陰謀論はカネになる

この世には嘘があふれている

「陰謀論」

TwitterやYouTubeで一度は目にしたことがあると思う。

例えば以下のような荒唐無稽な事が、まことしやかに、そして驚くべき事に一部の人は大まじめで信じ込んでいる。

１．コロナワクチンを接種されたマウスがすべて２年で死んだので、コロナワクチンは危険である
２．コロナワクチンを接種された人の体が磁気を帯びた
３．コロナワクチンを接種後、ワクチンが原因で死亡した人が知り合いの親族いる
４．mRNAワクチンは人間の遺伝子を改変する
５．遺伝子を改変された人は政府の都合の良い思想になり、行動をとる。
６．5Gが受信できる様になる

この様な書き込みを見た時、あなたはどう思うだろうか。

ちなみに、もしあなたの知り合いにワクチンが原因で死亡した人が居たら、それは世界を揺るがす大事件だ。

すぐにでもあなたの名義で各報道機関に連絡することをお勧めする。一躍時の人になれる事 間違いなしだし、国や各製薬会社も本気で対策をとるだろう。不幸な人を増やさない為にも「本当にワクチンが原因で死亡したと思っているなら」やらない手はない。

ワクチンが原因で死亡者が出たと信じているのに、これを読んで嫌味と感じたり嫌な気分になるとしたら、あなたは大きな矛盾を抱えている。もし仮に本当だとしたらTwitterでつぶやいている場合ではないのだ。(そんなわけないと思うが)

個人的にはもし5Gが受信できるなら、移動式５G基地局として一財産築けそうなのでとても興味がある。(もちろん受信できるわけない)

陰謀論を広める人について考えてみる

では、上記のような内容を喧伝・拡散する人にはどのような意図があるのか。

まず前提として、人間は理由がなければ行動しない。

そのため、何かを発信・拡散している人がいたら「この人は何のためにその行動をしているのか」を考える癖をつけると良い。それだけでも嘘を見抜ける可能性は高くなる。

陰謀論を広める人は大きく以下の3パターンに分類できる。

・儲かる（実益派）
・楽しい（愉快犯）
・本気で人の役に立てると考えている(献身派)

実益派の具体的な例

例えばワクチンのデマ情報をYouTubeにアップしている人の場合。

１．ワクチンのデマ（ワクチンにはマイクロチップが入っている、ワクチンが遺伝子を改変する）に関する動画を作成しYouTubeにアップする。
２．キャッチーなタイトル・内容と共にTwitter含めて宣伝する。
３．主に善かれと思った人によって拡散される
４．動画がたくさん再生される
５．チャンネル登録が増え、動画作成者が儲かる

この「キャッチーな」というのが正に「コロナmRNAワクチンが遺伝子を改変する」と言ったような「え、うそー！」的な内容である。

例えばこんな話がある。
塾講師を本業にしている、再生回数が数十回程度のYoutuberがいた。
ある日、トランプ大統領の陰謀論の話を聞き、それをYoutubeのネタにした所、なんと再生回数が100倍以上に跳ね上がった…（*1）

そしてこの人は陰謀論にどっぷりハマっていく。

実際に本気で陰謀論を信じてしまうかは別として、「信じていない人が再生数やお金のために陰謀論をネタにする」という一例である。

ちなみにYoutubeだけではなく、自身が執筆した本や販売している健康食品を売りつけたりするなど稼ぐ方法はいくらでもある。

エンターテインメントとして楽しむ分には問題ないが、これを現実世界で友人などに話してしまうとそっと関係を切られる可能性は高い。

ちなみに、その手のプロになるととても巧みに陰謀論を拡散してくる。

真実を織り交ぜながら話しているので、そのままデマ部分も流れで信じてしまうところがポイント。

情報を掴んだ人に「他の人よりも先に知っている」「俺は他の人が知らない事を知っている」「みんなが騙されているが自分は真実を知っている」という優越感と、「みんなに知らせてあげないと！」という一部の人の（無知で無責任な）善意を使って拡散していく。

もしあなたがデマを拡散してしまったとしたら、それは「真実などどうでもよく、自分が儲かれば良い」という人の養分になっただけでなく、自分の周りにいる大切な人までも巻き込んだ事を意味する。（*2）

愉快犯

愉快犯は楽しければ何でもいいので、見抜くのはとても難しい。

前者は意味がある嘘（利益になる嘘）がメインだが、後者は意味がない嘘（利益にならない嘘）もつくので真偽がわかりにくいからだ。

献身派

これが一番タチが悪い。

自分の利益になると思って陰謀論などを拡散している人には理屈が通じる。立場的にすぐには引けないかもしれないが、損になると思ったら撤退してくれるからだ。

しかし、献身派は心の底から5Gやら遺伝子改変を信じ込んでおり、善意で行動する。良かれと思って行動する人は自分を「正義の執行者」と思っているので、すべての行動が（反社会的な行動であっても）許されると思っているのが最高に凶悪。

デマを見抜くには

では、デマを見抜くにはどうしたら良いか。
方法はとても簡単で、自分で１次情報を調べるだけで良い。

情報を鵜吞みにしたりリツイートするだけではなく、その情報の発信元（例えば論文）をしっかりと確認する事が必要である。

デマを拡散する人の特徴として以下の通り。
１．途中まで理論が成立しているが、突然理論が飛躍する。
２．相手に理論的に反論されると感情論に逃げる。
３．非常に小さい問題を、さも大きい問題の様に取り上げる。

この世の全てはバランスである。
０％はあり得ないし、だれも０％であることは証明できない。
だって起きないから。

ワクチンの副反応を０％にしろとか、100%の安全性を担保しろとかどう考えても不可能な事を言う人にぜひ聞いてみたい。

交通事故が怖いから外出しないのか？
排気ガスには発がん性物質が含まれているのは気にしないのか？
携帯はまだ普及してから日が浅く、人体への影響が判明していないがそれはいいのか？
家に居ても隕石や火事の危険性があるがそれはいいのか？

リスクとベネフィットを天秤にかけて、メリットの大きさや、そのリスクが無視できる程度に小さいので車や携帯を使用しているのではないのか？ダブルスタンダードはよくない。

何を信じるかを含め、ワクチンを打つ/打たないはもちろん本人の自由だ。

しかし、自由というのはそれによる制約(自由の対価、言い換えるとデメリット)を受ける可能性もセットで考えなければならない。

ワクチンを打たないという選択をしておきながら、打たなかったデメリットは受け入れないというのは虫が良すぎる。

なにを信じるか

海外ではワクチン接種を義務付ける動きが強まっている（*3）し、ワクチン接種がないと入れないレストランも（*4）出てきている。

あなたがワクチンを打たない人であっても問題ない。

繰り返しになるが、ただでさえワクチンを打つというリスクを人任せにしているのだから、例え入場できない場所があったとしてもそれは受け入れるべきであると思う。だってそれは誰でもない、あなた自身が選択した事なのだから。

リファレンス

*1 陰謀論で再生急増、「金稼げる」くら替え相次ぐ  読売新聞オンライン 2021/04/07
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210407-OYT1T50045/amp/

*2 アメリカの「反ワクチン業界」わずか12人で年間40億円の儲け（Yahoo!ニュース 2021/6/4）

*3 米企業の５２％、年末までにワクチン接種を義務化
（読売新聞 2021/09/02 18:31）

*4 米ホノルル、レストランなどで新型コロナワクチン接種完了証明の提示義務化（独立行政法人日本貿易振興機構 ビジネス短信）