
ロミオとジュリエット|ウィリアム・シェイクスピア|※ネタバレ注意※
プロローグ
ヴェローナの二つの名家は、古くから確執を抱えている。その対立から新たな争いが生まれ、市民たちの手が血で汚れる。この敵対する二家から、運命に翻弄される恋人たちが現れる。彼らは悲劇的な最期を迎え、その死によって両家の争いも終わる。恋人たちが死に至るまでの恐ろしい道のりと、彼らの死によってようやく終わる両親たちの怒りが、この舞台で描かれる。
```mermaid
graph LR
ロミオ:::montague
ジュリエット:::capulet
モンタギュー:::montague
キャピュレット:::capulet
乳母:::capulet
マキューシオ:::prince
ベンヴォーリオ:::montague
ティバルト:::capulet
ロレンス修道士:::neutral
パリス伯爵:::neutral
エスカラス公:::prince
ロミオ <-->|秘密の恋| ジュリエット
モンタギュー -->|父| ロミオ
キャピュレット -->|父| ジュリエット
乳母 -->|世話役・相談相手| ジュリエット
マキューシオ -->|親友| ロミオ
ベンヴォーリオ -->|従兄弟・友人| ロミオ
ティバルト -->|従兄弟| ジュリエット
ティバルト -.->|敵対| ロミオ
ロレンス修道士 -->|協力者| ロミオ
ロレンス修道士 -->|協力者| ジュリエット
パリス伯爵 -.->|求婚者| ジュリエット
エスカラス公 -->|裁定者| モンタギュー
エスカラス公 -->|裁定者| キャピュレット
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classDef capulet fill:#FFB6C1,stroke:#DC143C,stroke-width:2px,color:#000000;
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```
第1幕
第1場 公共の場所
モンタギュー家とキャピュレット家の使用人たちが街中で出会う。彼らは言葉遊びを交わしながら互いを挑発し、次第に緊張が高まっていく。やがて喧嘩が始まり、モンタギュー家のベンヴォーリオが仲裁に入ろうとする。しかし、キャピュレット家のティバルトが現れ、事態は一層悪化する。
騒ぎを聞きつけた両家の当主も加わり、街は混乱に陥る。この騒動を収めるため、ヴェローナの君主であるエスカラス公が登場。彼は両家を厳しく叱責し、今後街の平和を乱す者には死罪を与えると宣告する。
一方、モンタギュー家の息子ロミオは、失恋の痛手に苦しんでいた。彼は毎朝早くから出かけては、一人で物思いにふける日々を送っていた。ベンヴォーリオはロミオの悩みを聞き出そうとする。
ロミオは愛する女性について語り始める。彼女の美しさと貞節さを賞賛しつつ、その女性が愛を拒絶していることに深く苦悩している。ロミオは恋心を矛盾に満ちた感情として表現し、その苦しみを吐露する。
ベンヴォーリオは親身になってロミオの話を聞き、他の美女に目を向けるよう助言する。しかし、ロミオはその女性の姿を見るたびに彼女の美しさを再確認してしまうと嘆く。ベンヴォーリオは粘り強くロミオを説得しようとするが、ロミオは自分の想いを忘れることはできないと主張し、二人の会話は平行線をたどる。
第2場 通り
