第35回全⽇本⾃転⾞競技選⼿権⼤会-マウンテンバイク(XCE/XCC) 観戦記 その2
Day 2 XCC編です。
野良カメラマンからするとXCEよりはXCCの方が撮りやすいです。周回してくる回数が多いので撮影チャンスが豊富。全員撮り観点で撮り逃しはすくないし、撮影ポイントを渡り歩いて良いところを切り撮るという撮り方が出来るので。
でと、これだけ期間が空いてしまってレースレポートというのもなんなので、写真の話しをしましょうか。
さて、千葉公園でのXCC。コースが短いと言っても一キロ以上はあります。撮る場所によって背景はいろいろ変わるし、差し込む光も朝から夕方に掛けて少しずつ変わっていきます。そして、20分のレースで撮りながらだとざっと1周回れるかどうかぎりぎりです。
なので、何を撮るか、で絵ってすごく変わります。
私の場合は、一枚一枚丹精に作り込むことはしません。もちろん撮りたい絵のイメージはあるし、それに近づけようとしているし、歩留まりをあげる努力もしていますが、そもそものモチベーションの置き所は全員撮り。そして、奇をてらわずに定点で押さえることで各選手の差分を可視化すること。
あと、10年近く撮っていて反射神経も体力も目も劣化していく一方なので、機材の持っているオート機能で如何にカメラマンっぽい絵にするか、が裏テーマだったりします。マニュアル設定撮りは一時期勉強しましたが、設定を戻し忘れる、元に戻らない事故多発により諦めました(笑)。連写枚数が多いのも機材頼りで何処まで出来るかを毎回テストしているようなものだったりします。
なので、正直言ってしまえば、最新の一眼カメラ買えば私のレベルの絵は誰でも撮れるのですよ。これはまじ話です。今は、基本設定をチューニングした後は、絞り優先オートか、シャッタースピード優先オートか、暗いところでスピードをあげて撮るためにISO値を高めに固定するか、くらいしかやってません。私と同じ位置から、私と同じアングルで撮れば同じ絵が撮れるということです。はい。
ま、逆に言えば、何処を切り取るか。何処に位置して何処にカメラを向けてどの画角にするか。が、差になるんですよね。
では、最終レースを語りながら、私が千葉公園のコースのどこを切り抜いたかを見てみましょう。素人なりの苦悩が垣間見えると思います。
まずはスタート。
よーいどんでバチン!!って終わってしまう人もいるので、スタート勝負(シングル多め)傾向の強いコースでは、全員撮りの観点でスタート撮るようにしています。12sがこなれてきたのか、だからこそ用心しているのか、スタートでチェーンが切れるのは最近は減ったかな。
逆回りの出会い頭の最初はDOME前。ほぼスタート位置ですね(笑)。今回の新設部であるというのもあるし、せっかくだから何の建物かを示すDOMEの字は入れたい。でもそれだと人が小さくなってしまう。ホントはもっと煽って近寄りたいのですが、柵越しだと歩留まり悪化する。齊籐師匠なら右側の柵の下から煽りそうだけど……の妥協点がこの絵ですね。
次はそのドーム横。花壇の向こうでもう少し寄って撮りたいのですが、花壇を踏み荒らすことは出来ませんので遠目に押さえます。200mmF2.8なので手前のボケも使えますね。
レースの方は1周目からトキと平林安里がが引っ張ります。XCCは最初の数周は力のある人がぐいぐい引っ張り付いてこられるメンバーを絞ります。トキ、平林安里、松本佑太、リッキー、山口創平、村上功太郎、翔、高本亮太の8人の後ろに隙間が発生し、競うのはこの8人に絞られます。
XCCはコースにも依るけれど一人で走るより複数人でまとまった方が速く、ストップ&ゴーなコースでは集団の前方に居る方が消耗が少ない。その点でXCでありながらCXやロードのクリテリウム的な要素もあるのが面白いところです。
本当はもう1個先のポイントに行くはずが、2周目のポイントで粘りすぎてドームに行くまでの間にある空き地クネクネエリア。寄り切れないし、背景も微妙なので、斜面利用して地面の高さから煽ります。何処かの本に書いてありましたが、基本的に目線の高さを変えて撮ることがテクの一つです。そして、自転車は顔が下を向いている競技なので必然的に煽る絵が多くなるのです。これだけでもちょっと本格的な絵になります。
