【インタビュー】海外向けクラウドソーシングサイト「ワークソフト」CEO荒木成則氏
経営・ビジネスハック
2014.08.26
最近、「群衆」と「外注」を意味するクラウドソーシング(Crowdsourcing)が注目されている。海外、特に米国ではメジャーな存在になりつつある業界だが、日本ではまだスタートしたばかりだ。今回は、海外に強いクラウドソーシング企業、ワークシフト・ソリューションズの荒木さんにインタビューした。
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宗像:荒木さんは私と同じ大学院(ペンシルベニア大学ウォートン・スクール)でMBAを取得された先輩だったのですね。インタビューまで知りませんでした。
荒木:卒業年度がかなり違うので、あまり接点が無かったのかもしれませんね。同窓生とビジネスで偶然知り合えるのも、人生の面白いところです。
翻訳ツールを実装、海外への発注も簡単に
宗像:2014年の2月にサービスをリリースされたそうですが、内容を簡単に説明していただけますか?
荒木:弊社のサイト「ワークシフト」では、インターネット上で海外の人とも簡単に仕事の受発注ができるプラットフォームを提供しています。仕事を依頼したいクライアントとそれを受注できるフリーランサーが出会える場所です。サイト全体を日本語・英語・フランス語に対応させ、翻訳ツールなども装備するとともに、面倒な海外送金も弊社で対応しますので、海外との取引でも気兼ねなく使えます。
宗像:言葉も違い、会ったこともない、どんなスキルを持っているか分からない人に仕事を依頼するのは、リスクが高い気がするのですが……
荒木:何の情報も無いと、依頼する側だけでなく、仕事を請ける側もリスクが高くなってしまいます。ワークシフトでは仕事が終了した時点で、受注する側だけではなく、依頼する側も5つ星で評価されると共にコメントが書かれます。また、初めて仕事をする際には、メッセージでのやり取りや、スカイプでのインタビューなどを推奨しています。多くのトラブルの原因となりがちな支払いに関しては、契約をした時点で弊社が契約金額を仮預かりし、依頼者が納品物に満足した時点で、初めて受注者にお金を振り込みますので、双方にとって安心できる仕組みになっています。
宗像:ありそうでなかったサービスですね。どんなビジネスシーンで利用されるのですか?
荒木:海外現地調査、多言語翻訳、動画制作、ロゴやバナー制作、ウェブ制作など、様々なビジネスが弊社サイト内で成約しています。「来週から急遽マレーシアに出張だが、現地のアテンド兼アシスタントを募集したい」という依頼も、たった30分で成約しました。
宗像:なるほど。使い方によってはビジネスのあり方が変わるかもしれませんね。荒木さんは、なぜこのビジネスモデルを思いついたのですか?
米国で働き方の変化を体感したのがサービス立ち上げのきっかけ
荒木:私は米国の資産運用会社の日本代表をしていたことがあるのですが、その時に米国での働き方に驚きを覚えたのがキッカケです。主要な役職の人々が、本社の所在地であるコロラド州デンバーから遠く離れた地域で、自宅をベースにネットで仕事をしていたのです。例えば、本社CEOはNY、米国営業の責任者はLA、国際部門の責任者はシカゴとロンドン、といった具合です。そして週に1~2回程度、本社のあるデンバーで仕事をしていました。インターネットが普及したことで、オフィスに来ないと働けないという、今までのあり方が変わっていくように思えました。さらに、仕事の基本である人・物・お金のなかで、物やお金はインターネットで頻繁に取引されるようになってきていますが、「人(労働スキル)」だけは、まだあまり取引されていないと感じたことも理由です。
宗像:インターネットによって、働き方そのものが変わると感じたわけですね。荒木さんのキャリアを拝見すると、外資系金融でのご経験が長いのですが、なぜまったく違う分野でベンチャーをスタートされたのですか?
荒木:いろいろ理由はあるのですが、最も大きな理由は、「自分で会社を立ち上げ、チャレンジしないで人生を終えるのは嫌だ!」と心から思っていたからです。前職で国内の超富裕層(最低の預かり資産が10億円以上)向けにプライベートバンクの業務をしていたことがあるのですが、その時の顧客はほとんどが企業オーナーで、歳を重ねても本当に楽しそうに仕事をしていたのがとても印象的で、自分も年を取ったらこんな風になりたい、と思いました。まあ、みなさん大成功している方々なので、参考にならないかもしれませんが。また、金融ではなくIT業界を選んだのも、先ほどお話ししたようにそこに大きなチャンスがあると感じたからです。
起業によって変わった事とは?
宗像:ところで荒木さんは、現在3歳のお子さんもいらっしゃったと思うのですが、起業をするにあたっての不安とかはありませんでしたか?
荒木:もちろんありますよ! ただ、子供が小さく教育費が沢山かかるので、逆にインセンティブになっています(笑)体は年老いてきてはいますが、若い人やほかの起業家の方々と触れ合う機会が増えたことで心は若返っている気もしています。いつもポジティブに物事を考えることが大切ですね。
宗像:心は若く、確かにそれって大切ですね! ちなみに、起業して一番良かったことは何ですか?
荒木:やはり、サラリーマン時代とは違うのは、自分の時間を自由に使えることですね。朝起きてすぐに、子供におままごとをせがまれたり(笑)昔だったら、「あとで、あとで」なんて言って相手もできなかったでしょうが、今は30分ほど付き合っています。子供の成長を日々感じられるのは、仕事のモチベーションにもなります。ただし時間は有限ですので、昔より集中して業務を行っています。
宗像:優しいパパさんですね。ちなみに、現在日本にもクラウドソーシングのサービスはあると思うのですが、荒木さんは既存のサービスとどう差別化していきたいと考えていますか?
ターゲット層は、ベンチャーや海外展開を狙う日本企業
荒木:海外に一番力を入れています。日本の人口、特に若い人が減っている中で、日本の企業はもっと海外に進出したり、海外の人材を活用することが大切だと考えています。しかも、日本におけるクラウドソーシングはどうしても「簡単な仕事を安く外注する」というイメージが強いのですが、海外だと違います。クラウドソーシング上にはプロが沢山いて、高度で専門的な仕事も請け負っています。日本も、ゆくゆくはそうした方向性にもっていけたら面白いなと感じています。
宗像:新しいものを生み出す時のハードルが、一気に下がりそうですね。それでは、最後にこのサービスをどういう人に使っていただきたいと思っていますか?
荒木:人手が足りない起業したての人や、海外展開を目指している企業に使っていただきたいと思っています。最初から大きなお金を払って海外調査会社などに外注するのではなく、「まずは現地のことを知りたい」という方々にも活用してほしいと思っています。ぜひ実際にサイトを訪れて、どんな方々が登録しているか、イメージを膨らませていただけると嬉しいです。さらに、自分の活躍場所を海外にも探しているフリーランサーの方々にも登録いただきたいと思っております。実際、海外から日本への仕事依頼も掲載されていますよ。
宗像:荒木さん、ありがとうございました。確かに、今はインターネットで世界中が繋がっている時代ですからね。それにしても、メール一つで地球の裏側にいる人と一緒に仕事ができるってなんだかワクワクします。これからの荒木さんのご活躍をお祈りしています!
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