キャピュレット家の当主が、パリス伯爵と街を歩きながら会話をしている。キャピュレットは、モンタギュー家との確執について触れつつ、パリス伯爵からの求婚に対して慎重な姿勢を示す。娘のジュリエットはまだ14歳であり、結婚には早すぎると考えているのだ。
しかし、パリス伯爵の熱心な態度に、キャピュレットは今夜の宴に招待することを提案する。そこで娘と会う機会を設けようというのだ。キャピュレットは使用人に宴の招待状を配るよう指示を出す。
その後、ロミオとベンヴォーリオが登場。ベンヴォーリオはロミオの失恋の悩みを聞き、新しい恋を見つけるよう勧める。そこへキャピュレット家の使用人が現れ、招待状の内容を読み上げるよう頼む。ロミオが代読すると、それがキャピュレット家の宴の招待状だと判明する。
ベンヴォーリオは、この宴にロミオを連れて行き、ロザラインよりも美しい女性を見つけさせようと提案する。しかしロミオは、ロザライン以上の美女はいないと主張し、宴に行くことに消極的な態度を示す。
第3場 キャピュレット家の部屋
キャピュレット家の屋敷の一室で、ジュリエットの母親であるキャピュレット夫人と乳母が集まる。キャピュレット夫人はジュリエットを呼び出し、結婚について話し合おうとする。
乳母はジュリエットの幼少期の思い出を饒舌に語る。ジュリエットがまもなく14歳になることや、彼女の成長を懐かしむ様子が伝わってくる。
キャピュレット夫人はジュリエットに結婚の意思を尋ねる。ジュリエットは結婚を考えたこともないと答えるが、キャピュレット夫人は若くして母親になった自身の経験を引き合いに出し、パリス伯爵との縁談を持ちかける。
乳母とキャピュレット夫人はパリス伯爵の魅力を褒め称える。キャピュレット夫人はジュリエットに、今夜の宴でパリス伯爵をよく観察するよう勧める。ジュリエットは慎重な態度を示しつつも、両親の同意があれば検討すると答える。
そこへ使用人が到着を告げ、宴の準備が整ったことを伝える。キャピュレット夫人たちは急いで宴会場へ向かう。
第4場 通り
ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオらが仮面舞踏会に向かう途中、ロミオは気が進まない様子で、自分は踊らずに松明を持つと言い出す。マキューシオはロミオを励まそうとするが、ロミオは恋の重荷に押しつぶされそうだと嘆く。
マキューシオは「クィーン・マブ」という妖精について長々と語り始める。この妖精は夜な夜な人々の夢の中を駆け巡り、様々な幻想を見せるのだという。恋する者、貴族、法律家、聖職者、兵士など、それぞれの立場の人間が見る夢の内容を面白おかしく描写していく。
ロミオはマキューシオの話を遮り、夢のことなど無意味だと一蹴する。しかし、ベンヴォーリオが時間が迫っていると促すと、ロミオは不吉な予感を口にする。それでも一行は仮面舞踏会へと向かっていく。
第5場 キャピュレット家の大広間
キャピュレット家の広間で、使用人たちが宴の準備に忙しく立ち回っている。キャピュレットが登場し、来客を歓迎する。彼は昔を懐かしみながら、踊りの楽しさを語る。
音楽が鳴り響き、宴が始まる。その中でロミオは美しい少女を見つけ、一目で心を奪われる。彼女の美しさに魅了されたロミオは、彼女に近づこうとする。
一方、ティバルトはロミオがモンタギュー家の者だと気づき、怒りを露わにする。しかしキャピュレットは宴の雰囲気を壊さないよう、ティバルトを諫める。
ロミオとジュリエットは出会い、言葉を交わす。二人は互いに惹かれあうが、やがてジュリエットはロミオがモンタギュー家の息子だと知り、愕然とする。同様にロミオも、ジュリエットがキャピュレット家の娘だと知り、運命の皮肉を感じる。
