「民謡の革命」を描くロードムービー 『ブリング・ミンヨー・バック』 森脇由二監督
山形国際ドキュメンタリー映画祭2023の開催期間中に、山形駅前の広場で野外上映会が開かれました。森脇由二監督の『ブリング・ミンヨー・バック』。民謡を新しい解釈で演奏するラテン音楽のバンドを主人公にしたドキュメンタリー。上映直後の感想を、すみれとエツオが語り合います。
エツオ:僕らが山形に行った日(10月6日)の夜に見たのが『ブリング・ミンヨー・バック』。「民謡」をテーマにしたドキュメンタリーだった。
すみれ:これは山形ドキュメンタリー映画祭の主催ではなく、経産省が中心になって上映した映画だったね。民謡を演奏するバンドの話なんだけど、「民謡クレスタ」だっけ?
エツオ:「民謡クルセイダーズ」だね。
すみれ:そのバンドのドキュメンタリーで、ワールドツアーの場面があったりして、ロードムービーのような要素がある映画だった。実際に音楽を演奏しているところの映像は、単に映しているだけでなく、ミュージックビデオのように編集されていて、見やすくて面白いと思った。
エツオ:若い人が多く見に来ていたね。
すみれ;民謡やバンドの起源について、映画を見ることで、ある程度理解できて良かった。ドキュメンタリー的な面としては、民謡クルセイダーズがコロンビアに行くところが面白かった。彼らも初めてコロンビアに行くときはかなり危険な場所だと思っていたけど、最終的には音楽のセッションが盛り上がって楽しかったという話だった。ボーカルの民謡の声が素晴らしかったし、映画が普通の映画館で上映されているのも納得。個人的な評価は、10点満点で7点くらいかな。
エツオ:すごく面白い映画だったね。
すみれ:民謡のことをあまり知らない人への導入としては、いい映画だよね。こんな民謡の流れがあるんだということを体系的に見せてくれて。たとえば「民謡は死んだのか」というテーマが出たあとにその話が続いて、その次に「民謡ができた話」を紹介したり。わかりやすかった。特に、民謡に対してあまり思い入れがない人にとっては、こういう手法が必要なんだと思う。エツオの点数は?
エツオ:僕は、8とか、8.5とか、それぐらいあげてもいいかなと。
すみれ:ドキュメンタリー映画としては7かなと思ったんだけど、映画としての面白さはダントツに面白い。これは普通に人に勧められるというか、下北沢の映画館で興業にかかりそう。あと、民謡クルセイダーズというバンドが、高円寺とかのライブハウスに出ているみたいなので、一回見に行きたいなという気持ちはすごい駆り立てられた。バンドのプロモーションとしてもいい映画かなと思いました。
エツオ:この映画はとにかくわかりやすくて、字幕も入ってたし、 説明があって、非常に面白い映画だった。あと、以前、ネットの記事で見た「民謡DJ」というユニットがあるんだけど、その2人組も映画に出てきて、彼らが動画で 喋ってる様子が見れたので、それも良かった。
すみれ:そうね。彼らはブックオフとかのジャンクレコードを漁って、安来節とか、 昔の民謡のレコードを探していたね。やっぱり民謡は面白いと言ってて、 面白かったです。
エツオ:まあ、あとは、寒かったですね。
すみれ:そうね(笑) 外で見たから。
エツオ:野外上映で、それ自体は面白い試みで、楽しみにしていましたが、 たまたま非常に外が寒くて、風もある日だったので、映画を見る状況としてはちょっとつらかったね。
すみれ:それはそうだったね。運営の人が毛布とかカイロを配っていたからね。
エツオ:民謡クルセイダーズは、民謡を新しく捉え直していて、あれが海外で受けるっていうのもすごいわかる。最初から海外を意識してやってるんだろうなと思った。その戦略性も面白いなと。
すみれ:そうね。
エツオ:ただ、山形国際ドキュメンタリー映画祭で、この映画が評価されるかといえば、ちょっと違うと思う。もし、これがコンペティション部門に入るかといえば、たぶん入らない。わかりやすすぎて、テレビドキュメンタリーに近いから。
すみれ:たしかに、ちょっと難しいだろうね。
エツオ:でも、面白くて、一般受けする映画だった。
すみれ:見た後の爽快感はすごくあったしね。海外を最初から意識して、日本で受けることを狙うよりも、海外へ飛び越していっちゃうっていうのは、「新しい学校のリーダーズ」もそうだけど、 そういう流れがあるんだろうね。日本で評価されてから海外に行くなんて、チンタラやってらんないっていう感じがした。
エツオ:たしかにね。
すみれ:あと、私の場合は、映画に出てくる民謡が意外と知っている曲だったりしたんだけど、年代的にもっと下の人だと 全く聞いたことがない曲ばかりという感じかもしれない。初めて聞く曲となると、新鮮なのかもしれないね。
エツオ:そうだね。民謡の入り口となる映画だったよね。
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