映画アアルトを観て
映画アアルトを観た。
久々のひとり映画。観終わった後、カフェでアアルトの生涯についてあれこれ想いを馳せることが出来たので、この映画はひとりで観て良かった作品だ。
正直観終わった直後は、これはファン向けの映画だと思った。当時の映像(ほぼモノクロ)と関係者のインタビューをもとに、ストーリーは淡々と進められていく。
しかし、観終わった後、内容を忘れないようにマイノートに書き留めていると、じわじわとくるものがあった。
特に印象深かったのは、最初の妻、アイノの存在と、アイノが残した言葉だ。アルヴァ・アアルトの活躍の背景に2人の妻の存在があったことは知らなかった。
アイノが海外にいる夫アルヴァに送った手紙。
なかなか帰宅しない夫に自分が機嫌がわるいことを伝えるのだが、「あなたが帰ってくるまでに機嫌をなおしておきます。」と締めくくっている。
夫の行動が原因で自分の機嫌がわるくなったことは素直に伝えつつも、最後の一文があることで夫を安心させている(気がする)。
また、別の手紙には「仕事があることと、子どもたちが元気なこと。これ以上の幸せはありません。」と書かれていた。アイノが生きた時代(1894-1949)に工科大学を出て建築家として働き、子どもを育てることは大変なことだったと思う。この時代の男性には珍しく、夫のアルヴァもアイノの建築家としての才能を尊重し、パートナーとしても愛していたからこそ、数々の作品が生み出され、アアルトのデザインが現在にわたり世界で愛されているのだなぁとしみじみと感じた。
アイノが54歳の若さで急死した後、アアルトの建築事務所に入所したのが2人目の妻、エリッサ。
エリッサはアルヴァ亡き後、アアルトの残した設計図面やデザイン、資料などを保存、管理することに注力されたそうだ。
関係者(友人?)のインタビューによると、アイノとエリッサは似ていたとのことだが、エリッサはアルヴァと歳が20以上離れていたからか、髪型や服装は夫の好みに合わせていた、というエピソードも紹介されていた。
夫のアルヴァが病院で息を引き取った際、看護師に「ご主人は年金暮らしでしたか?」と質問され、「夫は生涯現役だった!」と憤慨したとのエピソードからも、エリッサがアルヴァの才能を心底尊敬していたのだなぁということを感じた。
映画アアルトを観て、アアルトの生涯を知ることができ、アアルトの作品が益々魅力的に感じるようになった。
アアルトのデザインは美しいだけでなく、環境や社会に配慮し、利用者のことを一番に考えられているそう。(療養所のために設計されたという椅子、パイミオに一度座ってみたい…!)
次にフィンランドを訪れた際は、アアルトがデザインした建築や家具をこの目で見て、手で触れて、堪能したい。(バケットリストに追加)
映画アアルト、ひとり映画におすすめです。