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青い城|ルーシー・モード・モンゴメリ|※ネタバレ注意※作成途中、2024-10-24更新
第1章:雨の日と29歳の誕生日
1-1:ヴァランシーの現状と内面
ある雨降りの5月の朝、29歳の誕生日を迎えようとしているヴァランシー・スターリングは、早朝に目を覚ました。彼女は未婚で、スターリング一族の中で唯一の不器量な娘だった。ディアウッドの町とスターリング家の人々は、とうに彼女を望みのない老嬢と見なしていた。
ヴァランシーは自分の部屋の醜さを憎んでいた。黄色い床、醜い敷物、色あせた壁紙、ひび割れた天井、古い鏡など、すべてが彼女を苦しめていた。しかし、この部屋で一人泣けることだけは気に入っていた。
現実の生活では抑圧されていたヴァランシーだが、想像の中では自由だった。彼女には二つの家があった。エルム・ストリートの醜い家と、空想の中の青い城だ。青い城では、彼女は美しく、騎士たちに愛される存在だった。
1-2:雨がもたらした変化と新たな計画
この日、雨のおかげでウェリントン伯母の婚約記念ピクニックが中止になり、ヴァランシーはほっとした。ピクニックでは、親戚たちから結婚についてしつこく聞かれるのが常だったからだ。
代わりに、ヴァランシーは図書館に行ってジョン・フォスターの本を借りようと考えた。フォスターの自然に関する本は、彼女に別の世界の一端を見せてくれる唯一の楽しみだった。
また、最近気になっていた心臓の痛みについて、トレント医師に相談しようとも考えていた。しかし、家族に知られずに医者に行くのは大胆な行動だった。スターリング家では、家族会議を開いてジェームズ伯父さんの承認を得てから、いとこのアデレードと結婚したマーシュ医師に診てもらうのが常だったからだ。
1-3:家族の圧力と自立への決意
ヴァランシーは、自分の心臓の問題を家族に知られたくなかった。知られれば大騒ぎになり、親戚中が心配して忠告し、似たような症状で急死した遠い親戚の話を持ち出すだろう。そして、イザベル伯母さんは彼女の痩せこけた様子を指摘し、ウェリントン伯父さんは家系の面目を潰すと怒り、ジョージアナは彼女の寿命を心配し、グラディスいとこは自分の心臓の話をし、オリーブは健康な美しさを誇示するだろう。
そこでヴァランシーは、こっそりトレント医師に診てもらおうと決心した。費用は、父が彼女の誕生日に銀行に預けた200ドルから密かに支払うつもりだった。トレント医師は気難しい老人だったが、心臓病の権威だった。彼はスターリング家の誰からも疎まれていたが、ヴァランシーは家族の不興を買うリスクを取る覚悟を決めたのだった。
第2章:毎日の憂鬱なルーチン
2-1:ヴァランシーの自己認識と日常
ある寒い5月の朝、29歳の誕生日を迎えようとしているヴァランシー・スターリングは目を覚ました。鏡の前に立った彼女は、自分の姿をじっくりと観察した。黒くて薄い髪、小さな顔、平均以下の身長。ヴァランシーは自分の容姿を「特徴のない」と結論づけた。髪型さえ、ウェリントン伯母の指示で決められたままだった。
ヴァランシーの日々は、意味のない小さな仕事で満ちた、退屈で喜びのないものだった。彼女は常に何かを恐れていた。母の不機嫌、親戚たちの批判や意見、貧困など、恐れは彼女を縛り付けていた。
2-2:現実の受容と諦め
窓の外の景色は、ヴァランシーの気分を落ち込ませた。古びた柵、荒れ果てた建物、駅の周りの光景など、すべてが醜く映った。彼女はこの景色が自分の人生そのものだと感じた。
唯一の逃げ場だった想像の中の「青い城」も、この朝には信じられなくなっていた。ヴァランシーは自分が人生から見過ごされる人間の一人だと悟り、その事実を変えることはできないと諦めた。この心境で、彼女は朝食のために階下へ向かった。
第3章:忍耐の朝食
3-1:ヴァランシーの抑圧された日常
雨の朝、ヴァランシー・スターリングは29歳の誕生日を迎えた。この雨でウェリントン伯母の婚約記念ピクニックが中止となり、ヴァランシーは内心ほっとした。朝食は母親とスティックルズ従姉との気まずい時間だった。彼女は「ドス」ではなく「ヴァランシー」と呼んでほしいと頼んだが、母親はそれを一蹴した。
スターリング家では怠惰は許されなかった。ヴァランシーは常に何かしらの仕事をさせられた。唯一の楽しみは、隙を見てジョン・フォスターの「シスル・ハーヴェスト」を密かに読むことだった。この自然の本は彼女に別世界を垣間見せてくれたが、家族はこれも時間の無駄だと考えていた。
ヴァランシーは誰からも必要とされていないと感じていた。友人はおらず、母親の期待にも応えられずにいた。
3-2:図書館への願望
