Alan Kayが大事なこと言ってる
アラン・ケイの書いたものが出てきた。日経サイエンスに掲載の論文「創造教育を手助けするコンピュータ」、彼の学習観を述べたものだ。その最後の頁にぼくが印をつけた文章があるて。なにやらすごいことを言っている。次だ。2022年3月6日(日)
「…博学な物理学者であるモリソン(Philip Morison)は、懐疑的な世界について次のような優れた見解をもっている。「本当の意味で信頼できるものとは、必要なときにはいつでも、それが正しいかどうかを調査<check>できることを前提としている。調査を行う機会<opportunity of checking>があることがなぜ信頼に足る証拠になるかといえば、そこには経験そのものやその経験を整理するための議論といった、私たちが互いに共有しなければならないものがあり、その点でただの裏付のない断定とは違うからだ」。…」
(< >は須永が加筆)
アラン・ケイ「創造教育を手助けするコンピュータ」日経サイエンス 1991年11月号、p.124-134(p.134)
原著は Alan Kay "Computers, Networks and Education" Scientific American, September 1991(この頃、Apple Computer のフェロー)
この原著論文は、アラン・ケイの仕事場 Viewpoints Research Institute のサイトで見ることができる。
もうひとつ
Alan Kay は学ぶことについてこんなことも書いている。2022年3月11日(金)
優れた教育環境のために何が必要か
Jerome S. Bruner の言うように、私たちが「世界について知ったり考えたりするにはいくつものやり方がある」
・「ひとりひとりが全力で自分なりの現実感を構築」すること。「文学的に言えば、自己を形成」すること
to construct our own version of reality by main force
・「新しい精神のブロック、つまり新しい思考の方法を考案することも多いに可能」である
devising new mental bricks, a new way of thinking
・「それによって達成できる理解の範囲が(中略)広がる」
that can enormously expand the understandings we can attain
・「新しい精神のブロックから考案された非常に重要な構造の多くは習得するのに相当の努力を要するはずだ。」
・「音楽、数学、科学、そして人間の権利は、一層ずつ積み上げ統合しなければならない思考体系のほんの一部に過ぎない」
・「そのような構築物を理解したり想像したりするのは難しいが、多大の努力を要するからといって避けて通るわけにはいかない」
・「興味深い領域へより深く探求するための刺激剤として、困難を追い求めるべきである」
・「すべてを容易で楽しいものにしようとする教育体系では、偶然から多くの重要な学習を得ることはできないだろう」
much important learning from happening
アラン・ケイ「創造教育を手助けするコンピュータ」日経サイエンス 1991年11月号、p.124-134(p.126-127)
GIGA School?
GIGA school というものが始まったようだ。横浜市立N小学校の校長T先生から「いっしょにやらない」と2021年の夏に誘われた。昔つくったアプリ「Zuzie(目で見て動かして考える表現ツール)」できっといい授業ができると思ってYesと返事。でも、子ども達が手にしたタブレットでZuzieが動かない。仲間の横川耕二さんがScratchの導入を手伝っている。
やってみたいことはいろいろあるが、まずはT先生と出会った先生がたに、Alan Kayのこの論述を読んでもらおうと思った。
先生達に向け、ここがポイントというところを抜き書きしてみる。
・「この学校はすでにすばらしいものであったので、私たちと校長のブラットは、技術を導入することによりこれを改善しようなどとは考えなかった。」(p.129)
・「支援メディアとしてコンピュータがもつ価値をもっとよく理解しようとしたのである。」
・「なぜ直接演奏する興奮を「音楽鑑賞」で置き換えてしまうのであろうか。子供たちが全世界を実際に創造し、幸せな気分に浸れる(そしてなにより効果が得られる)ときに、なぜ「科学と数学の鑑賞」を教えるのだろうか。」(p.130)
・「スクールは何よりも直接的でなければならない。」(p.130)