松山大、日体大、立命館の大学生(U23)の5位争いの図です。創平が久々に生き生き走っていましたね。XCEの疲れからか(ということにしておきましょう)佑太がこの競り合いから遅れて後方に飲まれ、7人の先頭集団になります。
今回攻略できなかったポイント。逆光、明るい背景、選手輪郭くっきり、手前ボケあり、こんな感じのコントラストで選手が10mほど手前に近づいたところで絵作りする予定でしたが、お日様が低くなりすぎてこれ以上近づくとくっきり輪郭が無くなってしまいました。ううむ。イメージと現実の乖離がまだまだです。
第二集団(先頭8位)を引っ張るのはPAX宮津旭。佑太はここに飲み込まれ、//小森亮平、AF山本幸平がパックになります。
いつもなら下から煽るところですが、何かトラブったときに選手が落ちてくることが予想されたため、上から出迎える形の絵にしました。AFは近づく方向のピントは捕まえやすいので、機材を信じて少しズームのサポート入れながら撮ります。観戦者の問題として語られることもあるコーナーのイン側からの写真ですが、左の見切れたところに背の高さ以上の柵があるので、選手の邪魔になら無いし、逆に突っ込んでくる心配も無いです。ご安心を。
これでトキ、リッキー、安里の3人が集団から抜け出す形とになります。この時点では、このまま3人での仕掛けあいになるのかなと思われました。
この辺りから、列は長くなりどの選手かで見切りを付けないと次のポイントに移動するタイミングを見失います。確か1周捨ててここに移動してきたような記憶が……なので、これは先頭を捕まえるだけで何の工夫もしていない絵になってます。(笑)
と、絵的にはど素人の極致ですが、重要な情報が一つ。3人で仕掛けあうはずが、一人プラスされています。高橋翔。ジュニアアジアチャンプの翔が3人に追いついています。トキが先頭に出て長く引いているのでペース調整をしているとは思えますが、ジュニアが中盤になってトップ集団に復帰する展開など誰が予想したでしょう。
で、それだけでは無かったのですよ。
XCEではジャンプ、ドロップなどが設置されていましたが、XCCでMTBらしい上下動の絵になるのはここ、でした。なので、選手一人一人を全面に入れたような絵作りをしようと思って来たものの、トップグループが翔を加えて四人になっただけでなく、5位争いの大学生トリオ、功太郎、亮太。創平も追いついてきての七人集団になったため、集団を撮るべきか迷ってます(笑)。
そして翔撃の瞬間。
ろまんちっく村にも常設されているパンプ を並べたセクション。は、静止画でどの状態がカッコ良いのか分からず、真横から撮るか前方から撮るかに迷って、個より集団を捉えようとコース外側前方を選択。一般的に望遠レンズが得意とする撮り方です。
と、会場が沸き立ちます。??? !!! 翔がトップに躍り出た瞬間です。ジュニアですよ。全日本の最上位の大会でエリートの面々と堂々やり合っての先頭ですよ。まさか、このまま行くのか?ってゾクゾクしました。
パンプ入り口でこの位置関係からこのパンプ出口で即トキに先頭を取り返されます。その様子からトキがレースをコントロールしている感が見えてすぐにゾクゾクは消えたものの、逆に翔がトップに立ったこの一瞬を撮れたのかもっていうラッキー感に心が躍ることになります。
冬の夕方は日が低くて森の中にも強い光が届きます。そんな木立の中を駆け抜けるセクションは、その光とオート撮影が奇跡の1枚という類いの絵を生み出してくれます。この場合だと明るい範囲が小さいので露出検知範囲を中央の人のみに合わせてやるとこのオート設定出現確率は高くなります(笑)。(むろん、事前にその設定にして狙って撮ることは可能です。が、適正露出のセッティング時間と戻し忘れでその後の撮影がオールアウトになるリスクと相談になります……)
横からの光を前方から撮る、に対して、それを横から逆光で撮る。土煙が上がっていることもあり、こんな絵になります。背景に車が無ければ良い感じなんですけどね〜。でも、今回のこの一枚で、撮りたいイメージがまたストックされました。あ、これは木の陰から撮っていて、レンズに光を当てないこともテクの一つになります。