午後、ヴァランシーは図書館に行きたいと申し出た。しかし母親は強く反対した。読書は時間の無駄だと批判し、外出自体も健康上の理由から反対した。
長い議論の末、母親は渋々とヴァランシーの外出を許可した。
第4章:反抗の芽生え
4-1:ヴァランシーの外出と家族との軋轢
ヴァランシーが外出しようとすると、スティックルズ従姉は雨靴を履いているか確認した。母親のフレデリック夫人は、フランネルのペチコートを着用するよう命じた。ヴァランシーは嫌々従ったが、このペチコートを心から憎んでいた。これらの干渉から逃れるように、彼女は家を出た。
通りの角には、新婚夫婦のための素敵な新居があった。ヴァランシーは自分の家を持つことを切望していた。彼女は家具や食器など、新居の細部まで羨ましく思った。
4-2:ディアウッドの社会
ヴァランシーは古びた雨コートと帽子をかぶった地味な姿で歩いていた。ディアウッドでは自動車はまだ珍しく、主に上流階級の人々が所有していた。町の社会は階級で分かれており、スターリング家は旧家族層に属していた。
ヴァランシーは自動車に乗ったことがなく、むしろ馬車での外出を好んでいた。しかし、馬車に乗れるのも親戚が「機会」をくれる時だけだった。
第5章:誕生日の屈辱
5-1:ヴァランシーの内なる変化
ヴァランシー・スターリングは29歳の誕生日を迎えた。ベンジャミンおじの店で未婚状態を揶揄され、彼女は傷ついた。長年「恋人なんて欲しくない」と言い続けてきたが、この日初めて正直に自分の気持ちと向き合う。結婚したい、家庭を持ちたい、子供が欲しいと強く願っていることを認めた。
5-2:新たな決断
ジョン・フォスターの本「翼の魔法」の中の一節「恐怖は原罪である」という言葉にヴァランシーは強く心を動かされた。この言葉に触発され、恐怖に打ち勝つ決意をする。最近気になっていた心臓の痛みについて、家族に知られずにトレント医師に相談しようと考えた。これは彼女にとって「大胆な行動」だった。
トレント医師はスターリング家の誰からも疎まれていたが、心臓病の権威だった。ヴァランシーは、父が彼女の誕生日に預けた200ドルから密かに診察費用を支払う計画を立てた。家族の不興を買うリスクを取る覚悟を決めた。
第6章:医師の診断
6-1:中断された診察
ヴァランシーはトレント医師の診察を受けることになった。医師は慎重に症状を診察し、何か重要なことを告げようとした瞬間、電話が鳴った。息子の事故の知らせを受けた医師は診察室を飛び出していった。取り残されたヴァランシーは、自分の決意も虚しく、患者としても重要視されないことに深い挫折を感じながら診療所を後にした。
6-2:小径での二つの出会い
帰り道、ヴァランシーは恋人たちの小径を通った。そこで出会った若いカップルたちの幸せそうな姿に、批判するどころか心からの羨望を覚えた。小径の出口では評判の悪いバーニー・スネイスと遭遇する。様々な悪評が囁かれる彼だったが、その笑顔には不思議な魅力があった。気ままに生きる彼の姿を見て、ヴァランシーは抑圧のない自由な生き方を羨ましく思った。
6-3:変化なき一日の終わり
雨の降る家での夜、ヴァランシーは『翼の魔法』を読みたかったが、家族の靴下の繕い物を命じられた。母とスティックルズ従姉の会話を聞きながら、血縁者に老嬢が少ないという皮肉な話題に耳を傾けた。こうして、ヴァランシーの運命の日は、始まりと同じように涙とともに終わった。
第7章:枯れたバラの怒り
7-1:薔薇の木との対峙
庭のゲート脇に咲く薔薇の木は、5年前にジョージアナからヴァランシーに贈られたものだった。彼女は薔薇を愛していたが、この木は一度も花を咲かせることはなかった。誕生日から2日後、ヴァランシーは突然の衝動に駆られ、この薔薇の木を切り始めた。母親は娘の行動に激怒し、ジョージアナへの配慮を欠いていると叱責した。これにより、母親は数日間ヴァランシーと口を利かなくなった。
7-2:郵便局での出来事
スティックルズ従姉に頼まれ、ヴァランシーは街へ薬を買いに出かけた。郵便局では普段手紙を受け取ることのない彼女が、思いがけずモントリオールからの手紙を受け取る。それはトレント医師からのものだった。帰り道、ベンジャミンおじとのやり取りの後、彼女は手紙を誰にも見せずに家に持ち帰った。
7-3:衝撃の診断結果
自室で開封した手紙には、衝撃的な診断結果が記されていた。ヴァランシーは致命的な心臓病を患っており、生きられる時間は最長で1年だという。安静を保ち、興奮を避け、急な動きを控えるようにとの指示があった。窓の外では春の午後が輝いていたが、彼女にとってはもはや現実味を持たなかった。
7-4:家族との夕食
夕食時、ヴァランシーは機械的に食卓につき、茶を一杯飲むのがやっとだった。家族は彼女の食欲不振を、母親との不和によるものと解釈した。スティックルズ従姉が頭痛を心配し、薬を勧めようとしたが、ヴァランシーは珍しく反抗的な態度を示し、一人で休ませてほしいと願い出た。
