Aマッソ『滑稽』┃最悪で最高だった。
Aマッソのライブ『滑稽』をみた感想について書いていきます。こういった感想を書くのも、公開するのも初めてなので拙い内容かとは思いますが、ご容赦ください。
『滑稽』、良い意味でとても嫌な気持ちになる、最高のライブでした。
概要(ほぼネタバレなし)
テレビ東京・大森時生プロデューサーが映像・演出を手掛ける、お笑いコンビ「Aマッソ」出演のライブ『滑稽』を見に行きました。(2月25日の夜公演)
あのフェイクドキュメンタリー『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』でのタッグ。かつティザー映像の方向性も不気味な違和感を押し出したものだったため、ただのお笑いライブじゃなく、嫌な気持ちになるような、気味の悪い公演が見られるのでは!と思いいざ向かったのですが、予想を超えて最悪な気持ちになりました。(もちろんポジティブな意味です。)
こちらを巻き込むようなきつい展開はまさに求めていたものであり、あってほしくなかったものであり…。とにかくすごい公演が見られてよかったです。
本題(以下ネタバレあり)
以下ネタバレ目的ではありませんが、公演の内容についても言及しますので、ご注意ください。
どんな設定のライブだったか
設定について述べないと感想もうまくかけないので。結論からになってしまいますが、『滑稽』にて繰り広げられていたのは、「〈Affirmation〉という新興宗教的団体の催事」でした。〈Affirmation〉は生活を共にする共同体を各地に築いており、常に「笑顔」でいることを義務とします。「笑顔とは私。楽しいとは私。ああなんて滑稽なんだろう。らひずみー ふぁにずみー おーはぃでぃきあす」という合言葉?を皆が常々唱えており、個人的にはかなり怪しい、嫌な設定でした。
公演のスタッフさんがが着用しているマスクに笑顔が描かれており、そのマスクがわたし達にも配布されて着けるよう再三アナウンスされるなど、公演が始まる前から怪しさは漂っていたのですが…。(お笑いライブに慣れていないもので、もしかしてこのマスクどこでも渡される?と少し思ってしまいました。)見ている最中はかなりきつかったです。もう設定だけで最悪。
とっても嫌な構成について
ライブはAマッソのステージ(基本はコント)と、〈Affirmation〉に関する映像を交互に6本ずつ見ていく構成をとっています。映像とステージは一見関係ない内容ですが、いくつかリンクする箇所があり、見ているうちに自然と『滑稽』の設定に気づく仕組みになっています。一部はなんと現実(会場の要素)とつながるものもあり、まさに自分は『滑稽』に参加させられてしまった、巻き込まれてしまったという感覚を覚えました。
映像パートで流れるのは、〈Affirmation〉内で精神を壊し、廃人のようになってしまった女性〈市子〉の再現ドキュメンタリー。(1本目の映像は再現ではなく、〈Affirmation〉の団体紹介。)Aマッソのコントで笑って、怪しい組織での怪しい様子を見て、Aマッソのコントで笑って…。情緒がぶっ壊れるかと思いました。何がつながるんだ!?と勘ぐりながらコントを見始めるのに、疑念をふっとばすぐらいAマッソがメチャメチャ面白いんですよね。(お笑い芸人にこんなことを言うのは失礼な話ですが。)そのうち再現ドキュメンタリーの内容は過激になり、〈市子〉の精神が壊れていく過程を見せつけられます。同時にAマッソも5本目のステージでは〈市子〉をコントのモチーフに。正直倫理的には完全アウトで、内容にはもう笑えないのですが、加納さんの一発ギャグモノマネ(ちゃんぴおんずの掴み、ハリウッドザコシショウなど)が流石に面白くてどうしても笑ってしまう。でも笑いたくない…。ステージパートでは「笑い>嫌」だったのが、「笑い<<<<<<<嫌」に変わっていく。
きつかったです。かなり嫌でした。そして本当に最悪で最高だったのは、この『滑稽』とに私たちを参加させたどころか、巻き込むように「加担させた」ということです。
本当に嫌だったポイント
6本の映像のうちの5本目は、それまでの再現ドキュメンタリーのメイキング映像になっています。監督や、〈市子〉をはじめとする登場人物を演じた〈Affirmation〉内の人たちのインタビューが聞けるわけですが、皆が口を揃えて「〈市子〉を嘲笑ってほしい」と語ります。そこでいま私がAマッソに見事に笑わされ続けていたという事実は、『滑稽』においては〈市子〉への嘲笑に結びついていたことを確信しました。それまでもうっすら感じてはいましたが、自分がこの『滑稽』に参加してしまっただけではなく、加担してしまっている状況に大変気持ち悪くなりました。最高で最悪の構図。
「引き続き、ご協力お願いいたします。」の文字とともにメイキングは終了し、続く6本目のステージとして始まった漫才の締め「ご協力ありがとうございました」という挨拶。気持ち悪さはうなぎ登り。たぶんこれで終わりだよな、これ以上何を見せられるんだ?と構えたところに飛び込んできたのは、笑顔マスクを着けて笑う観客たちの映像、最悪だ。先ほど確信した最悪の状況をこれでもかと見せつけてくる。事前収録かもしれませんが、そんなことはもう問題ではないですよね。
最後は〈Affirmation〉の合言葉?とともに隠れていた祭壇のようなものが姿を見せ、その裏からだんだんと十字架がせり上がる。そこに磔になった〈市子〉。一番上まで上がりきったところで〈市子〉が笑い出して『滑稽』は終了。
きつい。どんな気持ちで見ろと言うんだ。最悪。最悪。最悪。
『滑稽』に加担しているとおそらく見ている全員が気づいているところで、思いっきり直接的な表現を使って徹底的に嫌な気持ちにさせてくる。
最悪で最高の公演でした。
他に気になった点、ちょっとだけ考察
再現ドキュメンタリー内で、〈市子〉や〈市子〉と親しかった男性がひどい目に合うシーンや、笑う観客の映像のところで、正直引くくらい笑っている人がちらほらいました。仕込みであってほしいです。流石にフィクションであることは理解していますが、倫理的にきついです…。たまらなく怖くなってしまうので、私はあの人たちを仕込みだと思うことにします。
あと映像内でのCGが割とチープだったのも、〈Affirmation〉制作という観点からでしょうか。今思うとステージの内容も再現ドキュメンタリー内の要素がちらほら。
あと今になって見る加納さんと大森さんの事前コメント、嫌すぎて最高。
おわりに
何度も書いたとおり、本当に最悪で最高でした。一体何が起こるんだ?たのしみだな、と思って会場に行ったら、倫理的に完全アウトな催事に加担させられた。嫌すぎる。
なんといってもAマッソが面白すぎるのが何よりもずるいですね…。何度つまらない人が出てきていればよかったと思ったか。(良くないですが。)Aマッソの最高なステージがなければ、嫌なフィクション映像見たなー程度だったかもしれないのに。面白かったなあ。ずるすぎる。
もし未視聴の方がいらっしゃいましたら、配信での購入を強くおすすめします!ただ嫌な気持ちにはなりがちだと思いますので、ご留意ください。