宴の終わりに近づき、客人たちが去っていく中、ジュリエットは乳母に尋ね、ロミオの正体を知る。二人は敵対する家の子であることを知りながらも、既に互いへの想いを抑えられなくなっていた。
第2幕
第1場 キャピュレット家の庭に隣接する空き地
ロミオとジュリエットの恋が始まったが、二人は敵対する家の子であり、出会うことさえ困難な状況だ。しかし、情熱が二人に力を与え、甘美な時間をもたらすだろうと予言する。
場面はキャピュレット家の庭に隣接する開けた場所に移る。ロミオが現れ、心が恋人のもとにあるため前に進めないと嘆く。彼は庭の壁を乗り越え、中に入っていく。
ベンヴォーリオとマキューシオがロミオを探しに来る。マキューシオはロミオを呼び出そうと、ユーモアを交えた言葉で呼びかける。ロザラインの名前を出し、彼女の美しさを詳しく描写しながらロミオを誘い出そうとする。
ベンヴォーリオはマキューシオの言動がロミオを怒らせるかもしれないと心配するが、マキューシオは気にせず続ける。二人はロミオが木々の間に隠れているのではないかと推測する。マキューシオは愛について冗談を言い、ロミオを探すのをあきらめて帰ろうとする。ベンヴォーリオも同意し、見つかりたくない者を探すのは無駄だと述べ、二人は立ち去る。
第2場 キャピュレット家の庭
ロミオはキャピュレット家の庭に忍び込み、ジュリエットの姿を見つける。彼女の美しさに心を奪われ、月や星々にたとえて賛美する。ジュリエットは窓辺に現れ、ロミオの名前について思いを巡らす。名前の持つ意味を問い、ロミオがモンタギュー家の人間でなければ良いのにと嘆く。
ロミオは姿を現し、二人は互いへの愛を告白する。しかし、敵対する家柄であることが障害となり、二人は苦悩する。それでも愛は深まり、ジュリエットはロミオに結婚の意思を確認する。
夜が明けるにつれ、別れの時が近づく。二人は互いを思う気持ちを伝え合い、なかなか別れられない。最後にジュリエットは翌日の結婚の段取りをロミオに任せ、別れを惜しみながらも互いに「おやすみ」を告げる。ロミオはロレンス修道士のもとへ向かい、結婚の相談をすることを決意する。
第3場 ロレンス修道士の部屋
修道士ロレンスが朝の庭で薬草を摘んでいると、ロミオが訪れる。ロレンスはロミオの早朝の訪問に驚き、何か問題があるのではないかと心配する。ロミオは実は一晩中起きていたことを告白する。
ロレンスはロミオがロザラインと一緒にいたのかと尋ねるが、ロミオはもはやロザラインのことは忘れたと言う。ロミオは敵対する家の娘、キャピュレット家のジュリエットと恋に落ちたことを打ち明ける。二人は愛し合っており、その日のうちに結婚したいと願っている。
この急激な変化にロレンスは驚き、ロミオの移り気さを咎める。しかしロミオは真剣な様子で、ジュリエットへの愛を訴える。ロレンスは最初は躊躇するものの、この結婚が両家の和解につながる可能性を考え、二人を結婚させることに同意する。
第4場 通り
ベンヴォーリオとマキューシオが通りで出会い、ロミオの行方を探している。ロミオが恋に悩んでいることを話題にし、ティバルトからの挑戦状についても触れる。マキューシオはロミオの恋愛事情を揶揄し、ティバルトの剣術の腕前を皮肉たっぷりに描写する。
そこへロミオが登場し、三人で言葉遊びを交わす。その後、ジュリエットの乳母が現れ、ロミオに話があると告げる。マキューシオたちが立ち去った後、乳母はジュリエットからの伝言を伝える。ロミオは修道士ロレンスの僧房で今日の午後に結婚式を挙げる計画を乳母に打ち明ける。