第8章:死の自由
8-1:死の宣告を受けて
ヴァランシーは一睡もできずにいた。今まで人生のあらゆることを恐れてきた自分が、死を恐れていないことに気づく。貧困や老後、生涯独身でいることへの不安。家族との平穏な関係を保つための妥協。それらすべての恐れから解放された気分だった。
ただし、家族に病気のことを伝えた時の大騒ぎだけは耐えられなかった。ベンジャミンおじが専門医への紹介を買って出て、マーシュ医師に相談せずトレント医師に診てもらったことで、家族中から非難されることは目に見えていた。そうなれば、一人で眠ることすら許されなくなる。
8-2:誰にも必要とされない存在
誰からも本当の意味で愛されたことがない。母親でさえ、男の子でなかったことや、美しい娘でなかったことを残念がっていた。これまでの人生で、たった一時間たりとも完全に幸せだったことがないのだと気づく。
敵すら作れないほど影の薄い存在で、誰かと喧嘩をしたことすらなかった。学校時代、皆でオリーブの塵山を作るために自分の塵山を奪われた時も、ただ泣くことしかできなかった。死んでも誰も本当の意味で悲しまないだろう。地元新聞の死亡記事の「深い悲しみに包まれた」という言葉も、嘘になるに違いない。
8-3:屈辱の記憶と変化の決意
六歳の時の巨大な赤い月への恐怖。十五歳で避けてしまった最初で最後のキス。グランドマ・スターリングのウェディングドレスの美しいボタンを、オリーブのために手放さなければならなかった屈辱。従姉ベティの結婚式で無視されたこと。どれもが彼女の存在の薄さを際立たせる出来事だった。
夜明け前の3時、ヴァランシーは決意を固めた。これまでの人生は他人に合わせすぎていた。これからは自分の望むように生きよう。母が何週間も拗ねても気にしない。希望は奴隷だが、絶望は自由な人間なのだから。そして窓を開け、古い匂い袋を隣家に投げ捨てた。死んだものの香りにうんざりしたのだと。
第9章:家族の困惑と変化
9-1:親族会での異変の予兆
ハーバートおじとアルバータおばの銀婚式の出来事は、スターリング家の中で「ヴァランシーの様子がおかしくなり始めた時」として密やかに言及されるようになった。ベンジャミンおじは「頭がおかしい」と言い切って物議を醸したが、これは銀婚式での彼女の振る舞いがあまりにも常軌を逸していたためだった。
9-2:日常生活での変化の兆し
家族は銀婚式以前から、ヴァランシーの異変に気付いていた。彼女は母親から無視されていることを気にも留めず、薬も拒否し、「ドス」というあだ名も拒絶。部屋のベッドの位置を変え、日曜日に本を読むなど、次々と異常な行動を見せ始めた。特に衝撃的だったのは、英国国教会への礼拝を拒否し、長老派教会へ行くと宣言したことだった。母親の涙にも一切動じなかった。
9-3:銀婚式当日の緊張
銀婚式に向けて、家族はヴァランシーを連れて行くべきか迷った。幸いにも、彼女の異変は外部には気付かれていなかった。ヴァランシー自身は、この機会に自分の独立宣言をする絶好の場として捉えていた。茶色のシルクのドレスを着用するよう言われたが、髪型だけは独自のアレンジを施した。道中、酔っぱらいのエイベルに対して、家族の制止を無視して気さくに挨拶するなど、すでに反抗的な態度を見せ始めていた。
第10章:銀婚式での反逆
10-1:家族会食での様子と新たな視点
ウェリントン伯母は、食前の祈りは少なくとも3分以上、うめくような詠唱調で行うべきだと考えていた。そのため、ハーバートおじの短い祈りに不満を示し、抗議の意を込めて長く頭を下げていた。これまでの家族会食で影の薄い存在だったヴァランシーは、この日、大きく変わっていた。周囲への恐れから解放された彼女は、初めて家族を冷静に観察する余裕を持っていた。
10-2:親族たちの特徴と欠点
ヴァランシーは畏怖の念を抱いていた親族たちを、新たな視点で見つめ直していた。ミルドレッド伯母は自身の賢さを誇り、グラディス従姉は都合の悪い時だけ神経痛を訴えた。イザベル伯母は一族の批評家として君臨し、サラ従姉はピクルスのレシピ以外に取り柄がなかった。ジョージアナ従姉は葬式でしか生き生きとせず、ジェームズおじは近代主義への批判に熱中していた。
10-3:理想像オリーブとの対比
家族の中で完璧な存在とされてきたオリーブは、輝くような美しさを持っていた。金褐色の髪、澄んだ青い目、雪のような肌を持つ彼女は、多くの男性を魅了してきた。19歳でのウィル・デズモンドとの婚約、その後のドナルド・ジャクソンとの関係を経て、現在は土木技師のセシル・プライスと結婚を約束している。オリーブはヴァランシーに恋愛の秘密を打ち明けていたが、それは彼女が自分の話で退屈させる心配のない相手だったからだ。