【北アルプス縦走 5Days】Day.2 徳沢キャンプ場~槍ヶ岳・槍ヶ岳山荘テント場
槍ヶ岳へ
この縦走において最も大変な日はすぐやってきた。
行程
①福岡空港→上高地→徳沢キャンプ場
→②徳沢キャンプ場→槍ヶ岳山荘テント場
③槍ヶ岳山荘テント場→黒部五郎小屋テント場
④黒部五郎小屋テント場→薬師岳山荘(小屋泊)
⑤薬師岳山荘→五色ヶ原テント場
⑥五色ヶ原テント場→雷鳥沢キャンプ場(立山経由)
⑦雷鳥沢キャンプ場→立山駅、下山
前回(1日目)
深夜からの出発
日付が変わった時点から食事や撤収を始め13時から出発の長い1日。どうしても先着順で数の少ない槍ヶ岳山荘にテン泊したくて、コースタイム逆算でこの時間にしなくてはならなかった。
山荘テン場に拘る理由はネガティブなもので、山
荘がダメな場合はおよそ200m下の殺生ヒュッテテン場に泊まらなくてはならない。
実際、登った際に判断は正解であることを知る。たかが200m差ではなく、標高3000mかつ2パターンのルートどっちを選んでもきつい。そんなところを17kg超担いで往復するのは絶対嫌である。
槍ヶ岳までの行程を再確認しながらカロリーを摂る。
縦走中の朝食はすべてBaseBreadを中心にした。はっきり言ってプレーンは美味しくないが比重に対しカロリーと栄養価が良く、なにより賞味期限が長いので腐敗せず全日パンが食べられる。そして簡単に手に入るしまぁまぁ小さく軽い。
寝静まったキャンプ場でできるだけ音を立てないよう気をつけつつ撤収する。
水の補給など準備を済ませた午前1時、出発。
川沿いなど徳沢までの道とさほど変わらない歩きやすい道を1時間ほど進み、隣のキャンプ場である横尾に着く。
横尾から先は明確に登山道になる。やっと山登りが始まった。
熊鈴を鳴らしながら道を進むと星が見えた。息を整える時、ライトを消し目を暗さに慣らすと星は満天になった。今まで見てきた中で一番かもしれない。だから時々休んではライトを消して、静かな樹林帯の隙間から星を見てまた進む。流れ星もいくつか見えた。
登山道に入ってからは基本的に登り基調となるため休憩が増える。普段では考えられないがコースタイム100%がやっと。
ババ平着までにすれ違った人はひとりだけだった。やはりテン場には登山者しかいないため、4時の時点で行動開始してる人が半数以上だった。
人が多くなった道を進む。ガレ場が次第に増えてくる。トレッキングポールを持ってる人が羨ましい。重い荷物を背負って歩き続けるのはトレイルランニングとは勝手が全然違うのでやはり練習がいまいちたりてないな、と苦笑いしながら息を切らす。
4時半頃から景色の変動が激しくなり、山肌が見えたと思ったら星は消え、遠くにモルゲンロートが見えた。そして瞬く間に明るくなり、雲ひとつない空からは強烈な光が差し込み始めた。思い出したように日焼け止めを急いで取り出す。
ここから先の登りがとにかくつらい。荷物の重さ、空気の薄さ、眠気の合算により、わずかな登りでも息切れがたびたび起きる。心拍的には有酸素パワーゾーン程度なのに、足を上げるたび大きく息が切れ、LSD並みの110まで落とさないと全然力が出ずフラフラする。そして整えてもすぐ130を超える(これは普段ならジョグペースなのにスプリント後のような苦しさだった)
5mも登らないうちに小休止する有様。
山においては空に近づくほど重力が強くなる。一歩一歩進むたび、以前富士山を登ったときの記憶が蘇った。しかしその経験からこの状態は深呼吸をすることである程度は落ち着くことを知っていた。だから頭痛や吐き気には至らず、なんとか「きついだけ」に抑えた。一応進める。
ガレ場の斜度自体がきついため、槍の穂先が見えてからも長かった。実際に要した時間を確認するとそこまで長くなかったけど、体感時間は3倍。
東鎌尾根は短いし余裕っしょ、とナメてたら案外険しい。距離の割にコースタイムが長いわけだ。油断したら荷物が谷底に落ちようと揺れるため、しっかり注意して進んだ。
AM8:30、山頂に着いてから即テン場を確保。この時点で既に半分くらい埋まってたけど確保できた。よくこんなところテン場にしたな、というポイントである。四つ足の高山生物が住んでそうだ。意外と花は多い。種子は風や鳥が運んだのだろうか。そしてハエも多い。それにしても8時間半、思った以上に時間がかかってしまった。
狭い足元に散る無数の石を除いてテントを張る。補給のちに仮眠しようと思ったけど日差しが強く、熱がこもった幕内ではとても無理だった。
穂先を見ると既に渋滞していた。ピークはいかなくていいかなと思っていた。実際のところ疲れていたし、そこまでピークにこだわりのあるタイプではない。
だけどその後に印象深いことが諸々あって、山のご縁あり山頂まで行くことになった。山荘でヘルメットを借り、装備は最小限に。疲れているが装備は軽く、渋滞のおかげでゆっくり登れる。
本来高いところはとても苦手なのだけど、掴めるものがあるとそうでもないらしい。岩登り、鎖場はむしろ好きなほうだ。しかし今だに足元ガラス張りの展望台など人工的高所に立つだけで指先から嫌な汗がとめどなく出るし、心拍が数時間前の急登みたいに上がる。なんだろうなこの違い。3点支持可能か否か、なの?