乳母はジュリエットへの愛情を示しつつ、ロミオの誠実さを確認する。最後に二人は、ジュリエットへの伝言や結婚の段取りについて話し合い、それぞれの道を急ぐ。
第5場 キャピュレット家の庭
ジュリエットは、乳母がロミオの返事を持って戻ってくるのを、焦りと期待を胸に待っていた。約束の時間を過ぎても乳母が現れないため、ジュリエットはいらだちを感じながらも、愛の使者である乳母の遅さを嘆く。
ようやく乳母が帰ってきたが、疲れた様子で話をはぐらかす。ジュリエットは急かすが、乳母は体の痛みを訴え、なかなか本題に入らない。ジュリエットの焦りは頂点に達する。
乳母はロミオについて少しずつ情報を明かし始める。ロミオの外見や性格を褒めながらも、結婚については直接言及しない。ジュリエットはいらだちを隠せず、何度も乳母に結婚の話を聞こうとする。
最終的に乳母は、ジュリエットにロレンス修道士の元へ向かうよう伝える。そこでロミオと結婚の準備ができているという。ジュリエットは喜びに満ちた様子で急いで出かけていく。
第6場 ロレンス修道士の部屋
ロレンス修道士の庵にロミオが訪れる。修道士は二人の結婚式を執り行うことに同意するが、この神聖な行為が後々の悲しみを招かぬよう願う。ロミオは、たとえどんな悲しみが来ようとも、ジュリエットと過ごす短い時間がもたらす喜びには及ばないと熱く語る。
修道士は若い二人に警告を与える。激しすぎる喜びは激しい終わりを迎えやすく、火薬のように一瞬で燃え尽きてしまうと諭す。そして、長く続く愛のためには慎重に進むべきだと助言する。
ジュリエットが到着し、三人は挨拶を交わす。ロミオとジュリエットは互いへの深い愛を言葉巧みに表現し、その喜びを分かち合う。二人の感情は高ぶり、言葉では言い表せないほどの幸福感に包まれる。
最後に、修道士は二人を教会へと促す。そこで、神の前で二人を一つに結びつける結婚式を執り行うことになる。
第3幕
第1場 公共の場所
ベンヴォーリオとマキューシオが街中で出会う。ベンヴォーリオは暑さと争いを避けたいと提案するが、マキューシオはベンヴォーリオの性格を茶化す。そこへキャピュレット家のティバルトが現れ、ロミオを探している。
ロミオが登場すると、ティバルトは彼を挑発するが、ロミオは争いを避けようとする。マキューシオがティバルトと剣を交えるが、ロミオが仲裁に入ろうとした隙にマキューシオが傷つく。マキューシオは両家を呪いながら死亡。
怒ったロミオはティバルトと対決し、ティバルトを殺してしまう。エスカラス公が現れ、事情を聞いた後、ロミオを追放する判決を下す。エスカラス公は両家の争いに怒りを表明し、今後の暴力行為には厳罰を与えると宣言する。
第2場 キャピュレット家の部屋
ジュリエットは日が沈むのを待ち遠しく思っている。夜になればロミオと会えるからだ。彼女は夜に呼びかけ、早く来るよう懇願する。ロミオへの愛を熱烈に語り、彼との再会を心待ちにしている。
そこへ乳母が登場し、ロミオから預かった縄梯子を持ってくる。しかし乳母は悲しげな様子で、ロミオが誰かを殺したと告げる。ジュリエットは混乱し、ロミオが自害したのではないかと恐れる。
乳母はティバルトの死を嘆き悲しむ。ジュリエットは最愛の従兄弟と夫の両方を失ったのかと絶望する。しかし乳母の説明で、ロミオがティバルトを殺し、追放されたことが判明する。
ジュリエットは複雑な感情に苛まれる。愛するロミオが従兄弟を殺したことに怒りを覚えつつも、夫への愛情は変わらない。彼女はロミオの追放を最大の不幸だと感じ、深い悲しみに沈む。
