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眼に見える真実は「涙」――八木奈々×福島裕二写真展 「 と 」 - 新宿 北村写真機店
東京・原宿のアトリエYでの開催に続き、今日12月9日から新宿・北村写真機店で始まった、八木奈々×福島裕二写真展 「 と 」 - 新宿 北村写真機店を観に行ってきました。
ちなみに前回の記事はこちら。
北村写真機店のベースメントギャラリーでは、
・背中向きの写真
・横向きの写真
・厳しい表情の写真
が目立ちます。
アトリエYでの開催と比べて、写真から人を寄せ付けない厳しさ、悲しみを感じました。
特に印象的だったのは、9枚の正方形の写真で構成された組み写真。同じ9枚の正方形の組み写真は、アトリエYにも展示されています。しかし、北村写真機店のそれはバックが黒で、髪のまとめられていない、厳しい表情。アトリエYのそれはバックが白で、髪をまとめ、ピュアな印象を受けるもの。
ーーこの違いは何なのだろうか。北村写真機店の写真を見て、一番考えたことでした。
北村写真機店の9枚の組み写真の反対側には鏡が据え付けられています。そこには
「この写真展は“あなた”がいて、はじめて完成されます。
かがみにうつったあなたはどんな顔をしていますか?
かがみごしに見える私はどんな表情をしていますか?
あなたと私はどこか似ていると思うんです。
私の写真展を完成させてくれてありがとう。
「と」。」
と書かれています。
その鏡を見たとき、私はどんな表情をしただろう。きっと、その時していたのは、嬉しいはずなのに、どこかよそよそしい、余所行きの表情。
ーー八木さんのいう、「あなたと私はどこか似ていると思うんです」は、「余所行きの表情」なのかも知れない。余所行きの表情ーーそれは造った、造られた表情であり、“本音”を隠し、いくつもある“私”のうち、もっともありふれた“私”の表情ーーで構成されたのが、北村写真機店の写真なのかも知れない、そんなことを思いました。そういえば、北村写真機店では、大人っぽい、良い香りのアロマがたかれていました。これも「余所行き」の八木さんなのだろうか。
どうしても、その違いを確かめてみたくなり、あらためてアトリエYへ赴き、もう一度写真を見ます。アトリエYのそれはやはり、もう少しリラックスしたような表情を見せます。
こちらが本物の「八木奈々さん」なのだろうか。否、女優の顔、余所行きの顔も八木さんなはずです。
表と裏、内向けの顔=ほんの一秒でも私という人間に目を向けてくれた人たちへの顔と、余所行きの顔=“本音”を隠し、いくつもある“私”のうち、もっともありふれた“私”の顔……それが今回の展示を2カ所で行った意味なのかも知れない。
そう考えたときーー両展示に共通してあるのは「涙」の表情。つまり八木さんの「写真」という眼に見えるものにある真実は、「涙」だけなのかも知れない……そんなことを考えた展示でした。
そして、「と」の答えも分かったような気がします。
八木奈々さん、見る者=私たち「と」の関係でその存在が変わっていく、進んでいくーーすごい女優さんです。
両会場とも、開催は12月22日まで。