2022年の僕に刺さったコンテンツにランキングをつける
2020年から、こういうことをやっています。佐久間宣行をはじめ世の中のコンテンツをなんでも追ってるマンと違い、僕は映画も全然見ないし、音楽も適当にサブスクを回す程度。漫画も小説もさほど追わず、いったい何のコンテンツをという話なんですが、そんな僕くらいの人でも軽率にこういう記事を書いてほしい。あなたのそれが読みたい。
覇権コンテンツから遠い場所にいる僕に偉そうにランキングを作れるのかという話もありますが、たまたま実家で点いていたテレビ、その日偶然目にしたコンテンツも入っていますが、とにかく刺さったかどうかを基準にしています。とはいえ、コンテンツを摂取するのだという使命に急にかられ、『ゴールデンカムイ』も『SPY×FAMILY』も『チェンソーマン』も読んだ、本当に僕にとっては珍しい一年だった。それでは。
選外
★映画・ドラマ
(ドラマ)坂元裕二『初恋の悪魔』/大島里美『妻、小学生になる。』/渡辺あや『エルピス』/藤本有紀『カムカムエヴリバディ』/バカリズム『ノンレムの窓』
(映画)新海誠『すずめの戸締まり』/濱口竜生『ドライブ・マイ・カー』/土井笑生『衝動』/是枝裕和『ベイビー・ブローカー』/樋口真嗣『シン・ウルトラマン』/中川龍太郎『やがて海へと届く』
(配信)ダウ90000『いちおう捨てるけどとっておく』/ダウ90000『ずっと正月』/白武ときお『劇場版まーごめドキュメンタリー まーごめ180キロ』
とはいえ、今年もドラマも映画も他のあらゆるコンテンツ最低限のものしか見れなかった。
『初恋の悪魔』、一話完結型の推理ドラマかと思いきや中盤からの急展開で、リアルタイムに放送しながら物語が急に動き出すグルーヴのようなものが坂元ドラマの魅力なのだと思う。前半を期待して毎週見ていたのに……というような感想も見かけて、コンテンツを共有するとはかくも難しいのかと実感させられる。とはいえ、どうしても他作品と比べると波に乗り切れなかった部分も多いので、ぜひ他の作品を見てほしい。
他、『カムカム~』はラストのご都合主義な大団“円”も作品を愛した人へのボーナス。普通おさるのジョージの英語名なんか知らないわけで、考察込みの演出なのではなく、気づかれないままでも作品の価値は変わらないでしょ、という程度の遊び心なのでしょうね。
『すずめの戸締まり』、面白かった。より作家性を高めてもいい頃合いの作品が『君の名は。』より分かりやすくなってるの、意外。『やがて海へと届く』といい、10年を超えた今、震災がモチーフになっている作品に名作が生まれているの、時間が経ったけれどぎりぎり風化はしていない今だからこそなのだろうなと思う。『まーごめ180キロ』人を愛するということ、大鶴肥満という愛すべき人間がそこにいるということ。
★動画
ララチューン『ニシダ更生プログラム』/大喜る人たち『【#大喜利 】晩ご飯のことで頭がいっぱいのポルノグラフィティ【#大喜る人たち 415問目】』/流れ星TV『【ビリー・アイリッシュ / バッド・ガイ】全部ちゅうえいで歌ってみた【Billie Eilish - bad guy】』/広島ホームテレビ『#つぶやき市長と議会のオキテ〜そこに“議論”はあるのか〜』/R藤本『DBSTAR VISION』/赤もみじ『【新企画】「100個ブチギレないと帰れませんin原宿」』/『【新入生募集期間4月まで延長!!!】「NON STYLE石田によるネタ作りの授業」【NSC】』
昨年よりYouTube動画をこのメモに入れる回数が減った。面白いチャンネル、面白いと噂の動画が増えすぎて追えなくなっていく。登録していても動画を見ずに流れていくチャンネルが増えていく。
