【北アルプス縦走 5Days】Day.4 黒部五郎小屋テント場〜薬師岳山荘
稜線を歩き続ける日 その2
美しい稜線歩きは飽きません。
初の小屋迫、そしてその後の行程において決定した日。
行程
①福岡空港→上高地→徳沢キャンプ場
②徳沢キャンプ場→槍ヶ岳山荘テント場
③槍ヶ岳山荘テント場→黒部五郎小屋テント場
→④黒部五郎小屋テント場→薬師岳山荘(小屋泊)
⑤薬師岳山荘→五色ヶ原テント場
⑥五色ヶ原テント場→雷鳥沢キャンプ場(立山経由)
⑦雷鳥沢キャンプ場→立山駅、下山
前回(3日目)
黒部五郎小屋〜赤木岳
起きて最初にジッパーに手を伸ばし、少しだけ隙間を作って空を見た。雨は降っていないが星はひとつもない。幕内に触れると若干結露している。問題なく進めそうだ。
後以外の三方はテントに囲まれていた。そっと静かにお湯を沸かし、その後撤収準備を始める。幕外を見渡すと3時頃には活動を始めた人が半分といったところだった。
3時半、撤収のち水を補給して移動開始。
まだ真っ暗な登山道を歩き、黒部五郎岳へ。
黒部五郎岳と言えばあの雄大なカールがすぐに浮かぶ。そこを歩きたかった。道沿いに水の流れが多いため稜線とは植生が異なり、緑が濃い。
歩けど周囲は影に囲まれており何も見えない。遠くの山影を見るとライトがチカチカと見える。何の山かはわからないけど登山者の朝は早い。
カールはこの先か?とガレた道を進むうちに少しずつ明るくなる。周囲を見渡すと、朧げに岩肌が見える。残雪だ。気づく。ここがカールだ。
急登を進むうち全景が見えた。急峻が生む疎な礫の線が美しかった。じきに朝焼けが始まる。このとき、不意に過去のことや今のこと。複数の時制が不意に繋がり、感極まる直前になった。
黒部五郎の肩には荷物をデポできる場所があるので、軽くなった体で山頂へ5分ほど登る。積載500g、本当に笑えるくらい足取りが軽い。全然息が切れない。
朝焼けと共に槍ヶ岳も見えた。なるほど北アルプスのシンボルのひとつなわけだ、と実感した。
進行方向を見ると雲海の手前には延々続く稜線、その先に薬師岳が見えた。ガスは数分おきに濃さが変わり、薄雲から濃霧になった。
前日同様に稜線をひたすら進む。ハイマツのラインを人が歩く姿が小さく見える。あぁ、いま北アルプスを歩いているんだな、という実感が沸いた。もし今年がTJARの年じゃなかったとしても、ここを歩きたかった。だからこそ黒部五郎ルートを選んだし、それは間違っていなかった。
長い稜線歩きとなるため、やはり何回も会うことになる人が何名かいた。時々ペースを合わせ、時々気ままに先行する。稜線はバリエーションに富んでいるため楽しく進む。
この区間は槍ヶ岳周辺に比べると難易度はライトで、トレイルランニング寄りだったりハイカー寄りだったりの雰囲気の人が多かった。
そんな中、高校生(山岳部と思われる)の団体と会う。頭より遥かに高い荷物は30kgで期間は2週間?ほどかけ周っているそうだ。歩荷さんのようなシルエットで坂を登るのは相当しんどそうである。でも、それは大切な思い出になるよ。およそ倍以上の年齢、およそ半分の重量のくせに泣きっ面かましてごめんなさい。
赤木岳〜薬師岳小屋
ゆっくりと景色を楽しみつつ、左右に笹藪が広がる区間を歩いていると、この日最もうれしかった瞬間が訪れた。ガサガサという音に加えてなにやら可愛らしい鳴き声が聞こえる。あぁ、雷鳥かな?とその場に立ち止まり観察すると…
雷鳥に加えてまさかオコジョと会えるとは…
写真なので伝わらないけど、ちょこっと顔を出してはクルクル鳴き声を鳴らしあちこちに移動、またちょこっと覗いては…を素早く延々と繰り返す。さらには少し高さのあるハイマツの枝に登ってこちらを観察してくる!1mもない近さ。
雷鳥もかわいいけどオコジョはそれを超えたかわいさ。見た目だけじゃなく仕草までかわいい。幸せな5分間でした。
そしてその5分後に雷鳥と再び遭遇!
