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外資系に憧れるあなたへ(後編)

前回までの振り返り

前編を1行でまとめると、以下の通り。

「外資はそんなにいいもんじゃない」

これを踏まえた上で後編を読み進めてもらえると嬉しい。
びっくりするくらい暇を持て余している人は以下の記事を読み「外資はそんなにいいもんじゃないんだなあ」と感じ時間を無駄にして欲しい。

後編はだいぶ長くなったので、適当に飛ばしながら読んでください。

後編では以下の3点について触れていきたい。

・外資系のデメリット
・外資系に向いている人はどんな人なのか?
・外資系に向いていない人はどんな人なのか?

外資系のデメリット1

これは予想できている人も多いと思う。
外資系のデメリットの最たるもの、それはリストラと紙一重である事だ。

ただ、誤解しないで欲しいのが、外資といえど日本にある以上は日本の法律を無視することはできない。では、どうやってリストラするのか?

1.窓際に追いやる
これはとてもベーシックな方法で、大体がこのパターンで処理されると思う。例えば、とんでもなく営業成績が悪く、業務改善の余地もなく、もうだめだとなった場合、営業部門から放出される。

業務やサービスなどの他部門に引き取ってもらえた場合はラッキーだが、そうでない場合はそれっぽいが何をやるのかピンと来ない横文字の部門(vertical marketing divisionなど)が設立、そこに島流しにされた後、心が折れるまで飼い殺しになる。

2.退職金割り増しでやめてもらう
これも一般的な方法。自己都合による退職を受け入れてくれれば、退職金割り増しするよ!といってスムーズにやめてもらう。

ほぼ上記2パターンで決着する。

3.その他
例外として、会社に行ったら既に私物が段ボールに入っており、出社と同時にパスカードやPC、携帯などを取り上げられた挙句、ドライブスルーのように社外に排出されるエクストリーム退職があるが、これはかなり稀なケース。

殆どのケースで評価ポイント低下→業務改善命令→改善の余地なしとして退職勧告、となる。

脱線するが、ここでいう業務改善命令というのがかなり曲者である。

通常、事前に設定したハードルを越えたと判断される事で改善命令が解除されるが、この判断基準はあくまで会社側にあるという事を忘れてはならない。

すなわち、ハードルを越えなかったと結論付けることは非常に容易く、業務改善命令が発令された時点でかなり詰んでいると思った方がいい。

話を戻そう。

ここで「あれ、外資って強制的にクビにならないの?」と疑問に思う人もいるだろう。島流しにされても辞めなければいいのではないか、と。

それはとても正しい。
そう、やめなければ良いのだ。

では、実際にやめず会社に残り続けるとどうなるのか?

まず、今後のキャリアが絶たれる。
外資系は人員の流動性が高いので、ぶっちゃけやめても次がすぐに見つかることが多い。それこそ40代だろうが50代だろうが出戻りだろうがとにかく頻繁に転職がある。

それなのに、もう先がない会社で飼い殺しにされる事を選んでしまうと実務に空白期間ができてしまい転職が難しくなるし、待遇や給料も下げ放題になるので、まさに真綿で首を絞められるようにじわじわと消耗していく。

それならば退職金をもらってさっさとやめた方が、自分から会社を辞めたんだ感も出すことができるし総合的に得策だと判断する。だってみんな合理的だから。

あとはその人のプライドの問題。僕だったらガラス張りの部屋に閉じ込められてみんなからの奇異の目に晒されるくらいなら会社を辞める。

仮にそのまま流刑地に居続けたとしても向上するのは
①誰かが後ろを通った時、見ていた匿名掲示板のウィンドウを最小化するスピード
②意味もなくExcelファイルを開いたり閉じたりして仕事をしている雰囲気を醸し出す技術
くらいなものだろう。

外資系のデメリット2

基礎的な教育制度がない。
外資の場合、いきなりOJT(On the Job Training;実地研修)に投入される事も珍しくない。

業界未経験だったり新卒だったりした場合、これは地獄だ。
わからないことがわからない状態で、耳に入る単語はすべて初耳で聞き取ることもままならず、ノートに書き留める事もできない。当然、あとで調べることもできない。

先輩に聞こうにも相手にとっては新人の質問に答えるメリットがないので取りあってもらえない。それどころか営業の場合、将来的なライバルになる可能性があるので塩を送るなんてありえないとばかりに威圧される。

入社2日目に電話を取り次いだだけなのに訳もわからず烈火のごとく怒られた時には、ここが地獄かと本気で思った。(体験談)

同日、先輩から「お前の事、絶対にやめさせるからな」と面と向かって言われたのも今となってはいい思い出だ。

前編にも書いたが、基本的には稚魚のうちに放流されて捕食されず戻ってきた魚にだけ餌をあげるスタイルなので、自分の価値を周りにアピールできる人でないと行き詰る可能性は高いと思う。理不尽だけど。

僕の入社当時は今よりも更に教育体制が整っておらず、入社3日目に10cmくらいの資料だけを渡され、用語やわからない事はネットで調べながら淡々と読み進めるという事を2か月続けるという修行僧の様な生活を余儀なくされた。

あまりの理不尽さに一時期は徳永英明や長渕剛を聞きまくるくらいには病んでいた。

外資系のデメリット3

強いて3つ目のデメリットを挙げるなら、考え方が合理的になりすぎてしまい、周りから冷たいと思われてしまう事。

例えば実家に帰った時に何かしらの問題が発生したとする。プライベートでは往々にして解決に近づかない話し合いが行われる事が多いと思うが、問題解決の為の現実的な提案をすると両親などから「冷たい」と言われてしまう。お母さん、これは結構へこみますよ。

外資系に向いている人はどんな人なのか?