『ニシダ更生プログラム』、次々点。クズキャラが流行っているのではなく、クズを露呈させても実力ある人間が生き残っているだけなのだと思います。丁寧に原因と過程を考えるプロセスが面白かった。『#つぶやき市長と議会のオキテ』、そもそもツイッターでウケるものを的確に選んでいくだけのユーモアが嫌いで、政治家のそれは猶更。なのは別として、この番組は良くも悪くも視点が固定されている分、感情移入してしまうような作りになっている。ドキュメンタリーはそうでいいのかもしれない。赤もみじ、悲しすぎる。こんなに面白いのに。
「NON STYLE石田によるネタ作りの授業」、凄すぎる。僕が漫才に対して思うもやもやを見事に言語として具現化していく(ひわちゃんはレタス担当になっても一緒に歌ってはいけなかった)。
★記事
小山テリハ『第4回 テレビウーマン・小山テリハの「人生は編集できない」雑な「雑談」はちょっと…』/K助『雑感【マルコポロリ!(しんいちとZAZYの未来を考えよう)】』(ヨイ★ナガメ)/宮崎日日新聞 矢口誠「ことば巡礼 中村紘子」/ハフポスト『26歳で「早発閉経」と診断された。結婚発表した千種ゆり子さんが今、伝えたいこと。』/『平野レミ、上野樹里の手料理は“餃子100個”…胃もたれしない秘訣に「勉強になる」』(WEB ザ・テレビジョン)/灼熱亭 火焔『QuizKnock記事にまぎれた「偶然短歌」を歌人とガチで批評してみる』(QuizKnock)/パスカ『POLAの支店名が自由すぎる』(デイリーポータルZ)/藤谷千明『アフリカ系外国人から「おめでとう」が届く…バズりまくる“サプライズ動画”が抱える差別問題』/零細企業買収『零細企業買収して売却した話』(note)/こなつ『トレパク冤罪の顛末まとめ』(note)/酒寄希望『育休中に相方がめちゃくちゃ売れた』(note)/バービー『バービーが振り返る「選択的夫婦別姓」1年前結婚直前の「大ゲンカ」』(Web記事)/スズキナオ『南海電鉄の社員食堂はすごく入りづらいけどいい』(デイリーポータルZ)/『M-1決勝進出・真空ジェシカがボケ倒す、前代未聞の嘘つきインタビューに挑戦』(インタビュー記事)/前田知礼『「有吉の壁」がヤな記憶を上書きしてくれた』(note)/氷点下カチコチかもリバー『ミルクボーイの漫才風CM全部みる』(はてなブログ)/いちむら『共通テスト不正に加担させられそうになっていた話』(note)/フィンランドワークショップomena『ゲームの勝敗でかんしゃくを起こす子どもにできることは大人げない大人になること』(note)
相変わらず脈絡がない。
★バラエティ・テレビ番組
『あちこちオードリー 私の教訓どうですか? 芸能界が生きやすくなる参考書を作ろう!』(2.16)/『トークサバイバー #1 - #3 』/「M-1アナザーストーリー」/「フジ芸人ロックフェス」/「じゃないとオードリー オフゼロオードリー」/『ここにタイトルを入力』「クイズ・ファイブセンス/Rest Garden」「足りない世界で愛を描く。」/「激レアさんを連れてきた。『車いすで世界一周した人』」(9.12)/「今ちゃんの実は… 『何も知らない相方にボケ続けたら10分で何回ツッコまれるか』」(7.13)/NHK「笑いの正体 第2弾・女芸人という生き方」(ドキュメンタリー)/北陸朝日放送「川原くんのクイズさん」(バラエティ番組)/テレビ朝日「霜降り&錦鯉の親孝行イズビューティフル」(バラエティ番組)/『水曜日のダウンタウン K.