最後にジュリエットは乳母に、ロミオのもとへ行き別れの挨拶をするよう頼む。そして自分の指輪をロミオに渡すよう依頼する。
第3場 ロレンス修道士の部屋
ロレンス修道士の僧房に、ロミオが訪れる。彼はエスカラス公の判決を聞きに来たのだ。ロレンスは、ロミオの罰が死刑ではなく、追放刑に減刑されたことを告げる。しかし、ロミオにとって追放は死よりも恐ろしい。彼はヴェローナの外に世界はないと嘆き、ジュリエットから引き離される苦痛を訴える。
ロミオの絶望的な態度にロレンスは苛立ち、彼を諭そうとする。しかし、ロミオは聞く耳を持たない。そこへ乳母が現れ、ジュリエットの様子を伝える。ジュリエットもまた深い悲しみに暮れているという。
ロミオは自責の念に駆られるが、ロレンスは彼を叱咤激励する。ロレンスは、ロミオがジュリエットと最後の別れをする計画を立て、その後マントヴァへ逃げるよう指示する。乳母はジュリエットにロミオが来ることを伝えに帰り、ロミオもまた希望を取り戻す。
第4場 キャピュレット家の部屋
キャピュレット家の屋敷の一室で、キャピュレット夫妻とパリス伯爵が話し合っている。キャピュレットは、最近の不幸な出来事のためジュリエットに話をする時間がなかったと説明する。ティバルトの死を悼み、パリス伯爵の求婚を伝える適切な時期ではないと考えている。
パリス伯爵は悲しみの時期には求愛するのも難しいと理解を示す。キャピュレット夫人は翌日ジュリエットの気持ちを確認すると約束する。キャピュレットはジュリエットが自分の意志に従うだろうと確信し、妻にパリス伯爵の求愛をジュリエットに伝えるよう指示する。
結婚の日取りについて話し合い、木曜日に決定する。キャピュレットは親族のティバルトの死が最近だったことを考慮し、簡素な結婚式を提案する。パリス伯爵は早く結婚したい気持ちを表明し、キャピュレットは妻に準備を進めるよう指示して会話を締めくくる。
第5場 ジュリエットの部屋に続く回廊、庭を見下ろす
ロミオとジュリエットは、夜明け前の別れの時を迎えていた。ジュリエットは、まだ夜が明けていないと主張し、ロミオに留まるよう懇願する。しかし、ロミオは夜明けの訪れを感じ取り、去らなければ命の危険があることを告げる。
二人は互いの愛を確かめ合いながらも、別れの時が迫っていることを認識せざるを得ない。ジュリエットは不安を抑えきれず、再会の見込みについて尋ねる。ロミオは励ましの言葉をかけるが、ジュリエットの不吉な予感は消えない。
そこへ乳母が現れ、ジュリエットの母親が近づいていることを知らせる。慌ただしく別れを告げ、ロミオは去っていく。
その後、キャピュレット夫人がジュリエットの部屋を訪れる。彼女はジュリエットの悲しみをいとこの死に対するものと誤解し、慰めの言葉をかける。しかし、話が進むうちに、キャピュレット夫人はジュリエットにパリス伯爵との結婚を告げる。
ジュリエットはこの突然の知らせに動揺し、結婚を拒否する。そこへキャピュレットも加わり、ジュリエットの反抗的な態度に激怒する。彼は娘に厳しい言葉を浴びせ、従わなければ勘当すると脅す。
両親が去った後、ジュリエットは乳母に助言を求める。しかし、乳母はパリス伯爵との結婚を勧め、ジュリエットを失望させる。ジュリエットは、最後の望みをかけてロレンス修道士のもとへ向かう決意をする。
第4幕
第1場 ロレンス修道士の部屋
ロレンス修道士の僧房に、パリス伯爵が訪れる。パリス伯爵はジュリエットとの結婚を木曜日に控えていた。ロレンスはこの性急な結婚に懸念を示すが、パリス伯爵は悲しみに暮れるジュリエットを慰めるためだと説明する。