やはり雷鳥もかわいいな…素晴らしい10分間。
とてもハッピーな気持ちで北ノ俣岳あたりまで歩き、ピークで少しだけ休憩した。厚い雲が周辺を覆って雲海になっていた。
ここを降るとまもなく木道が見えた。
太郎平小屋が目視できたのであと少しだ、と思ったけど、歩くと意外と遠く結局1時間くらいかかってた。
木道を進むうちにまたもガスが濃くなっていく。小屋の手前ではこの日2回目、砂遊びをする雷鳥に会った。寄っても公園の鳩並みに全然逃げないのが雷鳥さんだ。
太郎平小屋は折立から登って来た場合、最初の小屋になる。あぁここは人気出るだろうな、という和やかな雰囲気だった。
小屋のラーメンが名物だそうで、途中から同行していた人は折立に降りる前に食べたい!と言っていた。しかし残念ながら10時の開始には到着が早すぎて諦めていた。そういうこともあるよね。
薬師峠までの木道を進む。薬師岳山荘は薬師岳の中腹にあるのでわりと登る。薬師峠から先はわりと急な沢沿いを歩き、フラットな薬師平のちに再び急登が続く。この区間はわりときつかった。
薬師岳山荘小屋にて
山荘に着いた。
当初の予定では13時に着けばいいかな、と考えていた山荘に実際は10時半に着いたのでだいぶ巻き気味にはなった。
着いたはいいが、すぐに決めなくてはならないことがある。明日どうするか?ということ。部屋の受付時点で翌日の予定を記入しなくてはならない。
10分ほど考えた結果、無理せず引き返し折立から下山することにした。エスケープルートBの採用。
もちろん継続したかったけど、ニュースを見ると台風が北上してきていると言う。実際、長野側は豪雨ですごい状態だったようだ。富山側に進むので問題ない気もするけど、持参していたテント(シェルター)は普通の雨程度ならとにかく豪雨には耐えられない。
仮に進む場合は五色ヶ原で一泊が必須となるが、そこで荒天になった場合はエスケープができないので大変よろしくない。そのようなことを総合的に考えた結果、下山が最適解と判断した。
小屋のじい様にバスの電話番号を教えてもらい、電話をかけると予約は余裕だった。こればかりは仕方がないのでまた次の楽しみが持ち越せた、と気持ちを切り替えた。
山行の終わりが近づいたので、せっかくだから翌朝追加で朝食をいただくことにした。この辺りの変更はフレキシブルに可能らしい。
※ちなみに初回なため無難な選択とは思うけど、実は帰りのバスが埋まることは稀であり、予約は必須ではないそうだ。もし再びこの状況になったら翌朝に最終判断でもいいとおもう。
さておき、早くに宿を確保できた。山小屋は九州にもいくつかあるが(山荘レベルは少ないけど)、泊まりは初めて。今回の縦走は基本的にテン泊であったけど、山小屋泊を知らないのもな、ということで行程の中間地点である薬師岳山荘を選んでいた。
3時前に起きて既に7時間ほど行動していたので眠い。あらかた小屋内を見物した後は横になり(久々の布団はふかふかだ)、仮眠をとる。
12時前に起きて外のベンチで昼ごはんを作る。
お湯を沸かしさて食べるか…と思った時に小雨がパラつき始め、屋根がある場所へ避難する。その後は雨が続いた。つまり早出早着は大正解だった。
余裕があれば薬師岳の山頂までは行こうかな、と思ってたけど雨足は強くなるばかりなので小屋でゆっくり過ごした。真っ白で何にも見えないし…
小屋は突然の雨で電話がひっきりなしとなりもても大変そうだった。
食堂へ行くとTJAR写真集の見本本と各年の報告書が置いていた。せっかくなので写真集を見る。すごくいい本だ。普通に欲しい。ちなみに土井さんが出場する以前の大会で今と雰囲気や出場者の装備が全然違うのも見所ではある。
17時より晩御飯の時間。山の上で何もしなくても暖かく、副菜と汁物、ケチャップ「やくし」卵焼きが出る。普通に美味しく、カツはお店でいただくレベル。標高2700m近くまで食材を運び、多くはない人数で大量の人数分を捌きながら他の仕事もする。山小屋のありがたみが沁みる。
そうこうしてるうちに雨が上がり、一気に晴れた。標高が高いからか、湿気も飛ばされカラッとしていた。
そこからは日没まで小屋近くで景色を眺めた。
虹が見えたり、夕焼けを見ながら同じく西日本の方と話した。色々と面白そうな場所を教えてもらいつつ、九州の山について尋ねた。やはり多くの人に九重は圧倒的に人気で時点で霧島•開聞岳の名前が挙がる。後は阿蘇など。案外祖母山系は知られておらず、脊振は言わずもがな。福岡だとやはり宝満山か平尾台らしい。なので他の山域について熱を持ってプレゼンした。どうぞご贔屓に!
日没ごろにはだいぶ冷えてきたので、暗くなる前に部屋に戻り、翌日の雨対策を準備した後で布団の中に入った。
想定より2日早まってしまうが、ついに最終日を迎える。
一日の活動量:
黒部五郎小屋テントサイト~薬師岳山荘
合計時間:7時間 1分
休憩時間:32分
距離:14.7 km
のぼり / くだり:1324 / 979 m