カズミに迫る』/「くりぃむナンタラ “もうええわ!”を言わない相方たち」(5.8)/テレビ東京「ダイアンの絶対取材しない店」/チャンスの時間「#177:第4回 千鳥大悟クイズ王への道!クイズの時間」「#186:芸能界に風穴を開けろ!ブレイキングバヤンチャオーディション」「#198:丸4日野宿!きしたかのiPhone14日本最速チャレンジ」/オードリー即興漫才『じゃないとオードリー お笑い修行ミッション』/『キングオブコントの会2022』/『R-1グランプリ2022 どこよりも早い総決算! ファイナリストが裏側全部しゃべりますSP』/『ギリギリ知筋レース』
バラエティ、毎週欠かさず見ていたのは「水ダウ」くらいかもしれない(「トゲトゲTV」は見逃しがち)。家にいる時間が多かった期間、「ラヴィット!」は本当に楽しかった。あと、やや悔しいけれど、「オモウマい店」は本当に面白い。
「チャンスの時間」も見逃しがちだけれど、今やお笑い界を牽引する最高峰の番組になっていますね。
『トークサバイバー』は次点。作り込まれたドラマとのギャップや笑ってしまう俳優たちの画ってこんなに面白いのか(末期笑ってはいけないが大物を呼んで達せなかった場所に、悠々と立っている)。もちろんガチだと信じているが、疑惑の判定の後の作り込まれたドラマは出来レースを感じさせてしまい悲しいので、何か判定に説得力が欲しかった。
★お笑い
ヨネダ2000『餅つき』(M-1グランプリ2022)/ロングコートダディ『ふくらまくら』(単独ライブ)/ダウンタウン『漫才』「伝説の一日 千穐楽 第三部」/怪奇!YesどんぐりRPG『ダイヤモンド』/『性格の悪いネタをするライブ』01.12(ネット配信)/『ダイヤモンドno寄席』01.02(ネット配信)/『マヂカルラブリーno寄席』/『2700八十島のメンタルの話』(トークライブ)/空気階段『fart』(公演)
「M-1の3回戦全部見る」をやっているのに(やっているから?)3回戦の話になったとき、コンビ名を言われてもネタを覚えていないことが多かった。コンテンツを記憶するということに向いていないのだろう。
空気階段『fart』、さすがに『anna』が良すぎましたが、絶対に買う価値ありの面白さ。『2700八十島のメンタルの話』、人は変われる、かどうかはわからないが、ひとつまみのユーモアさえあれば過去はどうとにでもなる。
M-1で1番笑ったのはそれはもうヨネダ2000。5位タイで妥当だが、舞台で見たすぎる漫才師1位。ときに、漫才は互いに初めて聞いた体でさえあればなんでもいいと思っている。逆にいえばそれが僕のなかのレジスタンスで、お金を貸したかどうかとか匿名のマッチングアプリでお互いが出会っていたとか過去の両者に浸食する漫才台本が個人的に好きになれない。
ウエストランド、面白かった。蔑んでいるようで、誰も本当の意味で傷つかない(あれで傷つくアイドルやYouTuberは……)。ときに、内輪ネタといったって、ローカルな地名やマニアックな固有名詞を出されるだけで人は笑ってしまうが、それと何が違うのか。有吉弘行がネットカルチャーを揶揄していうように、友達がおしっこ漏らすのが一番面白い。賞レース決勝でそれをやるのはすでにお見送り芸人しんいちがやっているけど。そう考えると今年、ヤバい年だな。
★漫画
熊倉献『ブランクスペース③』/藤本タツキ/遠田おと『フツーに聞いてくれ』/小日向まるこ『あかり』/森本大百科『価値観』(Twitter漫画)/藤本タツキ『さよなら絵梨』
