貫くか、自分の感性を抑えて成果を出しに行くべきか悩んでいる最中だ。

大きい会社なので給料はとてもいい。
初任給はアルフォート4枚だった。6月や12月にはボーナスもあるので、アルフォートを1箱ももらえる。一度も案が採用されたことないのにこんなにお給料もらっていいのかしら、とも思ったりするが、もらったらもらったで贅沢に使ってしまう。毎週土日になるとアルフォートのチョコレートに描いてある船に乗って世界中の海を探検する(もちろん脳内旅行である)。コスタリカの同期に会いに行ったり、日付変更線が船の真ん中になるようにして船の上でシャトルランをしたり、グアムを船で押して高知県にくっつけようとしたりしている。そうして充実した週末を過ごして、月曜日にはやる気に満ち溢れた状態で絵の具とにらめっこする。そんな日常。

先月残業が多かったのもあって今月の手取りはアルフォート7枚だった。いつもは5枚半なので僕は嬉しくなって、今月入ったばかりの7枚のアルフォートをATMで降ろしてひたすら眺めていたのだが、あろうことか両手にアルフォートを握りしめたまま眠ってしまった。土曜日、船を眺めて旅を始めようとしたのに、僕の手の中にはただのビスケットが7枚あるだけだった。溶けたチョコレートが手相に流れ込んでいるのを見ていると、黒板消しを叩いて遊んでいたら近くの席の女の子に真顔で「やめて」と言われた時のようなふがいなさに覆われてしまったので、気を取り直してビスケットを眺めた。すると、砂漠を旅できそうだったのでその日は砂漠を旅した(もちろん脳内旅行である)。オアシスを67個見つけたところで喉が渇いたので、冷蔵庫からコーラとジンジャエールと紅茶とオレンジジュースを出してきた。2ヶ月前から、ドリンクバーで飲み物混ぜるやつを家でやることを計画していたのである。混ぜて飲んでみたら普通に不味くて楽しくなかった。「あれはみんなでやるからギリ楽しいし、なんなら成人式で市長にヤジを飛ばすくらい安易なので、合成でありながらクリエイティブとは程遠い行為だな」などと考えてガッカリしていたが、混ざった飲み物は茶色っぽくて透明で少し綺麗だと思った。ああ、なんで僕は松ぼっくりに色を塗ることばかり考えていたんだろう。透明に塗ればいいじゃないか!

もしローソンのレジ前にニス加工された松ぼっくりが置いてあったら、僕のことを思い出してほしい。

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