鰻の歌
嗤咲痩人歌二首
石麻呂にわれもの申す夏痩せによしといふものぞ鰻とり食せ
痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻を漁ると河に流るな
(いわまろ/いしまろにわれものまをす なつやせに よしというものぞ むなぎとりめせ)
(やすやすも いけらばあらむを はたやはた むなぎをとると かわにながるな)
訳
痩せている人をからかう歌
石麻呂様に私はひとつ、申し上げたいのだ。
あなたはガリガリでいらっしゃるから、夏痩せに良いとされているあれっ、うなぎを取ってきてお食べよ。
(…ここで、石麻呂さんが返事をしたのでしょうかね。「うなぎかぁ…そうだね…精がつくって言うよねえ…」)
いやでもよ、ガリガリに痩せていても、生きてるだけでそれで良いのよな。もし万が一、うなぎを取ろうとして川に落ちて流れたりするんじゃないぞ。気をつけろよ、お前はすぐに流されそうだからな(全く、やせてるんだから!)
石麻呂…人名。大伴家持の友達。奈良県のHP「はじめての万葉集vol.27」に以下の説明がありました。「この歌を贈られた石麻呂という人について『万葉集』には、本名を吉田老(よしだのおゆ)といい、教養がある立派な人物だったが生まれつきとても痩せていて、たくさん飲み食いしても飢えた人のようにやせ細った姿だった、と書かれています。」
われもの申す…私は申し上げたい。かしこまった言い方。
ぞ…だぞ!
ば…(未然形にくっついて)ならば
あらむを…あるだろうに。あるだろうが。
はたやはた…将や将。もし万が一
大伴家持さんと石麻呂さんは冗談が言い合える間柄だったようで、こんな2首が残っていますね。
痩せっぽちはからかいの対象だったのか。うなぎはこの頃から夏バテに効く食べ物だったのか。と妙なところではたと立ち止まってしまう2首。
大伴家持
万葉集