『フツーに聞いてくれ』をそれまで考察させるような作品を書いてきた藤本タツキが書くという、「それはないぜ」というような話を聞いたけれど、『さよなら絵梨』が面白すぎてその勢いで読んだ考察サイト、芯食ったやつマジの一つもない。例えば「どこまでが現実か」とかを考えれば考えるほど面白くなくなる作品もある気がする。
★その他
(ツイート)
灘高クイズ同好会(@ND_Quiz)「こうかはばつぐんだ!」/皆の衆(@minano_two)『キョン見てなさい、寿司を縦に食べるわよ』/藤岡みなみ『夜空にも、街にも、ブレーメンの音楽隊にも見える、すべりだいの階段の擦れたところ』/テクダ(@FAXXXX)『飲酒運転のイラスト ヤバい度ランキング』/キスをしてるイルカ(@news_item)『これって言葉の意味一切わかんないのに何するか完全にわかるのすごいな。』/慰安・ソープ(@M___0070)「画像ツイート」/柳葉『誰がシュートを打ったか分からない阿波踊りのチーム』/シン・高梨りんご(@takana_ringo)『控えめもまた美しい。 #いいおっぱいの日 #オリジナル 』/聖徳明太子『さっきこんなアカウント作りました。3分も経ってないけど、続々と反応きてます。』(Twitterリプライツリー)
(その他)
小川哲『君のクイズ』/「Sports Graphic Number 1064 総力特集M-1」/源田壮亮騒動を受けてのコメント/「G-1グランプリ」(クイズ大会)/「THE MATCH 2022 那須川天心vs武尊」(格闘技)
ツイッターが好きです。何者でもない誰かが何かを発信しているという行為が好きなのかもしれません。ここに書いたツイートたち、僕が何を評価したのかが今振り返って全く分からない。でも「キョン見てなさい」は面白すぎてしばらく引きずったし、藤岡みなみさんのツイートは日常の気づきが煌めきに変わる瞬間を教えてくれたようで尊かった。この出会いが、日々SNSを触る理由なのかもしれない。灘クイ研、これこそがユーモアだよなと思う。
小川哲『君のクイズ』、クイズ贔屓抜きで面白かった。クイズをやっていると、雑学漫才を額面通りに受け取れなくなって久しい(一番多いのは、超難問を常識のように扱われたときの違和感)。ただ監修にクイズ王が入りその違和感は微塵もなく、なんだったら必要以上に元ネタの人物さえ想起させるから、面白さも一入。言い方は悪いがクイズでなくても同じように名作なのだが、すべての「ドラマ」の後ろにある意図や奇跡を解き明かしていく過程があまりにも躍動的。
ときに、音楽をここのコンテンツランキングに入れるということを忘れてしまう。Spotifyによると、今年最も聞いていた曲はVaundyの『踊り子』で、最も聞いていた歌手は柴田聡子(『雑感』)だったそう。
さらにいうとクイズ問題集もランクインできていない。単純に読み物として読むことができていないのだと思う。なぜなら1月から8月までは芸能クイズにしか触れていないから!
トップ15
ここからが本題です。長かった……
15位
ゴクマ(極細松茸もどき)『#徹子の部屋ゲスト予想』(Twitterハッシュタグ)
みなさま、こちらの狂気のハッシュタグをご存知でしょうか!
EPG(リモコンで「番組表」を押すと出てくるアレ)で「徹子の部屋 タ…」というように1文字しか表示されないことを逆手に取り、毎日(!)誰がゲストかを頭文字で当てて月ごとの勝敗を取るという、誰にも褒められず謗られずのクイズを、ゴクマさんという方は一人でずっとやっているのです!
全然知らないゲストでもその類稀なる知識を活かした解説を入れておられ、大変勉強になります。そして、しょうもないことを続ける偉大さと尊さ!