一旦7人まで増えたものの、ラストの展開に向けて仕掛け合いが始まると再び安里、トキ、リッキーの3人が前方で展開。トップの3人がペース調整している間に足を使って追いついた選手はやはり最終局面で仕掛ける側には加われませんね。
とりあえず、事前に想定していた撮影ポイントは全て回ったので、あとはゴールに向かって出会い頭。その意味で8周目と同じポイントになってしまったのは仕方ないでしょう。
ラスト2周。ここで、安里がトラブルで脱落。トキがペーかをあげて前を引き、リッキーが続き、そして、ドヤ顔復活の創平がポジションをあげて最後の勝負。
今回はコースを横断するプランは採りませんでした。選手が来ると渡れなくなるのでリスクが高いんです。なので、ゴールを撮るエリアと同じ側で終始撮る事になり、ラスト周回はパンプを横から撮ることにしました。柵がある関係で視点が下げられないため、表情にフォーカスしづらいですね。
ラストラップは、トキを頭にリッキーの二人がスパート。それまでずっと前方でレースをコントロールいたトキ。抜き(抜かれ)どころを把握している彼がリッキーに隙を見せるとは思えず、トキの勝利を確信。
翔がタレずに二人に続き、レース序盤から続く大学生の戦いは功太郎、亮太、創平の順に。間をおいて、トラブル下の安里、幸平、旭、森下尚仁、佑太、中島渉、佐藤誠示、詫間啓耀、小林勇輝、色川岳宏……計17名が最終ラップに入りました。この後、亮太が一つあげ、安里が更に二つ下げたようですね。
そして、ラストはゴール。ほぼ同じところから複数のカメラが同じ被写体を狙います。ビブ付けている人を優先して、残った席を野良どうしで譲り合い。カメラがあふれるときは背後からのショットにしたりしますが今回は見ての通り背後ショットは無理無理。なので、早めに正面の位置取りするようにしました。選手と背景の人をかぶらせたくなければ煽りで撮るのが必須のシーンですね。
終始落ち着いてレースをコントロールしていたトキが、最終周はリッキーを寄せ付けることなくゴール。おめ。強い勝ち方でした。ロードでブイブイ言わせている経験も役立っているのかも知れませんね。
ジュニア翔が一瞬だけどトップに立った。そして、トキが強かった。という千葉XCCMen Elite でございました。
そのレースの様子は↑こちら。アップ時のアヤで時間軸が多少前後しています。直さないとなぁ
さて、全てのレースをおさらい。
Elite A
Eliteは人数が多いこともあり予選で決勝20名を選抜する方式です。上位10人に入ること、決勝レースでのスタート位置取りを考えてのレースになります。なので、10位争いを見る(煽る?)のが一番盛り上がります。
功太郎が引っ張り、最後はリッキーがしめました。残念賞11位は北林仁。
Elite B
B組は安里が調子の良さを見せてトキとランデブー。トキが制し、安里、旭とTop 5の面々が順当に。残念賞11位は永田隼也。
Advance / Challenge
男子アドバンス 1位 大類正洋 2位 岡田紀彦 3位 長塚良介
男子チャレンジ 1位 伊藤尚紀 2位 稲葉誉人 3位 片岡武
Youth
1位 野嵜然新 2位 成田光志 3位 内野友太
CJの流れからの友太vs然新かと思いきや、成田光志が2人の間に割って入りました。んんっ。これは振りです。
Masters
1位 岡本紘幸 2位 古郡今日史 3位 片岡誉
岡本がXCEに続いてのXCCタイトル奪取。シーズン完全勝利まであと一つ。そして、地球人最上位はこれもXCEと同じく古郡。
力が均衡していれば最終周まで勝負の行方が分からず、1周2分を切り20分程度の緊張が持続するXCCというレースフォーマット。千葉県の県庁所在地、しかもその中心部にある公園でのレースというのも相まって盛り上がり感MAXでしたね。開催者の様々な調整の苦労が偲ばれますが、なんとしてもこの環境は継続していって欲しいです。
あと、女子選手が挑戦しやすい環境の構築も課題ですねぇ(笑)。