幸運にも外資で生き残り続けている僕の個人的な感想ではあるが、プレゼン能力や自分をアピールする能力は必要だと感じる。

しかし、外資に向いている人に必要な能力を1つだけ選ぶとしたら、僕は「感情を切り離した合理的な判断ができるか」だと思う。

例えばあなたが入ってきたばかりの新人と仲良くなり、束の間の平穏を享受していたとする。新人はまだ自分の販売エリアを与えられていないので当然ながらまだ売り上げはない。

ある日、米国本社から「日本で100人をリストラせよ」との通達が入る。各部門ごとに売り上げをExcelでソートし、機械的に下から100人がリストラ対象になる。当然売り上げゼロの新人も対象に含まれる。そして即日退職がきまる。

まだ自分のエリアを持っていない新入社員営業がリストラの対象になって即日淘汰されていく様な現実にも「売り上げでの判断は合理的」「外資あるある」と笑って流せる人は生き残っていけるだろう。

別の例を出すと、自分の親族が亡くなって急遽お通夜に行く必要が出たとする。ある案件を一緒に作業していた別部門の人に事情を話し、1日休むのでフォローをお願いしたいと依頼すると「それは営業内で解決すべき問題で別部門の我々には関係のない話だ」と言い放つくらいの合理性と、それを怒らずに「確かに言っている事は間違っていないな」と受け取るくらいの、感情に引っ張られない合理性も必要となる。

外資系に向いていない人はどんな人なのか?

・文句だけを言う人。

改善したい問題点があるなら対案付きで提案するのが普通で、意味を持たない文句を連ねて人の時間までも奪うタイプはとても嫌われるし、相対的に評価も低い。これは会社自体に向いていないのでいっその事、社長になってあなたの言う理想を実現してほしいと思う。

・上司に意見を言えない人、責任を分散できない人
前編で記載した、上司がボールをとれない方向に打ち返した時に黙ってそのボールを拾いにいってしまう様な人は外資でやっていけない可能性が高い。

一度状況を受け入れてしまってから期限前に「無理でした」と言ってもその責任はあなたに降りかかってくる。

上司の役割は部下のマネージメントである。
「manage=なんとか~する」という言葉の通り、できないと部下が言ったらそれを何とかできるように考えるのがマネージャーの仕事だし、その分、多くの給料をもらっている。

そのため、その案件を成功させる為になにが障害になっているのかを細かく上司に説明し、具体的にどういう助けがあれば達成できるのかを提案することが必要となる。

その際、自分と上司の2人だけでやり取りをするのではなく、関係者をCCに入れまくってメールでやり取りする方が望ましい。この事で、あなた一人では案件の遂行が難しく、上司に具体的なヘルプを求めている事が皆の共通見解になるし、同時に責任とリスクを分散できる。

1人でできない事は恥でもないし無能でもないが、できない事を言い出せないのは残念ながら無能だ。

ここまでした上でその案件が失敗したらmanageできなかったマネージャーにもしっかりと責任が分散される。

しかし一度部下が「がんばります」と案件を引き受けたにも関わらず、期限直前にギブアップしてきた場合、マネージャーから見ると「手遅れになってから言ってきた部下が悪い」と言い訳の余地を与えてしまう。

本来は部下と案件の状況を加味し、それすらも含んでmanageするのがマネージャーだが、現実的には難しく水掛け論になる可能性は高い。そこで、具体的にヘルプを出していたメールを証拠として使う事でマネージャーの逃げ道をふさぐことができる。

・自分の価値をアピールできない人
営業を長くやっていると、どう足掻いても数字が行かない事もある。
その時に「数字行きませんでした」だけだと、業務改善への階段を確実に上ることになる。

数字が行かなかったことに対する反省とその改善案は当然だが、例えばチームの為に貢献した、問題だったこの仕組みを改善した、などの別の視点からアピールポイントを作り出せない人は早々に消えていく。

結論

ここまでさんざんな事を書いてきたが「こんなのは大したことない」「思ったよりもひどい」など感想は様々だろう。

ただ、僕はまだこの会社に所属している。

それは「外資は会社の水さえ合えば、相対的に悪くはない」と合理的に判断しているからだ。上を見てもキリがないし、下を見てもキリがない。

世の中すべてはバランス。得られる報酬と与えられるストレスのバランスを考え、メリットがあるなら外資も選択肢の1つとなるだろう。

すぐにリストラされるという事は逆に言うと慢性的な人材不足であり、採用の確率も高い。鬱々とした日々を過ごしたり、周りが自分のことを正当に評価してくれないなどの不満があるなら、一度、外資にチャレンジしてみるのもいいかもしれない。

ただ、あなたが僕の知り合いだったら、再起不能になってほしくないので高確率で再考を促す。

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