ジュリエットが到着し、パリス伯爵との会話で彼女の心境が窺える。パリス伯爵が去った後、ジュリエットはロレンスに助けを求める。彼女はパリス伯爵との結婚を避けるため、自殺さえ厭わないと訴える。
ロレンスは窮地に陥ったジュリエットに計画を提案する。仮死状態に陥る薬を飲み、42時間後に目覚めるというものだ。その間にロミオに連絡を取り、目覚めた彼女をマントヴァへ連れ出す手筈を整える。
ジュリエットは恐れを抱きながらも、ロミオへの愛のためにこの危険な計画を受け入れる。ロレンスは彼女に薬を渡し、詳細な指示を与える。ジュリエットは決意を新たに、ロレンスの僧房を後にする。
第2場 キャピュレット家の大広間
キャピュレット家の館では、パーティーの準備が進められていた。使用人たちが招待客のリストを確認し、料理人の手配をする中、キャピュレット、キャピュレット夫人、乳母が登場する。
キャピュレットは娘ジュリエットがロレンス修道士のもとへ行ったことを知り、良い影響があることを期待する。そこへジュリエットが帰宅し、父への反抗を悔い改めたと告げる。キャピュレットは喜び、パリス伯爵との結婚を翌朝に決めると宣言する。
ジュリエットは、ロレンス修道士の元でパリス伯爵に会ったと巧みに嘘をつく。キャピュレットは娘の態度の変化に満足し、準備を急ぐよう指示を出す。
乳母とジュリエットは衣装の準備のため退場。キャピュレット夫人は準備時間の不足を心配するが、キャピュレットは自ら動いて万事うまくいくと断言。パリス伯爵に会いに行くと告げ、娘が従順になったことに喜びを感じながら退場する。
第3場 ジュリエットの部屋
ジュリエットは自室で、翌日の結婚のための準備を済ませる。彼女は一人で祈りを捧げたいと願い、乳母に退出を求める。そこへ母親が入ってきて手伝いを申し出るが、ジュリエットはすでに準備が整っていると伝え、一人にしてほしいと頼む。
母親が退室した後、ジュリエットは不安に駆られる。彼女はロレンス修道士から受け取った薬を飲むことに恐れを感じ、様々な可能性を想像する。薬が効かなかった場合や、毒薬だった場合、墓所で目覚めた時の恐ろしい状況などを考える。
しかし、ジュリエットは最終的に決意を固める。彼女はロミオの名を呼びながら薬を飲み干し、ベッドに横たわる。この行動により、翌日の結婚を回避し、ロミオとの愛を守ろうとする。
第4場 キャピュレット家の大広間
キャピュレット家の邸宅の広間で、夜遅くまで婚礼の準備が進められている。キャピュレット夫人は乳母に香辛料を取りに行かせる。パイ作りには干しぶどうと菊が必要だと乳母が告げる。
キャピュレットが登場し、準備を急ぐよう指示を出す。時刻は3時を過ぎ、二番鶏が鳴いたところだ。料理の用意を念入りに行うよう命じる。乳母は彼に休むよう勧めるが、キャピュレットは気にせず働き続ける。
キャピュレット夫人は夫の若い頃を茶化すが、キャピュレットは気にしない様子。使用人たちが次々と入ってきて、調理用の道具や薪を運び込む。キャピュレットは彼らに指示を出し、準備を急がせる。
花婿となるパリス伯爵がもうすぐ音楽隊を連れて到着する予定だ。キャピュレットは乳母にジュリエットを起こして支度させるよう命じ、自身はパリス伯爵と話をしに行くと告げる。婚礼の朝がいよいよ始まろうとしている。
第5場 ジュリエットの部屋;ジュリエットがベッドの上に横たわる
ジュリエットの寝室で、乳母が彼女を起こそうとする。しかし、ジュリエットは動かない。乳母は冗談を言いながら呼びかけるが、次第に不安になり、ついにジュリエットの死を発見する。
