雪と美術館 〜ソフィア王妃芸術センター〜
朝起きて、窓を開けたら、雪だった。
これは、想定内。
そして、窓を閉めたら、突っ張り棒に
かかっていたレースのカーテンが落ちた。
これは、想定外。
ヨーロッパの部屋の天井は高く、窓も高い。
部屋に備え付けてあった椅子に登って、
直そうにも身長の低い私は、手が届かない。
仕方ないので、枕元にチップを多めに置いて、
部屋を出る。
いつものカフェに入り、搾りたてのオレンジ
ジュースが付く、セットを注文する。
搾りたてのオレンジジュースって、なんで
こんなに美味しいのか。
マドリッドの人達も朝はオレンジジュース
と決めているのか、次々と巨大なジューサー
にオレンジが放り込まれていく。
月曜日だったので、出勤する前に寄る人が
多いのか、レジは混んでいても、中の
カフェスペースは、誰一人としていなかった。
のんびりと朝食を食べて、カフェを出る。
地下鉄のSol駅迄歩き、地下鉄1号線に乗り
Atocha駅へ。
ピカソが描いた「ゲルニカ」(Guernica)を
観に、ソフィア王妃芸術センターへ。
プラド美術館の時と同じように館内案内図
を貰い、まずはお目当ての「ゲルニカ」が
ある部屋に。
開館と同時に入ったからか、人が全然居ない。
貸切状態で、「ゲルニカ」を観る。
ガラーンとした部屋で観るゲルニカは、
迫力が凄く、圧倒的だった。
モノクロで描かれた絵だけれど、真紅が
秘められているような絵だった。
この絵を好きな時に観る事が出来るなんて、
マドリッドの人達が羨ましい。
徐々に人が増えてきたのか、話し声がする。
皆、最初のお目当ては、「ゲルニカ」だ。
同じ部屋に、ゲルニカの完成までの過程を
紹介した写真があった。
最初の方に比べると、完成していくに従って、
絵がどんどんシンプルになっていく。
最初の方は意外にも、抽象画ぽくないなと
印象だった。
余分なものを限界まで削ぎ落としていった
のが判る、過程を追った写真。
皆、ゲルニカは観るけれど、この過程を
追った写真には興味ないようで、素通り
していく。
何回も観に来ていて、もう慣れっこなの
だろうか。
ソフィア王妃芸術センターは、プラド美術館
と違って、現代アートを沢山所有している
美術館。
正直言って、現代アートは苦手だ。
抽象画も何を表しているのか、さっぱり
判らない。
よく子供が描いた様な絵と言う人がいるが、
その通りだと思っていた。
が、果たしてそうだろうか?
この美術館には、ピカソの「青衣の女」も
展示してある。
彼も印象派みたいな絵を描いていたんだな
と思う。
この絵を観てから、また「ゲルニカ」を
観る。
極限まで色や線等を削ぎ落としながら、怒り
を表現した「ゲルニカ」。
数々の絵を見ていて、ふと思ったのは、
抽象画は子供が描いた様な絵ではないと
いう事。
色々な経験を積んできた大人じゃないと、
描けない絵ではないだろうか。
絵に含まれる、色々な情報を極限まで削ぎ
落とし、シンプルな線と色で表現する抽象画
の数々。
上の階に行くと、モダンなインテリアに合い
そうな絵画や、オブジェ達が並んでいる。
主張がありそうでないような、一見、何の
変哲も無いような、絵画達。
ここで観るから、そう感じるのだろうか。
この絵に合わせた、インテリアが整えられた
部屋で観たら、主張が感じられるのだろうか。
現代アート、面白いな。
と、素直に思うようになった。
下の階に降りていくと、何やら騒々しい。
小さな子供達が先生に連れられて、列を
為して来ていた。
どうやら、美術の課外授業で来ている
らしい。
1校だけでなく、2〜3校来ていた。
ピカソの「ゲルニカ」の前に座って、先生の
話を聞いていたり、ダリの「窓際の少女」の
前に座って、先生の説明を聞いていたり。
スペイン語なので、先生が何を説明している
のか判らないけど、かなり熱心に、時間を
かけて、絵について説明をしている。
先生の話が判ったら、きっと面白いだろうな。
先生の話を熱心に聞く子もいれば、コックリ
寝ている子もいる、つまらなそうにして
いる子もいる。
その都度、アシスタントの人に注意されて
いる。
どこの国の子供も変わらないな。
子供達の様子が面白いので、後を付いて、
一緒に周る。
年の頃は、小学1年生くらいなのだろうか?
この年から、本物の美術品に触れられて、
本物の美術品を目の前にして、先生の話を
聞ける、なんて贅沢で羨ましい環境なの
だろうか。
絵を通して、自国の歴史と文化を知る。
私がこの年の頃、このような授業ってあった
かな。
無かった気がする。
忘れてしまっているだけかもしれないけど。
帰る頃には、抽象画がなんとなく判った
ような気がする。
旅行は、こういう想定外の事があるから、
楽しい。
ところで、部屋のカーテンは直してくれた
だろうか…
馴染みのあるHR/HMのバンド名を描いた
近代アート。
欲しいかも(笑)
芸術って…
(どう観ても、ただの木…)
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