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業界の全体像を掴むWeb3勉強会イベントレポート
デジタル経済圏の発展やテクノロジーの進化によって、近年多くの企業から注目を集めるWeb3。
ブロックチェーン技術を活用したプロダクトや、NFTを用いたコミュニティ形成など、さまざまなユースケースが登場してきている一方で、概念的かつ理解が難しいとされるWeb3の全体像や勘所を掴むのは困難を伴います。
Web3で何ができるのか。なぜWeb3なのか。
いざ、企業がWeb3へ参入しようと画策しても、Web3に取り組む意義や価値を一足飛びに理解するのは容易なことではありません。
そんななか、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社と株式会社Sun Asteriskが2022年4月に共同で立ち上げたWeb3専業事業会社「Sony Network Communications Singapore Pte. Ltd.」は、去る9月20日に業界の全体像を掴むWeb3勉強会を実施。
Web3の基礎や概要、ユースケースを交えながら、Web3の重要要素をわかりやすく解説するイベントとなりました。
Web3時代の新たな“インフラ”を創るために設立されたグループ初のWeb3専業事業会社
冒頭ではソニーネットワークコミュニケーションズの植木氏が登壇し、Web3の基本的な概要について説明を行いました。
Web3の関連ワードをネット上で検索をすると、有象無象の情報が出てきますが、どうしても投機的な側面や詐欺的な話が目につくかもしれません。
しかし、テクノロジーとしてのブロックチェーンはWeb2(既存のWebサイトやWebサービス)と比べて大きな差別化ポイントがあります。
Sony Network Communications Singapore Pte. Ltd.では、“Web3時代の新たなインフラを創る”というパーパスのもと、下記のようなWeb3関連の業務受託やコンサルティングを主な事業として展開しています。
勉強会/セミナー/市場調査
戦略立案/事業計画
アプリ開発(NFTマーケットプレイス、ウォレット開発)
運営支援/PR支援(コミュニティ運営)
ソニーグループの映画や音楽、アニメなどのIPを活用したビジネスノウハウやR&Dで培ったブロックチェーン技術に、 Sun*の持つ新規事業立ち上げの知見を融合させ、Web3の新たな経済圏の創出に向けて取り組んでいるのです。
これまでの支援実績の一例としては以下になります。
Web3リテラシー向上のワークショップ
ブロックチェーンを活用した新規サービスのプランニングやアーキテクチャ設計
NFTマーケットプレイス構築に向けての市場調査やペルソナ設計
1990年代のインターネット黎明期のWeb1.0(静的かつ一方通行の情報発信)、そして2000年代から2020年ごろまでのWeb2(動的かつ双方向な情報発信)は管理者が必要な「中央集権型」なのに対し、管理者を必要としない「非中央集権型」がWeb3の大きな特徴となっています。
Web3の重要要素とユースケースの紹介
植木氏は、Web3における重要なキーワードとして、世界で最初に作られた暗号資産「ビットコイン」と、それに次ぐ時価総額2位の暗号資産「イーサリアム」、そして管理者不要で仲耐改ざん性や耐障害性に優れた「ブロックチェーン」を取り上げました。
また、ビットコインやイーサリアムのようなトークン一つひとつが同等の価値を持つ暗号資産に対し、トークンに個別の異なる価値を付与できる非代替性トークン「NFT」(Non-Fungible Token)についても触れました。
NFTに関してはデジタルアート以外にも、ゲームのアイテムやチケット、メンバーシップ会員権などさまざまな分野で応用されています。
Web3のビジネス事例については勝村氏が登壇し、各ポイントを抑えながらピックアップしていきました。
まずは既存のポイントサービスの会員基盤に対し、NFT広告やNFTクーポンといったマーケティング施策の可能性を明示しました。
次いで、現物(フィジカル)で価値のあるものをNFT化し、デジタル上で所有権を持つことができるRWA(リアルワールドアセット)の取り組みも、これから注目される分野になると説明しました。
SDGsトレンドにおいて「脱炭素社会」が叫ばれるなか、Web3技術を活用し、カーボンクレジットの創出や流通基盤の構築を行うReFi(Regenerative Finance)についても、企業単位での実証実験が行われています。
各種証明プロセスにおいてはDAO型のガバナンスモデルの実現可能性の検証を行うなど、ReFi領域のNFTやDAOの有効な活用を探ることを実証実験の中で取り組んでいます。
また、「ゲームやアニメのようなIPとNFTを絡めて、“Web3時代の新たなエンタメ”を創出する動きも出ている」と勝村氏は話し、Web3ビジネスの将来性を示しました。
会の後半には質疑応答の場が設けられ、その後の懇親会では参加者同士や担当者との交流が行われました。
まだまだビジネスのユースケースが少なく、さらには概念や勘所を押さえるのも難しいなかで、こうしたイベントを通して、Web3への興味・関心を高め、自社のビジネスへ取り入れるのを検討するといいかもしれません。
登壇者
株式会社Sun Asterisk Senior Principal Director/Executive Business Designer
香川弘樹
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 Web3事業室 室長
鈴木良平氏
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 Web3事業室 事業推進課
植木なつみ氏
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 Web3事業室 事業推進課
勝村智子氏