僕と私の内緒の世界 4 (体)
スミレは服を脱ぐことが嫌い。
着替えることはもちろん、お風呂に入るのも嫌がる。
お風呂に入るのが嫌いなわけではない。
裸になるのが嫌いなのです。
当時の私にはスミレの気持や感情がよく分からなかった。
ある日、悪ふざけが過ぎてスミレを大泣きさせたことがあった。
「はい、スミレ! 女の子だよー」
私はチンコを股に挟んで鏡の前に立った。
泣いた。
スミレは大泣きしたのだ。
ボロボロと涙が自分を頬を流れる。
私は泣いていない。泣いているのはスミレ。
だから涙が止まらないし、止めることができない。
スミレ感情がストレートに、まるで洪水のように私の頭に流れ込む。
そして押し流してしまった。
(この体が死ぬほど嫌い、男の私のことも嫌い、すべてが嫌い)
その時、本当のスミレの苦しみを知った。
「ごめん、スミレ」
「僕(体)のこと嫌い?」
気付いていたけど、二人ともこれまで口にはしなかった。
思春期を迎え、体が大人へと変わっていく自分達の体の事を。
スミレからの返事はなかったけど、心の震えのような感情はまだ流れ続けていた。
(何も聞かないで)
その日はお風呂に入るのは止め、服だけ着替えた。
いつもはTシャツ、短パンなのですが、その日は寝巻にした。
寝巻姿は見た目を女の子っぽくした。
だからスミレは寝巻姿が好きなのです。
「寝よう・・・」
スミレは私の声は聞こえてはいる。
でも返事はしてくれない。
三畳の小さな子供部屋。私達はいつもその部屋で寝ている。
今日もいつものように、子供部屋で寝た。布団の中で、またスミレの涙が流れる。
そして、そのうち夢の中に落ちていった。
その日の夜、これから生きていく人生の中で、常に影を落とす最悪な出来事が降りかかった。