論文『P波減衰トモグラフィ探査法を用いた薬液改良地盤の出来形管理手法に関する検討』について
タイトル
P波減衰トモグラフィ探査法を用いた薬液改良地盤の出来形管理手法に関する検討
堤 彩人 他
五洋建設株式会社
目的
薬液改良地盤おける出来形の可視化
音響トモグラフィ探査
音響トモグラフィ探査は、音響波(疑似ランダム波)を用いる。P波の伝搬速度に加えて間隙中の粘性や散乱反射を受けて変化する減衰率の分布を計測できる技術である。
薬液改良地盤は、改良の前後で剛性の変化が小さいため、P波速度よりも減衰率による可視化が有効であることが模型実験の結果より示されている。
模型実験
模型実験では、薬液改良土と薬液のシリカ濃度をパラメータに薬液改良土のP波の応答特性と一軸圧縮強さの関係を確認した。
現地探査においては探査断面ごとに伝搬距離d、発振周波数fが異なるため、実験条件に依存しない評価指標として減衰率Q^-1が用いられる。
一軸圧縮試験では、シリカ濃度が高いほど、地盤の乾燥密度が大きいほど、砂の粒径が小さいほど一軸圧縮試験結果が大きくなった。
P波の応答特性では、P波の減衰率Q^-1の変化が大きいほど、薬液改良地盤のquとE50が大きくなる傾向が確認された。
実証実験
薬液改良後の残置される塩ビ管(VP40)を探査孔として使用して音響トモグラフィ探査により薬液改良地盤のP波の応答特性を計測した。
結果として薬液改良の前後では、P波の減衰率Q^-1が増加した。
ただし、模型実験と比べるとP波の減衰率Q^-1の増加の程度がやや小さくなった。
また、細粒分含有率の小さい地盤ほどP波の減衰率Q^-1の増加量が大きくなった。これは、細粒分が少ないほど、透水係数が大きく、薬液の充填性が高いためだと考えられる。
感想
物理探査は得られたデータの評価が難しいと感じていた。
本論文のように薬液改良前後の比較によって変化を捉える方法は結果の評価が行いやすく、説得力がある。
一方で、薬液が充填されたことは判断できるものの、得られた強度増加については実証実験の評価を行っていない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?