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20200926

グザヴィエ・ドランの最新作『マティアス&マキシム』を観に行った。もともと昔からずっと好きな監督だけど、別に彼がゲイだから彼の作品が好きというわけではない。というと逆に軽蔑される気がして大っぴらには言えないけど。映像の美しさ、詩的さ、構成、余韻、そして何より母親との関係性の描き込みが相変わらず白眉で嘆息した。『マイ・マザー』『Mommy』『たかが世界の終わり』は大々的に母と子もしくは家族をテーマにした作品だったけど、今回の作品もマティアスとマキシムの恋物語の裏でベース音のように重く低くずっと母親の存在が鳴っていた。血の繋がりという宿命の中で入り混じる絶望と希望と諦めと愛情、切っても切れない人間関係とどう向き合って生きていくかを描かせたら現代の映画監督では一番だと思う。ドランの作品はどれも身を切って血を流して痛みを注入して作られた作品ではあるけど、一方でずっと鮮明で瑞々しくて美しい、酸化しない血のような、そんな作品。


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