著者×デザイナー×編集者「3年の星占い」(石井ゆかり著) 制作よもやま話②
人気シリーズ3作目となる「3年の星占い2021-2023」。発売すぐに増刷も決まり、好評発売中です!(2021.1.28現在累計28万部超)
このたび、「制作よもやま話」として、著者の石井ゆかりさん、デザイナーの石松あやさん(しまりすデザインセンター)、編集者の飛田による鼎談を企画しました。制作の裏話をどうぞお楽しみください!
(鼎談は2020年12月末、ZOOMにて行われたものです)
コロナ禍での執筆
飛田(編集者)
かなり前から「次の『3年の星占い』は、白い本にしたい」と思っていました。白い紙なんだけど、種類や手触りが12冊全部違うというアイディア。そうしたら、石井さんが、「平安時代の衣の重ね方にそういうのがあったと思います」と、色は似てても風合の違いで重ねていく、というおしゃれのスタイルがあったという話を教えてくださったので、「超素敵!素材違いで白い紙でいこう!」と決めていました。
年明けに「牡羊座」の原稿をいただいたときに、山を越えるとか、野原に出るとか、門の前に立つというところに、線画でちょっと青い万年筆で描いたような絵を本文中に足していったらいいな、みたいなと思っていました。で、カバーはシンプルで……と。
そのうち、2月が終わり、3月になり、コロナが大変なことになって、もう本当にちょっと経験したことのないムードに包まれたなかで、他社さんの執筆もあって、一度「3年」のほうはストップ。
石井(著者)
全然筆が進まなかったですね。書けなかった。
飛田
未来見えなかったですよね、本当に。
石井
手が完全に止まって、ただ時間が流れていくという。あれは本当にきつかったです(笑)。
飛田
きつかったと思います。あんなにも見通しが立たないっていうことを経験って……今もそうなのかもしれないけど、経験したことはなかった気がする。今日の次に明日が来る感じがしないというか。普通に生活していても。
石井
デジタルコンテンツの毎日の占いにも手を入れました。「出かける」とか「旅に出る」とかいった記述を全部書き換えていったんです。
飛田
それ、すでに書いてたものをですよね?
石井
そうそう。そういう作業がありました。あとは、ファッション誌が2カ月まとめの号になったり。すでに書いた原稿を、次号は2カ月まとめ号になりますと言われて、それに合うように書き直したりとか。
飛田
大変でしたよね。
6月末くらいから、「3年」の原稿がぽつりぽつりと入りだして。でもなんとなくまだ現実の中にいないような感じで受け取っていて……。
8月になって、いよいよ発売の準備とか営業とかをやらなくちゃ!って、カバーを進行しようと思って、白い本じゃないなと、明るい感じにしようと思って、それで石松さんに伝えたんですよね。
石松(デザイナー)
飛田さんが、なんでしたっけ。天から啓示が(笑)。
飛田
天から啓示があったんです(笑)。階段をトンと降りた瞬間、「やばい、白い本は違う、違う!」って。あの一歩はなんだったんだっていうくらい覚えています。すごくにぎやかな本にしなくちゃと強く感じたのでした。すぐに本田亮さんのイラストのイメージが浮かびました。
本田さんと石松さんの3人で打ち合わせしたのは、いつごろでしたっけ?
石松
夏?
飛田
夏でしたよね。久しぶりに街に出たという感じだった。もう記憶がないですよね、夏から。
石松
ないです(笑)。今年はなんか本当に記憶がない。
飛田
ないですよね。どんな感じだったんだろう。「楽しい街」にしようってなったんですよね、あのときに。
石松
そうですね。どんな話しましたっけ。でも、まだあんまり本田さんがピンときてなくて、占いの本といえば、その星座のモチーフ?みたいなイメージ。
飛田
双子座で双子を描く、みたいな。
石松
天秤を描くとか、魚座だったら魚を描くとか、そんなんですか?みたいな感じでいらっしゃったので、それは違うんですという話をして(笑)。
飛田
そのあと、1回目のラフまではなんとなくうまく進まず。手元にあった原稿をお送りしてしまったので、どうしてもプロローグの物語のイメージが強くなってしまったんだと思います。双子座まで(3冊分のみ)手元にあって。
でも、プロローグの原稿を全星座分待って描いていたら、もう間に合わない!という状況でした(笑)
それでZOOM会議を1回やって、各物語の風景のキーワードをお伝えしたら、ばーっとうまくいきだした。あとはスムーズでしたよね。素敵な「楽しい街」の世界を描いてもらいました。
石松
そうですね。
イラスト大ラフ。ラフの段階からあたたかい世界観。
帯に箔押し⁉ タイトルが表1にない⁉
飛田
石松さんはデザインしてみてどうでした?
