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シューズ紹介③ Saucony /Endorphin Pro4

サブ3.5以上のマラソン用シューズは細分化しており、今やどのメーカーも本気のフラッグシップ・準エリート向けのレースモデルを出している。これらのカテゴリーはナイキ、アディダス、アシックスあたりの人気と評価が高く確かに速い人ほど着用する傾向にあるとはおもう。

そんな中、なかなか日の当たらないブランドであるサッカニーのレーシングモデル(上から2番目・サブ3.5~のスペック)を選び実際に本命レースで履いた。
先日のレースでPB更新をさせてくれたシューズへの感謝を込め、せっかくなのでご紹介させていただきたい。


【前置き】

このモデルを検討してる人は近い走力の人が多いと思うので、参考までに。

◇直近のレース結果(グロス)
伊万里ハーフマラソン / 0:85:02 平均巡航 4'01
別府大分毎日マラソン / 2:59:02    平均巡航 4'14

エンドルフィンプロのターゲット層はサブ3.5~サブエガあたりと広め。


Endorphin Pro4の特徴

スペック

公式にあまり情報がないので、わかる範囲でのせてみた。

・ミッドソール:PWRRUN HG/PWRRUN PB 
・スタックハイト: ヒール39.5mm フォアフット31.5mm
・ドロップ: 8mm 
・212g(メンズ27.0cm片足)

まず最初に。

ミッドソールにエネルギー効率の高い素材『PWRRUN PB』を配したENDORPHIN SPEED 4。シリアスランナーのトレーニング用、はたまたサブ4を目指すランナーのレーシングシューズとして支持される一足です。

Runtrip: https://mg.runtrip.jp/archives/88772

ん?ちょっとそれはかなり低く見積もられている。実際にこのシューズの恩恵を受けた者から言わせてもらえば、はっきりいってサブ3レベルのレーシングシューズとして普通に優秀。というかサブ4ペースだと真価は発揮されない(そのあと記事中でサブ3向けレーシングシューズとして使えますよと太鼓判押されているので上の文がおかしいだけなのではないかな)

感覚としてシューズがハマる速度域は遅く積もっても巡航4'30くらい。アディオスプロほど極端ではないにせよ、シューズの力を引き出すにはやはりある程度の走力はほしいところ。

またアウトソールの幅も前作よりも広くなっているため、より高い安定感が得られるように。程よい反発性と推進力をサポートし、フルマラソンの後半でも快適に走ることのできるシューズです。

同上

このシューズの特徴を端的に言えばこうなるってインプレ。とにかくいい意味で癖がなくて走りやすい。クルーズコントロールの安定感、そして後半まで脚を残せることが最大の強み。


では細かいところを。

全体写真

※レースの汚れが残ってますのであしからず…

上から。
バリエーションは何色かあるけど、
俺はこの配色がすき!カッコイイ!


アッパー

層がいくつかにわかれている

アッパーはフルメッシュ
サッカニーのブランドデカールがシューズの半分ほどデカデカと乗っている。生地の名称はわからないけれどメッシュに補強としてのハニカムが入っているので結構頑丈そうな感じはする。
アッパー/シュータンは一体型。薄手のシュータンもメッシュで、アッパーとパターンが異なり細かなドット上の穴があけられている。

接触感覚はかなり柔らかい。シューレースをきつめに締めても圧迫感がまるでなく、足の甲に沿って優しく包み込むようにフィットしてくれる。それなのに走ってもブレたり緩さは感じない。この点に関しては今までに履いたすべてのランニングシューズの中でベストかもしれない。レース後のスレも全くなかった。

薄手で一体型構造はシュータンのつなぎ目が切れるシューズがある、とたまにレビュー漁ってると見かけることがあるけど、エンドルフィンプロは縫い目もしっかりしてるのでそれは大丈夫そうだ。


ソール

アウトソール

汚れてますね〜

グリップは3点。真ん中が深くくりぬかれて軽量化に貢献している。まんべんなく幅広で安定した形状。
現在100km未満であるけど、既にかかと外側のラバーは少し薄くなっている。レーシングシューズだから仕方ないけど、ベストコンディションはそこまで長くはなさそう。

かなり薄い
早くもラインが消失しかけている


ミッドソール

リアボトムヘビーのロッカー型

中はもちろんカーボンプレート入り。
そもそもサッカニーのシューズを履いたのはカジュアルラインを含め初めてなので比較ができないけど、特性としては以下。

・接地感はやわらかい
・反発、というか推進力はけっこうある
・ミッドフット以上の接地でシューズに「乗る」感じがあり、ヒールストライクは合わない
・パワーで進むタイプではない

ミッドソールの耐用性についてはレーシングシューズなので割り切りが必要。最高のパフォーマンスが出せるのはせいぜい200kmくらいじゃないかと見ている。こればかりは材質の特性上、必ずトレードオフになることだから仕方ない。


形状

きれいなアール

ロッカーはかかってるけど、体感的にはドガン!と来るほど強くはない。それよりはミッドソールの柔らかさのほうが印象に残る。

試着する際、比較としてアディオスプロ3を履いた。あちらに比べるとだいぶマイルド。ソールのほうがアッパーより太く、その形状も接地安定性に寄与しているのかもしれない。

うしろはしっかりと安定している。
ミズノのレーシングとは真逆のアプローチ
物理的に安定した形状!


