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変えない勇気、変わる表情と世界~ 「小川修司写真展女学生日和 その7」

 ギャラリーヨクトで1月18日(土)から開かれている「小川修司写真展 女学生日和 その7」を見に行った。

変えない勇気

 この写真展は小川修司さんが2017年から続けているプロジェクト。前回の「その6」について、昨年書かせていただいた。

 今回でこのプロジェクトを8年も続けていることになる。前回も同様のことを書いたが、本当に凄いことで、敬服するばかりだ。
 「変えていない」ということで言えば、小川さんは「その1」から継続してライカを使っていらっしゃるそうだ。レンズは50㎜。アングルもほぼ変わっていない。
 「最初に使ったのがライカだったから。(ライカは)お金もかかっていますし」と小川さんは話す。とはいえ、このライカを変わらず使っていること、実は大きなポイントだと思う。
 この写真展を見て、印象的なのは被写体の女学生の笑顔が自然なことだ。想像してほしい。大きなズームレンズを付けたフルサイズの一眼レフカメラで撮られる自分、そのカメラから受ける威圧感を。それに比べ、コンパクトなライカならどうだろう。威圧感が減ることが想像できる。ライカM3でポートレートを撮ったことがあるけど、「可愛い」となどと言われ、リラックスした表情の写真が撮れるものだ。
 小川さんは「渚で撮っているから、リラックスしている」とおっしゃるが、ライカで撮られるから自然な笑顔が出る、ということもあると思う。
 小川さんは女学生の目線で構えて撮るという。それも「その1」から変わっていないことだそう。前回、タイポロジー的な作品だと書いたが、この姿勢も継続されている。
 こうした「変えない」勇気をあらためて讃えたい。

変わる表情と世界

 一方で変わってきたこともある。女学生の表情がどこか柔らかくなっていることがそのひとつ。「撮る側が慣れてきた面が大きいと思う。一方で昔の緊張感のある写真を評価する人もいる」そうで、確かに撮影する側の「慣れ」は大きいのだろう。そこから思うのは、写真とは撮影する側を表すものでもある、ということ。進化する小川さんを写真を通して見る楽しみもあるというわけだ。
 また、今回はマスクの写真が一枚もないのも変化のひとつだ。前回の「その6」ではまだまだマスク姿の写真があった。これをみると、コロナ禍も終わったのかな、とホッとさせられる。
 この写真展のステートメントで小川さんは、

音楽や映画に小説。学生時代の僕(今もだが)はいつだって誰かの創作物に救われてきた。
誰かのつくった世界に救われてきた。

だから自分の手でつくるものも少しでも前向きなもの、人に勇気を与えられもの、「笑顔」の写真に拘ろうと。

小川 修司 写真展「渚にて 女学生日和 その7」〈写真展内容〉より抜粋

と書かれている。この写真展が写す笑顔に、どこか救われる気がしたのは自分だけではないだろう。小川さんからのメッセージをぜひ受け取ってほしい、と思う。

AIにできないこと

 小川さんと冗談で「今の時代、AIに海岸で女学生を撮った写真を出して、と言えば、撮れてしまうでしょうね」なんて話をした。
 でも、小川さんの写真はAIには絶対に撮れない。なぜならば、女学生との対話があるから。関係性から生まれる写真は、これまでなかった関係・つながりを創ることのできないAIには絶対にできないこと。さらに小川さんは女学生に「今、頑張っていることは何ですか?」を尋ね、収録し、その音声をQRコードで聴けるようにしている。AIに生の声を録ることはできない。
 関係性を築くことでしかできない写真を続けていらっしゃる点も小川さんを尊敬する理由のひとつだ。

 あと2年で10周年となるこのプロジェクト。写真集化も視野に入れているそう。今から楽しみであり、また、今後もこのプロジェクトが続くことを切に願いたい。

 「小川修司写真展 女学生日和 その7」は、1月26日(日)まで。

小川修司 写真展「女学生日和 その7」
会期:2025年1月18日(土)~1月26日(日)
   13:00-19:00
   入場無料・会期中無休

会場:ギャラリーヨクト
   〒160-0004 東京都新宿区四谷4-10 ユニヴェールビル102
   Tel:03-6380-1666

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