14位
藤岡拓太郎『ぞうのマメパオ』(絵本)
やけに癖の強いおじさんが登場するTwitter漫画でおなじみ、藤岡拓太郎。シュールで支離滅裂なのに、その世界には確実に存在していると思わせる説得力で筆を運ぶ世界観が支持される所以でしょう。
リズム感とナンセンスさを子供に笑ってもらう前作『たぷの里』と違い、軽快にリズミカルにそれでも世界のすべてがぞんざいにされないままストーリーが進んでいく。かわいさ溢れるのにやはりシュール。絵本はかくあるべき。
13位
四月『名前も知らない人のアカウントを2年かけて特定したら人生が確変に入った』(note)
よくリプライツリーやnoteで回ってくる身の上長文記事、つい読んじゃう。そんなバズ記事のなかでもこれは異質で、畏怖もあり、そして尊敬の念。執念と、愛の話。
これを読んで、そのあとツイートの画像欄を覗いても、ルックスの話と結びつけてはいけない。それは自信が追いかけてくるのだと思わされる。
12位
pinkman_ch『癖が強すぎる息子のお風呂風景』(YouTubeショート)
YouTubeショートが時代を席巻する。TikTokも導入したが、永遠に(そして無駄に)時間が溶ける。世の中の人間には2種類いて、ショートにブレイキングダウンの切り抜きが回ってくる人間と、回ってこない人間らしい。
子供の想像力。いたずらそうに、少しばつの悪そうにする顔。母の声。これを切り取れたことが、すべての奇跡のように思える。
11位
松居大悟『ちょっと思い出しただけ』(映画)
映画を見たって細かく憶えていないことが多いけど、この映画に関してはしばらくしても、ふと脳裏にシーンが浮かぶことが多い。同じ日の過去を1年ずつ辿る構成になっていて、つまり別れを知ってから出会いを思い返す構成になっているのだけれど、(坂元裕二が繰り返し説く)好きになった事実の肯定が物語を貫いている。ニューヨーク屋敷、何かの番組で伊藤沙莉が相手役になったことを話していたけど、(価値を損なわない程度の)ネタバレではないか。人生の転機はあっけないというユーモアを象徴する人選。
10位
ウエストランド井口×飯塚『今月のお笑い』(お笑いナタリー)
お笑い界は広い。どこかで何かが起き、芸人が別媒体でめいめいに発信し、ファンがそれを増幅させる。何が起ったかを把握するのは不可能だが、今求められているのはこういうコンテンツなのではないか。井口の性格によって情報への温度感をハッキリさせていてそういう意味でも読みやすい。
クイズ界でも同じことを誰かがしてほしいのだけれど!
9位
556(@kojiro337)『こんなところで会えるなんて』(Twitter漫画)
世代の共感。お笑いに限らずあらゆるテーマとなっている。どうしたってスマブラの、エンタの、あの頃の話をされると無条件に平伏して頬を緩めてしまう(真空ジェシカしかり、ダウ90000しかり)。今作はそれをわかりやすいエモさに明るく落とし込んでいて、「ここにいる」みたいなありきたりなメッセージを意外な角度で放り込まれる。
8位
ダウ90000『深夜1時の内風呂で』(ドラマ)
7位
和山やま『女の園の星③』(漫画)
和山やまの何がすごいのかといわれて、困った。確かに面白いが群を抜いているとは思わないと。でも和山やまは天才だと思う。共感の笑いをベースにしつつ、展開は想像の一歩だけ先に着地する。どれだけシュールでキテレツでも、その世界でその人物がそこに(あるいは我々と同じ世界のどこかにも)生きているという実感がある。これは藤岡拓太郎評と同じ。
あるいは、もうひとりの天才・蓮見翔評と同じかもしれない。我々と同じ日常のなかで、面白がれるところ、些細な綻びを見つけて、エモーショナルに完璧な物語に組み込む。それを可能にさせる会話劇。
蓮見翔は昨年の作品『旅館じゃないんだからさ』で岸田國士戯曲賞にノミネートされた。
これこそが蓮見翔作品の魅力であり、和山やま作品の魅力であると思う(もしかすると藤岡拓太郎も、坂元裕二も)。この会話運びの心地よさを、私は面白いと思っている、これこそが面白さだと思っている。
6位
品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『頻出ツイート100選』(note)
なぜ物議を醸すのか? 消されてしまったのか? ……本当に理解ができない。この程度のことに、何かが害されたと感じる人間がいるのか。え、その程度の人間のユーモアって、守るべき価値があるのか。
