#10分で読める小説「”さばえ”という名前の子が福井県鯖江市に住んだらこうなった」
福井さばえ。名前を聞いた瞬間、多くの人が驚き、必ず聞いてくる。「鯖江出身なの?」と。だが、彼女の答えは決まっている。「いいえ、大分です!」と明るく答える。その瞬間、相手はさらに驚いた顔をする。このギャップがさばえの人生に影響を与えてきた。
さばえの名前の由来は、祖父である福井じいちゃんが影響している。じいちゃんは生まれも育ちも大分の漁師町で、釣り好きで知られていた。特にサバへの情熱はすさまじく、サバの話を始めたら止まらない。彼が大漁でサバを釣り上げた日、さばえがこの世に生を受けた。祖父はその運命的なタイミングに「サバが幸運を運んできた」と大はしゃぎし、冗談半分で「さばえ」と名付けようと提案した。
両親は最初こそ反対したが、じいちゃんの熱意に負け、ついに「福井さばえ」という名前が正式に決まった。祖父の思いと共にこの名前を持つことになった彼女だが、幼い頃はその名前に対して複雑な感情を抱いていた。
子ども時代のさばえ
さばえの幼少期は、祖父や両親と一緒に、静かな漁村で育った。毎日、潮の香りが漂い、海風が心地よく家を包み込む。彼女の家のすぐ近くには小さな漁港があり、日常の風景はいつも海と漁船、そして海鳥の鳴き声に彩られていた。
さばえは学校では少し目立つ存在だった。「福井さばえ」という名前は、他の子どもたちから見るととてもユニークで、時にはからかわれることもあった。「サバって魚のサバ?」や「なんでそんな名前なの?」と、純粋な好奇心とからかいが入り混じる質問が飛び交うたびに、さばえは少し傷つきながらも笑って答えていた。「うん、サバ好きなじいちゃんが決めたの!」
最初こそ戸惑いがあったが、次第にさばえはこの名前を自分のアイデンティティとして受け入れ始めた。だって、これが私なんだもの――そう思うと、周りの反応も気にならなくなっていった。
人生の転機
そんなさばえが大人になるにつれて、進学や就職の選択肢が広がっていった。彼女は漁師町から飛び出し、都会に憧れを抱いていた。大学卒業後、さばえは東京での就職活動を続けていたが、ある日、予想外のチャンスが訪れた。なんと福井県の「鯖江」という街での仕事のオファーが舞い込んできたのだ。
「え、鯖江?私の名前と同じ…?」さばえは信じられなかった。これが運命というものかと感じるほどの偶然だった。彼女が受けた仕事は、鯖江にある老舗メガネ会社の広報担当。面接では、社長から「名前に鯖江って入ってるなんて、運命だな!」と冗談まじりに言われ、さばえは苦笑いしながらその仕事を受け入れた。
鯖江での生活
鯖江での新生活が始まると、街の人々は彼女の名前を知るや否や、親しみを込めて接してくれるようになった。「まさか本当に"さばえ"って名前の人が鯖江に来るなんて!」と、彼女は街のちょっとした有名人になってしまった。
さばえは街のイベントに呼ばれることも増え、ラジオ番組に出演したり、商店街のポスターに登場したりするようになった。彼女は「鯖江の顔」として知られるようになり、鯖江の街を盛り上げるために尽力した。
そして、いつしか鯖江市長選に出馬するよう勧められる事態に。「さばえが市長になれば、もっと街が明るくなる!」という市民の声に押され、彼女はついに市長選挙に立候補することを決意する。
市長さばえ
選挙は予想以上に白熱したが、さばえの人気は絶大だった。「名前だけじゃない!さばえはこの街に幸運をもたらす!」と、市民たちの応援を受け、見事当選した。
市長となったさばえは、鯖江の街をさらに活気づけるために数々の施策を打ち出した。特に話題を呼んだのが、スーパーの「鯖コーナー」拡充政策だ。サバ愛が強すぎた結果、スーパーの魚コーナーがすべて「サバ専用」になったのだ。最初は反対の声もあったが、「サバ祭り」などのイベントを次々に開催し、鯖江のサバ人気は全国的に広がった。
さらに、さばえには熱狂的なファンが現れ、「さばえ教」なる信者グループまで誕生した。彼らは「サバは幸運を運んでくる」という教えを広め、さばえの鯖江市長としての業績を崇拝し始めた。
物語の結末
鯖江での生活を謳歌し、市民に愛され続けた福井さばえ。彼女はサバを愛する人々と共に、鯖江の街を一層明るく、楽しい場所に変えていった。そして、さばえは笑顔で言った。
「じいちゃん、やっぱりサバってすごいね!」
彼女の物語は、サバのように予測不能でありながら、誰もが笑顔になる素敵なストーリーとして語り継がれていくのだった。
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