キャピュレット夫人が部屋に入り、悲痛な叫び声をあげる。キャピュレットも加わり、ジュリエットの冷たくなった体を確認する。彼らは娘の突然の死に狼狽え、悲嘆に暮れる。
結婚式のために到着したロレンス修道士とパリス伯爵は、喜びに満ちた場面を期待していたが、悲劇的な現実に直面する。キャピュレット家の人々は激しい悲しみを表現し、パリス伯爵も婚約者の死に打ちのめされる。
ロレンス修道士は冷静さを保ち、神の意志を受け入れるよう促す。しかし、悲しみに暮れる家族たちを慰めることはできない。キャピュレットは結婚の準備が葬式の準備へと変わったことを嘆く。
場面が変わり、楽師たちが登場する。乳母との短い会話の後、ピーターが現れ、楽師たちと言葉遊びのようなやりとりを交わす。最後に楽師たちは、この状況下で演奏することを拒否し、退場する。
第5幕
第1場 マントヴァ、通り
ロミオはマントヴァの街で、希望に満ちた夢を見る。しかし、その喜びもつかの間、バルサザールが悲報を携えて到着する。ジュリエットの死を知らされたロミオは、運命に抗う決意を固める。
すぐさまヴェローナへ戻る準備を始めるロミオ。その様子に不安を覚えたバルサザールは引き止めようとするが、ロミオは聞く耳を持たない。
ロミオは薬屋を思い出し、その店を探し当てる。貧しい薬屋に毒薬を求めるロミオ。薬屋は法律を理由に渋るが、ロミオの金と言葉に押し切られ、毒薬を売ってしまう。
毒薬を手に入れたロミオは、それを「生命を癒す薬」と呼び、ジュリエットの墓へと向かう決意を固める。金銭の力と貧困がもたらす悲劇を嘆きつつ、ロミオは最後の旅立ちの準備を整える。
第2場 ロレンス修道士の部屋
ロレンス修道士の修道室に、マンチュアからジョン修道士が戻ってくる。ロレンスはロミオへの手紙の返事を期待するが、ジョンは任務を果たせなかったと報告する。
ジョンは、同行者を探していた際に疫病の疑いをかけられ、町の捜索隊に監禁されてしまったと説明する。そのため、マンチュアへ行くことができず、ロミオへの手紙も届けられなかった。
ロレンスは事態の深刻さを悟り、手紙の内容が重要だったことを嘆く。彼はジョンに鉄の棒を持ってくるよう頼み、自ら墓所へ向かう決意をする。
ロレンスは、3時間以内にジュリエットが目覚めることを予想し、ロミオに状況を知らせられなかったことを心配する。彼は再びマンチュアへ手紙を書き、ジュリエットを自分の修道室で保護しようと考える。
第3場 教会の庭;キャピュレット家の墓碑がある
パリス伯爵は深夜、ジュリエットの墓に花を供えに来る。彼は従者に見張りを命じ、一人で墓前に向かう。そこで彼は花を撒き、涙とともに毎晩墓参りをすることを誓う。
そこへロミオが現れる。彼はバルサザールに手紙を父親に届けるよう指示し、自分は墓に入ると告げる。ロミオは棺を開け、ジュリエットの遺体に語りかける。
パリス伯爵はロミオを見つけ、彼を捕らえようとする。二人は剣を交え、パリス伯爵は倒れる。瀕死のパリス伯爵はジュリエットと共に埋葬してほしいと頼み、息絶える。
ロミオはジュリエットの美しさに見とれ、最後の別れを告げる。彼は毒薬を飲み、ジュリエットにキスをして死ぬ。
その直後、ジュリエットが目覚める。ロレンス修道士が駆けつけるが、ジュリエットは共に逃げることを拒否。修道士が去った後、彼女はロミオの唇に残った毒を求めるが、効果がないと知ると短剣で自害する。
衛兵たちが到着し、現場を発見。エスカラス公や両家の人々も集まり、事の真相が明らかになる。エスカラス公は両家の争いを諫め、悲劇の結末を告げる。両家は和解し、金の像を建てることを約束して幕を閉じる。