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妻の退院の時に、女装した状態で迎えに行くハメになった
先週末に妻が緊急入院した。
大事には至らず三日で退院できたのですが、退院する妻を病院に迎えに行く時、私はやらかしてしまった。
退院の日、LINEに通知が届いた。その画面には、妻からの短いメッセージが。「退院の許可が下りて会計するから、今から病院に迎えに来れる?」と書かれていた。
「了、今から家を出ます」と返事を返した。
今から家を出れば、病院に着くころには、ちょうど会計は終わっているはずだ。
車を走らせ、病院までの道をたどり、病院玄関側の停車場に着く。LINEを開いて妻に到着を伝えようとすると、新しいメッセージが表示された。「家族が病室まで迎えに来てください。と言われたので、病室まで来てください」と。
「ゲッ! 何だと!! マジですか!?」
きっと呻くような声がドライブレコーダーの車内会話として残っているはずだ。
なぜ、焦ったかということ、いつもは男性よりの恰好しているのですが、今日は車から降りることはないだろう思い、わりと女性よりの服装をしてきたのだ。
カップ付のインナーに、ボーダー柄のシャツ。10代後半から20代前半が似合いそうなレディースのパーカー。そして、じっと立っていたらスカートに見えてしまうガウチョパンツ。身に着けているもので、女性物でないのは靴下と靴くらいだ。
今更帰って着替える時間もない。メンズのガウチョパンツも世には沢山あるし、コッテコテの女装ではないから以外と大丈夫かも…、そう自分に言い聞かせながら停車場から、二階建ての立体駐車場へ車を移動させ駐めた。
車を降り、立体駐車場から渡り廊下を通って病院本館の建物に移動する。エレベーターで妻が入院していた5階の病室に向かった。
病室に向かう道のり、すれ違う人の視線をたどっていたが、誰もこちらの格好など気にしていない。少し安心しながら、病棟のナースセンターの前をよ横切って、妻が待っている4人部屋の病室に入った。
「〇〇〇(妻の名前)迎えにきたよ」と言いながら、ベットのカーテンを開ける。
「お、ありがという」
私の到着をベッドの上で座って待っていた妻が私を見た。
「……」
私を見る妻の視線が上から下へ、下から上へと2,3回往復した。
妻は何が言いかけたが結局何も言わず、ナースコールのボタンを押して、家族が迎えに来たことを伝えた。
(これはアウトかー)
病院の廊下を、入院中に着ていた服とか化粧水などが入ったキャリーケースをカラガラと引いて、病院本館の一階にある会計窓口に向かう。
「これ、メンズ?」
キャリーケースを引く私の隣を歩いていた妻が言う。
「いや、メンズじゃないよ」と私は返した。
「ふーん」
会話はここで切れた。
(妻に離れて歩かれていないだけ、まだましか?)
◇ ◇ ◇
それから二日後、こんどは私が体調を崩した。
病院を受診し血液検査の結果、入院を勧められるくらい悪い結果となっていた。
病名は妻と同じ。
そして医師は入院先の病院として、妻が入院していた病院を勧めてきた。
(まいったな)
正直な気持ちでした。
検査結果の数値は悪いけど、体はそんなにしんどくない。
医師に毎日点滴を打ちに病院に通うので入院は避けたいと相談したら、なんとか了解してもらえた。
もし、これが緊急入院となっていたら…。
緊急入院となると、妻が私の入院の準備をすることになる。
着替えの用意とか色々と。
タンスの引き出しを開けて仰天することだろう。
今後、緊急入院するとあるかもしれない。
その時のために、レディースの衣類が入っているタンスの引き出しに、サインした離婚届けを置いておいてもいいかもしれない。