今治を海のシリコンバレーに!「最新テクノロジーを活用した海事業界の未来に向けて」レポート
このレポートは、2024年7月22日に今治市とSUNABACOで行われた今治イノベーションコンソーシアム開催のイベント、今治の海事産業の未来へ繋ぐ架け橋となる「最新テクノロジーを活用した海事産業の未来に向けて」の様子をお届けします。
本イベントには徳永今治市長をはじめとし、特別ゲストとしてモザンビーク共和国運輸通信大臣であるマテウス・マガラ閣下、また、日本植物燃料 代表取締役 合田真氏、伊藤忠商事 船舶海洋部長 尾関洋彦氏にもご講演いただきました。
ご来場の皆様においては、今治市の造船会社だけでなく、全国各地から造船業、建設業、金融業、メディアなど業界問わず、ご参加いただきました。
「今治市の海事産業の現状と課題」
平成の大合併から20年経過した今治市。今治市には、海運業・造船業・舶用工業といった産業が集積しており、更には、金融機関(ファイナンス)や保険企業なども含めると、世界でも数少ない、海事クラスターが形成されております。
しかし20年経過し、更に先の20年を考えた際、技術者における高齢化、継承者不足が進む中で、何か新しい付加価値を生み出す必要があると考えました。
課題を脱却するにはどうすればよいのか、そんな中、今治市へ誘致したのが株式会社SUNABACOになります。
「海のシリコンバレー」構想
今治市の現状、課題、産業について徳永市長と話を進めていく中で、ITの導入による新しい海事産業の創出と世界貢献の可能性が見出され、シリコンバレーのように人材と投資を集積することで新産業が次々と誕生してくるのではないかという考えから生まれたのが、「海事産業」×「IT」という海のシリコンバレー構想です。
海のシリコンバレー構想は、海事協会がGHG(温室効果ガス)を2050年までにゼロにするという国際的な目標がある中で、新たな海事業界の産業の勝機になるのではないかと考えています。
従来のやり方ではGHG温暖化ガスをゼロにしていくことはなかなか難しい中で、ITやソフトウェアを使っていくことで、これから少子高齢化の中でも、国際的に戦えるような産業を今治で作れるのではないかと思い取り組んでおります。
それはまるでソフトウェアの産業がシリコンバレーで集積され世界を牽引する産業になったように、今治というこの地で、「海事産業」×「IT」海のシリコンバレーを目指しております。
直近の海事クラスター中核の市場規模は8,3兆円と言われております。
その中で従来のプレイヤーはほとんど、ITに強みを持つ企業は多くありません。日本の海事関係もなかなかITとうまく連携できていない状況です。
「海事産業」×「IT」の連携ができるのは、造船の皆様そして船主の皆様、船用品の皆様が集積されている今治だからこそできる新しい産業であり、海のシリコンバレー今治ならではの場の創造、そして広く人を集積投資とアライアンスを組むことで、新たな国際的な競争力を持つことができるのではと考えております。
モザンビーク共和国との協力
モザンビーク共和国は気候変動の影響を強く受ける国で、エネルギー問題は国の発展や生存にとって極めて重要です。
現在、グリーンエネルギーや交通計画を推進しており、これによりインフラ開発や産業発展を進めています。モザンビーク共和国は南アフリカに位置し、2,700kmの海岸線を持つ資源豊かな国であり、鉄道や交通回廊を通じて内陸国とも繋がっている、重要な回廊拠点となっています。
モザンビーク共和国のエネルギー政策は、ユニバーサルアクセスの達成、国内外への安定的なエネルギー供給、グリーンエネルギーの輸出に重点を置いており、具体的には、最新の再生可能エネルギーシステム、バイオエネルギーの利用、工業化の推進、交通システムの改善を図っています。
さらに、気候変動対策と食料生産のバランスを取ることが重要であると考え、これを踏まえた上で国内外のパートナーシップを強化し、持続可能な発展を目指しています。
植物油燃料「ジャトロファ」の可能性
GHG温暖化ガスを2050年までにゼロにするという国際的な目標に向けて、カーボンニュートラルなエネルギーへの期待が高まっています。
日本植物燃料の合田氏は、ジャトロファという植物から作る植物油燃料の可能性について説明しました。
ジャトロファは梅より大きな実をつけ、乾燥地や半乾燥地でよく育つ、毒性のある非可食の植物で、その種子から油を抽出します。ジャトロファは生育範囲が広く、どこででも育つという利点があります。生育に適したジャトロファベルトというものがあり、ベルト状にあるモザンビーク共和国にて植物油脂を生産販売する上で、世界中から遺伝資源を集め、生産性の高い品種を育成してきました。これにより、1,500果実以上を収穫できる品種を開発し、収量は従来の約70倍に達しました。
「戦争が起きない世界を作るにはどうしたらいいのか。足りなかったら、殺し合って奪い合うのではなく、協力して資源をもっと増やしましょう。そういう世界が将来の可能性として、未来を開くような可能性が植物にはある。」
航空業界では持続可能な航空燃料(SAF)の義務化が進んでおり、バイオ燃料の需要はますます高まっています。これにより、持続可能なエネルギー供給の一環として、ジャトロファの可能性は広がっています。ジャトロファを含むバイオ燃料は、持続可能な社会の実現に向けた一歩として、今後のエネルギー政策において重要な役割を果たすと考えています。
予期せぬ結果をビジネスに生かす方法
当初の計画が上手くいかなくても、その過程で新しい経営資源や知見を得ることができる。それらを組み合わせれば、思わぬ成功のチャンスが訪れる可能性がある。
ビジネスや日常生活では、計画通りに物事が進まないことがよくあります。例えば、目標が達成できないことや、逆に予想外の成功を収めることがあります。
尾関氏が携わっているマリンネットの事例では、当初は船舶の売買を主としたオンラインビジネスの成功を目指しましたが、結果として船価評価のコンサルティングサービスが成功しました。これは、予想外の環境変化や学び、外部からのアドバイスが影響したからです。
ビジネス成功のためには、「資源」「学習」「誘発」の三つが重要です。資源はビジネス開始時に必要なもの、学習は失敗から得た知識、誘発は他者の影響で生まれた新しいチャンスを指します。失敗を恐れず、新たな知見や資源を活用することで、予期しない成功を引き寄せることができます。
挑戦し続けることで、殻を破り、新しいビジネスチャンスを見つけることができる。
失敗も学びの一部として、次に生かす姿勢が大切になります。
パネルディスカッション
さらに、パネルディスカッションでは、モデレーターを中村が務め、徳永今治市長、合田氏、双輝汽船の川上社長、尾関氏が参加し、今治市の海事産業の未来について議論しました。
議論では、海事産業のデジタル化、自動運航技術、環境対応燃料など、具体的な技術革新の可能性も取り上げられました。また、モザンビークとの経済協力や人材交流の可能性についても言及がありました。
参加者たちは、今治市の持つ海事産業の集積を活かし、ITやスタートアップの力を借りて新たな産業やビジネスモデルを生み出す可能性に期待を寄せております。
行政、企業、スタートアップが協力して「海のシリコンバレー」を実現させる重要性が確認され、今後の具体的な行動につながる議論となりました。
ここから始まり進んでいく、「海のシリコンバレー」の街、今治。
今後も是非、ご注目ください。
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