その他

インソールなど。
ヒールカップはしっかりしてるけどマイルドで、スレなどはおきなかった。
はいたイメージ
シュータンは折り返し可能。お好みで。
サッカニーのロゴが出てくる芸の細かさ。

サイズ感

25cmを買った。
指先に指一本(横向き)余りがあるので長さに関してはアディダスが近いかも。ただアッパー自体はわりと細く、そのあまりも全く気にならないくらいにフィットしてくれる。これくらいのサイズ感でも問題ないと思う。


普段も25cmを履いているので他メーカーと比較

アシックス(マジックスピード3) 
25cm… 指半分くらい。ジャストサイズ

アディダス(SL2)
25cmワイド…指一本(横向き)余り。ワイドを選んだのは在庫の都合。

アルトラ(エスカランテレーサー)
25cm…指半分くらい。ジャストサイズ。アッパー計上もフィット


走った感じ

レース以外だと10kmの閾値走でしか使っていない、という前提で箇条書き。

・とにかく触感、走り心地、そのすべてが柔らかい。

・軽い。足が楽にまわる。「まわされる」感じはしない。ただ「転がす」もしくは「はずむ」感じでもない。

・「速さ」については絶対的な最高速が、というよりは「巡航ペースが自然と上がる」と表現するほうが近い。たとえばカーボンの入っていないシューズで心拍168 / キロ4' 12 くらいだとしたら同じ出力で心拍163 / キロ4'11くらいになるイメージ。Mペースが楽に出せる。
実際にハーフマラソン、フルマラソンで使って最も助かった。心拍を抑えつつ普段より少し速く、かつ安定したぺースで巡行がしやすい。

・なのでLT〜OBLAくらいまでは安定する。反面、インターバルレベルのペースだと大きく底上げされる印象はない。

・やわらかなクッションのおかげか、レース後の足裏ダメージは2回とも皆無だった。事後のことを考えるとありがたい。ちゃんと歩ける。

・カーボン入りロッカーシューズなので当然だけど、推進力を持たせやすいスイートスポットはありミッドフット~フォアフットじゃないと恩恵は少ないとおもわれる。また蹴り足はNG

・ストライド型、ピッチ型どちらも使える…と言いたいけど、身体を乗せて預けるタイプなので感覚的にはストライド型のほうが合うとおもう。

・巡行において誤差数秒のペースコントロールがしやすく、レース戦略としては細かなペース設定をするイーブンまたはネガティブスプリットを採用する人にはしっくりくるとおもう。
絶対的・瞬発的なパワーは他の同カテゴリーシューズのほうがありそうなので、先行で逃げるよりは平均を上げ大きく失速しないor後半じわじわあげるという戦略に合う。



ストライド型、ネガティブスプリットタイプの自分にとっては完璧だった。シュータンのフィット感も最高に気持ちがいい。
わりとガチでめっちゃ気に入っているし、今年記録がいいのはこいつのおかげが5割くらいあるよねと思っている。相性が良すぎる。ガラスの靴ピタリ!

おそらく比較になるのはアディオスプロ3あたり(4は実物見た事すらないので3にしておく)
当初はアディオスプロしかないだろ、と考えてたけど軽い試着であちらはロッカーと反発がガツン!!とききすぎるから後半脚が持たないんじゃないだろうか?とビビッてやめた。まだお前には時期尚早じゃな、と言われた気がした。

そこで色々と調べて検討したところ、サッカニーに白羽の矢が立った。
日本でサッカニーといえばABCマートでエントリー向けっぽい謎ランニングシューズが売られていて、レースシューズには選ばない(というかそもそも発想がない)という印象だったけど、調べるとなかなかおもしろそうなものを作っている。

その「スポーツ用品でもない量販店で展開されている」イメージがよろしくないのだけど、実際は細かいところまでかなりちゃんとした作りになっている。たいへん申し訳ございませんでした。アメリカブランドは普段アルトラ、ブルックスを履いているので根拠のない安心感はあった。

質感はアシックスとアディダスを足して割ったようなイメージと言えるかもしれない。強烈な特徴はないけど使いやすく基本の水準はしっかりしてる、という感じ。

それにしても大会で足元を見てもサッカニーは少数派である。エンドルフィンプロは扱っている店が少ないこと、更にこのグレードなら基本的にアシックス・ナイキ・アディダス(たまにプーマやミズノなど)を選ぶ人が多く、履いてる人を全然みない…。
実際、これ履きまっせ〜と紹介したら「サッカニー?!」と毎度疑問or感嘆文で返されている。気持ちは分かる。

フラッグシップはエンドルフィンエリートシリーズであり、プロは2番手にあたる。「スピード練シューズ」なんて書かれることもあるけど販売価格約26000円でアディオスプロ3と大差ないものを練習で使うなんてモッタイナイオバケが出てしまう
(セールはほとんどなくあっても額が渋い)
みなさま、こいつは立派なレーシングシューズです。


まとめ

エンドルフィンプロ4はとにかくいい意味で癖がないながら高水準でまとまっている。ペースコントロールしやすく安定したクルーズができるし、飛ばすときも充分に上げられる。ピーキーなシューズが大好きな人には退屈かもしれない。

ストライド型でイーブンもしくはネガティブスプリット戦略向き(ペースコントロールの容易さとクッションにより脚へのダメージが少ないため)、頭からガンガン攻めるタイプではない。

全然履いてる人を見かけないけど、サブ3近辺レベルのランナーがハーフマラソンからフルマラソンまで勝負靴として使える、かなり完成度の高いシューズだとおもう。

どこかのレビューでサブエガあたりまでは狙える、とあった。自分のいまの走力水準はそこには到底及ばないけれど、実際にハーフマラソンはそのペースが平均としてまわせたし間違ってないとおもう。

走力についてはがんばるので、勝負靴として力を貸してほしい。しばらくはロードレースに出ない=履かないので現時点でのレビューとした。


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