そもそも日々をツイッターに溶かしている我々にとって、この上ない上質なあるあるネタであるし、面白くないものも大量に網羅することだけで面白くなるのに。あー残念だな。
5位
滝沢カレン『結婚報告』(Instagram投稿)
ある人から見るミクロな世界の煌びやかさを表現した文章として、こんなに素敵な詩があろうか。そしてそれを書いているのが、日本語の不自由さがウケてバラエティにひっぱりだこのタレントだということの可笑しさ。僕たちがどう思おうとどう言おうと、彼女は彼女の世界を笑って生きていくという当たり前の事実が少しだけ違和感のある文章に表現されている。
4位
ランジャタイ+ダイアン津田篤宏のコント『ゴイゴイスーミュージカル』「お笑いの日 PLUS ONE FES」(コント)
ランジャタイが2020年の敗者復活からの2年間で築き上げてきたものと、ダイアン津田が上京してからの4年間で築き上げてきたもの。そのパブリックイメージがぶつかって、この支離滅裂な空間をひたすら面白いと思える空間に押し上げている。であるから、ここ3年テレビを見ていない人にはこの面白さが伝わらない。
M-1をリアルタイムで見ていない津田は、ランジャタイの笑いが分からない。それでも必死に練習したという映像がフリとなって、こんなに意味の分からない空間なのに、それを唯一主導する津田すらが分かっていないのだった、と思い返してまた笑いを増幅させる。
3位
生方美久『silent』(ドラマ)
あらすじだけだと、なんてことのない話のように聞こえてしまう。実際にストーリーをなぞるだけだとありきたりなよくあるドラマだと思ってしまう。でも、適当で安易な演出の作品が多いなか、すべての登場人物の心境を丁寧に描き、納得感ある行動とリアリティある演出を徹底して、ありきたりと同じ道を辿っているようでいて、全く違う作品になっている。名言は名言っぽく言わないのがいい。回想と現在が混濁する演出とか、奈々→想→紬(←風間)と手話がおすそ分けされていくことの尊さが花束の交歓に託される脚本とか、細かい良かったところを話せばきりがない。生方美久、2作目の期待がどうしても上がっているけれど、好きなようにやってほしい。
もちろん微妙なところもあって、花束を渡すまでのご都合感とか、5話ラストのノートを無駄遣いしている残念なところとか。でも、そういうところを吹き飛ばすほど良い脚本と演出とそして全ての役者の名演(例えば板垣李光人!)がある。
2位
高野さんを怒らせたい。『【ドッキリ】YouTubeの広告が全部嘘で怒らせたい。【きしたかの】 』(Youtube動画)
きしたかの という漫才コンビが舵を切って始めた、ツッコミ・高野をブチギレさせるというだけのYouTubeチャンネル。やってることは古典的な大喜利ドッキリなのだけど、高野のブチギレがなんてったって面白い。この動画もそうだし、ドラゴンボールもジグソーパズルも、仕掛け側の手がかなり込んでいるうえに、ネタがしっかりしている。高野が感情ぐちゃぐちゃになりながら泣き笑いで持って怒る。僕らも気づけば同じ感情に至っている。
さて、1位。
1位
#ちむどんどん反省会 (Twitterハッシュタグ)
今年良くも悪くもどのコンテンツに心動かされたかな、と考えたとき、悪い方で、間違いなくこのハッシュタグでした。なんとドラマは見ていないのだけれど、欠かさず朝ドラを見ている母から作品のひどいポイントを聞いてからハッシュタグを追うと、するとどこがどうひどかったかを類まれなる文章力と分析力で誰かが鋭く指摘している。どこかのおじさんの感想ブログを読む。それを味わうコンテンツとして毎日欠かさず追った。悪い感情なのだけれど、並のしょうもないドラマだとそうはさせないから、作品に相当なエネルギーがあったということ。そして、それ自体が良質なコンテンツになっていく。
ときに、「そんなに面白くないなら見なければいい」というのはちゃんちゃらおかしい。朝ドラというのは何があっても何十年見続けた人もいる特別な枠なのに、それを見ないというのは勝手すぎる。長年続いたシリーズの一迷作とか、伝統ある地域に建てられた謎のハコモノとか。
僕は見ずにハタからふんふんと頷いていた。すいませんね。でも、面白かった。どんな楽しみ方だっていいだろ。
眠たい。
<過去の1位>
2019年 原口文仁の復帰タイムリー
2020年 きくちゆうき『100日後に死ぬワニ』
2021年 『水曜日のダウンタウン』「 『ラヴィット!』の女性ゲストを大喜利芸人軍団が遠隔操作すれば、レギュラーメンバーより笑い取れる説」
2022年 #ちむどんどん反省会