秋の奇跡
いつしか蝉の声も聞こえなくなって、暖かい風が向きを変え始めた頃。あの長い夏休みも、少しずつ思い出に変わり始めた。
学校が始まってしばらく経っても、ボクは心はまだ失意の底。
今日も朝から机の上に俯す。
授業が始まる前の朝の会、そろそろ先生が来る時間。そう思うと同時にガラガラと教室のドアが開いた。
オレは机に頬を付けたまま、教室の窓から見えるサトウキビ畑を見ていた。
「転校生を紹介します」
先生の声が教室に響いた。
二学期の途中から転校生?
机にへばり付いていた頬をはがし、顔を上げて正面を見た。
…
…
…
あ、か、り ちゃん?
なんで?
あの長い夏休みの記憶が鮮明によみがえる。
「今日か一緒に勉強することになった、山原あかりです。
よろしくお願いします」
「山原さん、向こうの空いている席に座って」
オレの前の席だ。
ドキドキと一緒に、こっちに近づいてくるあかりちゃん。
席の前に立つと、あかりちゃんはあの時の同じ笑顔で「ヤッホー」
って言ってオレに手を上げた。
オレも「ヤッホー」って返した。
オレの席の周に座っている男子も女子も、なんで?知っている人?って顔をしてオレを見る。
オレの前の席に座っているあかりちゃんの後ろ姿を見て、さっきまで失意の底にいた僕は、得意の絶頂へと昇っていった。
このお話は7割実話で3割盛っています。