パスモがなくなった
パスモがなくなった。
どこいった、わたしのパスモ。
なんで、なんでなくなった、どこでなくなった?わたしの、けっこう古くから一緒に過ごしてきた、ピンクのケースに入ったやつ。なんで朝はあったのに、ないんだろ?
そんなこと考えながら、会社の前の回転扉の前で、カバンをガサゴソして探す。けどない。なんでだ…?ってちょっと焦りながら、自分の記憶力のなさとどうしようもない間抜けさに呆れながら、なんでなんでが頭を巡る。
考えてもないんだから、きっとないんだ、どこかで落としたんだけど、落とし物にはまだ拾われてないだけかも、とか、もしかしたら誰かが持っていってしまったかもとか、はたまた私が会社のどこかに落として気づかないまま出てきてしまっただけかも、とか。
会社に戻ってみようかなんて頭をよぎってケータイの時計を見るけど、既に22時5分前で。わたしの会社はブラックなくせに22時以降は完全締め出しだから、今からエレベーターじゃ間に合わない。
はあ。
はあ…。
なんで。なんでだろ。なんでだろしか頭の中に浮かばなくなったと思ったら涙が出た。なんで。
なんで私はパスモをなくしちゃってるんだ
なんで私は会社に取りに戻れないくらいギリギリの遅い時間まで会社にいるんだ
なんで先輩は仕事が多すぎてきっとオンライン越しに部長に不満ぶつけまくって泣いてるんだろうなって、声も聞こえないのに分かっちゃうんだ
みんな疲れている。
私も疲れている。なんだかその事実がまじまじと分かってしまって、本当に泣きたい気持ちになってしまった。
わたしも疲れているのに、相当疲れているのに、きっともっと疲れて倒れてしまいそうな先輩を感じて、途方もなく心が疲れてしまった
のだと思う。人の疲れや悲しみが伝染するのいうのは本当だと思う。たぶん、喜びとかよりずっと大きく伝染する。少なくとも、わたしは。
必死に持ち直そうとして、見つかるまで切符で、次会社行って探してみて、もしかしたら見つかるかもだし、なければ再発行だな、なんて思っていたけど、先程電車を降りて道中を思ったとき、あのピンクの優秀なパスモケースには家の鍵と自転車の鍵という、なかなかに重要かつ生活に必須なアイテムが紐づけられていたと気づく。
本当にさいあく。よくOLが最低の1日ってつぶやくような漫画やドラマがあるけれど、今日の私は本当にそれだと思う。まさにさいあくとしか言いようがないくらいに最悪。
泣きたい気持ちを誰かにわかってほしくて、共有したくて母にまずは電話したけど出なかった。彼氏にも電話してみたけれど出なかった。すぐに大学時代の先輩と飲んでいるとLINEが来たけれど、明るく返す気力もなく、やや暗い返事で嫌味に返してしまった。ただこのくらい仕方ない、その配慮は出来ないくらい私は疲れているのだと言い切ってしまうくらいの横暴加減を見せるほど、疲れているのだ。そのあと少しして着信が長く鳴ったけれど、でる気力もなく、そして彼が心配してのことなのか、先輩の悪のりに付き合わされているのかが読めなすぎたので無視をさせてもらった。ごめん
私は元来、こんなに暗いことを公に連ねる人間ではない。
方だと思っている。
が、この有様なのである。
すべてはパスモをなくしたことから始まって、日々見ないふりをしている全てのストレスや疲れがあふれてしまったのだろう
ひとは本当にささいなことでつぶれてしまうのだろうな、と実感した。それがパスモをなくすなのかもしれないし、そうじゃないかもしれないが、とにかくこんなに壮大なことを考えてしまうくらいには暗エモーショナルな気持ちなのだ。。。
明日、会社に行こうか。在宅の予定だったけれど。
もう一回、もしかしたら私がデスクに残しただけかもしれないし、優しい誰かが届けてくれているかもしれないし、頑張って行ってみようか。
頑張れるか、わたし。
がんばれるか、わたし。