ただ山でと、ことに北アルプスではジャンダルムとかああいう道はビビり倒して進めない気がする。そのうち行きたいって言うかもしれないけど。
テントから見上げていた時は一時的にガスが濃くなって穂先を包み込んでいたのでもしかしたら…と不安はあったけど、ありがたいことに登頂時は晴れていた。
実際に登ってみるとシンプルに楽しかった。普段あそこまで長い階段をいくつも登ることは少ないし、アスレチック感があった。
山頂ではややビビってたし混んでたのでまじまじと景色を見ることなくサッと写真を撮って(もらい)、降る。
渋滞は長く往復で2時間以上かかったけど山荘に戻ったときの時刻は13時前。まだお昼を過ぎて間もない時間帯。お腹すいたしまずご飯を食べよう。
ご飯を食べた後に何をするか考えた結果、夕方までダラダラした。山荘半径50mから離れていない。というかもう動くつもりはなかった。時々ぼんやりと穂先に登る人たちや雲の流れを眺めたり、ul暇つぶしアイテムのkindleで本を読んだり、うたた寝してゆっくり過ごした。既に行動開始してから13時間以上経っていたわけだし。
ちなみに山頂小屋付近でdocomoは通じないことが多く、このときkindle持っていって良かった、としみじみ思った。この縦走においてはその後も度々寝る前に思った。
肌寒さを感じ、目を覚ます。何時間か寝ていた。
シュラフからジッパーに手を引き、頭を外に出す。本当にお盆時期なのか、と思うほど乾いて冷たい空気が漂っている。
サンダルを履いて外に出ると、周囲に雲海ができていた。北アルプスで雲海を見られると思っていなかったので一気に目が覚める。付近の至るところから雲を眺め、その後晩御飯を作って食べ終わるとじきに日が落ちた。
薄暗くなっていく雲海を眺める。周囲から抜き出た3000m級なので当然雲より高い位置にいる。思わぬサプライズを堪能した。夕日の移ろいを山頂からずっと眺めたのはいつぶりかわからない。槍ヶ岳の穂先にはいくつかのライトが見えた。夜が訪れる。
夕方から夜にかけて一気に冷え込みが増してきた。3000mということは単純に考えて海抜0mより18℃ほど低い。念のため持ってきた秋対応の保温道具を着込む。すべて活躍した。体感的に夜間は9℃くらいと予想したが、後に確認したところ概ね11-13℃だったようだ。今後の装備の参考にもなった。
シュラフとヴィヴィにくまるって1日を振り返る。ひとりなら絶対穂先に行ってなかったけど、その結果が変わったことを本当に良く思う。そこに至るまでも楽しかったし、翌日から槍ヶ岳を見た時の印象も大きく変わっただろう。山荘まではしんどかった記憶しかなかったけど、そこからは楽しい時間になった。うつらうつらそんなことを考えていたところで長い2日目が終わった。
一日の活動量:
徳沢キャンプ場→槍ヶ岳•山荘テント場
合計時間:11時間 53分
休憩時間:4時間34分
距離:13.9 km
のぼり / くだり:1797 / 275 m
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