石松
飛田さんに最初に天から啓示が降ってきて、全面イラストのデザインでいこうとなって。そうとなったらやるしかないですから。なんとかなるんじゃないかなと思って、「わかりました」って言って。
言ったのはいいんですけど、飛田さんが見本に持ってきてくれた本はタイトルがそんなに長くない本だった。表紙の全面イラストの塗りの面積が広いところにちょこっとタイトルとか著者名が入っててうまいこと収まってたんですけど、いざ本田さんのイラストを入れてつくってみたら……。そもそも表紙に入れる文字要素が多いじゃないですか。
飛田
帯コピーも入れなきゃいけないし。
石松
無理だなって思って(笑)。
飛田
石井さんにはお見せしてなかったんですけど……、これ見えるかな。(と画像を見せる)
手書きとか、フォントとかいろいろあるのわかります? ご依頼したときは、帯に地色が敷いてあって、タイトルとコピーがのるデザインをイメージしてたんですけど、そうすると、石松さんとしては手書きじゃないとはまらなかったそうなんです。
石松
やってみたらそうなんです。
飛田
この画像のラフの時点では、まだ帯に箔のマークありませんよね? 書店に持っていってプリントを置いて棚で見てみると、占いの本だということが、もう少し伝わらないと不親切だと感じました。何かアイコンが欲しいなと思ったんです。
石井
そのために箔を押したってことですか?
飛田
いえ、そのために、私は、星座のマークを入れたいなと思ったんです。占いっぽいアイコンがあると人ってやっぱり意識の中で、「あ、占いの本かな」「ちょっと星っぽいな」と思ってもらえるかなと思って。
「箔にしないとはまりません」と箔の案を出してきたのは石松さん(笑)
それがとてもすてきで。樋口(すみれ書房社長)が原価計算をして、制作費の調整をしてくれて実現しました。でも、箔があるのとないのと全然違いましたね。
石井
別の出版社の編集者さんがこれ見て、「オビに箔って! 本体のタイトルちっさ!」って驚いてました(笑)。絶対うちではできません、上の人に怒られるって。
飛田
山羊座に至っては見えてないですからね、タイトル。オビの下にあるんですよね。
石井
なるほどね。入るところがなかったんですね。
(次回に続く)
「3年の星占い2021-2023」の詳しい内容はこちら
★プロフィール★
石井ゆかり(著者)
ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆。
12星座別に書かれた「12星座シリーズ」(WAVE出版)は120万部を超えるベストセラーになった。『月で読む あしたの星占い』(すみれ書房)、『12星座』『星をさがす』(WAVE出版)、『禅語』『青い鳥の本』(パイインターナショナル)、『新装版 月のとびら』(CCCメディアハウス)、『星ダイアリー』(幻冬舎コミックス)ほか著書多数。
LINE公式ブログで毎日の占いを無料配信しているほか、インスタグラム(@ishiiyukari_inst)にて「お誕生日のプチ占い」を不定期掲載。
Webサイト「筋トレ」http://st.sakura.ne.jp/~iyukari/
石松あや(デザイナー)
グラフィックデザイナー。書籍のデザインを中心に、ポスター、ロゴマークなどグラフィックデザイン全般を手がける。ときどきイラスト。
グラフ株式会社、株式会社xenonを経て、2008年しまりすデザインセンター設立。
くいしんぼうの活版印刷愛好家でもある。乙女座。http://shimarisu-d.com/
飛田淳子(編集者)
実用書編集歴22年。出版社勤務を経て2018年12月にすみれ書房を創業。主な担当書籍に「12星座シリーズ」(石井ゆかり氏)、「男の子の育て方」「女の子の育て方」(諸富祥彦氏)、「家を買いたくなったら」(長谷川高氏)、「正しい家計管理」(林總氏)、「苔とあるく」(蟲文庫・田中美穂氏)、「自営業の老後」(上田惣子氏)など。お菓子が好きな二児の母。射手座。https://sumire-shobo.com/