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”火葬場” ~世界一周旅日記~ ネパール編 【第五章:第3話】雲と地平線の間

5/22(火葬場)

パシュパティナートというヒンドゥー教のお寺に言ってきた。


寺に入ると、すぐ1人の男が、
声をかけてきた。
ガイドをしてくれるらしい。


少し歩くとすぐ右手に火葬場があった。
2体の遺体を焼いているところだった。

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遺体を焼く時に使う薪の値段表(安いものから高いものまでピンキリ)


火葬場とは言っても、建物の中で焼くわけではない。

外で、
正方形の岩の上で、
遺体にござのようなものを被せて焼いている。
パチパチという音が鳴る。
白い煙が、右へ左へと風に揺られながら、上空に昇っていく。
焼かれていく様子をたくさんのネパール人達が見守っている。
シーンとしている。


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遺体を焼いている煙


ガイドが説明してくれる。
「ここは死んだ人を焼く所です。
3時間くらいで焼き終わります。
焼いたあとに残る灰は川に流します。
遺体の多い時は、真夜になっても焼いています。」

「皆泣いていないですが悲しくはないのですか?」
僕は疑問をぶつけてみた。

「大丈夫です。ヒンズー教では、死んだら生まれ変わると信じていますから。
でも、外見には出さないですが、心では、やはり泣いています。」


火葬場の近くには、サドゥーやババ達がいた。

サドゥーというのは修行僧のことで、
お風呂に入らないので、
髪はナチュラルドレッド(自然にドレッドヘアになった髪形)になり、
上半身裸で、腰に赤い布を巻いている。
そして、体全体に白い粉を塗っている。
ババとはサドゥーが修行をつんで上の位になった人である。


「あのサドゥーは髪の長さが2M以上あります。」
ヘビがとぐろを巻いたようにぐるぐるに巻いた髪を頭の上にのせている
サドゥーを指差して男が言った。


「あのババは8、90kgの岩を紐で縛り、その紐の片方を
自分の男性器にしばって持ち上げる事ができます。
お金を払えば見せてくれるでしょう。」


ガイドと一緒に寺の中を歩いていく。
「あの建物の中には、死期が近づいて、死を待っている人達が住んでいます。」
とガイドが白いたてものを指差した。


こんどは2Mほどの細長い岩を指差し、
「死期が本当に間近になると、
そこの岩に連れて行き、体を横たわらせて、ミルクを飲ませます。」


さらにガイドの説明は続く。
「ここではネパールの悪い人が生け贄にされていた祭壇です。
でも、今では生け贄は、豚や山羊が生け贄にされます。」


生け贄の祭壇の屋根にはたくさんの男と女の性行為をあらわした彫刻が
掘られている。

「この彫刻はカーマスートラと言って、男と女の性行為を表現しています。
雷がここに落ちようとした時、雷がはずかしくて他のところに落ちるように
このような彫刻を屋根に描きます。」

歩きながらガイドは話す。


「ヒンズーにはブラフマー、シバ、ビシュヌという三人の有名な神様がいます。
ブラフマーは想像の神で、シバは破壊の神でビシュヌは慈愛の神です。」


「お寺のお祭りの時は、皆ここに来て、マリファナを吸います。
インドからもたくさんのババやサドゥー達がお祭りに参加するために訪れます。」


シバリンガを指差して
「これはシバ神の男性器をあらわしている彫刻です。
その下にあるのが、ヨニと言って、
シバの奥さんパールバティ神の女性器をあらわしている彫刻です。

そのまわりを取り囲むヘビの彫刻が、ここを守っています。
妊娠しない女の人もここへ毎日お参りにくれば子どもを授かります。」


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シバリンガとヨニ


これらのガイドの言葉を客観的に見ると、
ちゃんとした寺院なのか?
と思うが、
実際、その場にいると、
神聖な気持ちでそれを眺めることができる。


奥の方に行くと、
5M四方くらいの、小さな建物があった。


「ここがミルクババの住処です。
20年間ミルクだけを飲んで生活しています。」

ガイドが言った。


ミルクババをようやく発見することができた。

ミルクババの住処のまわりに転がっている大きな岩には、
シバ神、ビシュヌ神、ガネーシャ神、カーリー神、ハヌマーン神などの絵が描かれている。


その絵の中にミルクババの姿も描かれている。

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ミルクババの肖像画


"ミルクババ"
どうやらここでは生き神様のような扱いになっているようだ。

「ミルクババは、現在インドに行っています。」

「いつミルクババは帰ってきますか?」

「それは、ミルクババにしか分かりません。」

再度入り口近くの死体焼場に戻ってくると1台の車が止まっていた。


「あれば霊柩車です。あの木の箱を見てください。
ネパールは貧乏ですから、たくさんの人が海外で働いています。
海外で亡くなった人が、木の箱に入れられて、
さっき飛行機で運ばれてきたのです。」

たくさんの人が木の箱をまわりを取り巻いていた。


突然、急に雨が降ってきた。

周りを見渡しても雨宿りできるようなところがない。
近くに、ボラゲリナガババというババの住処がある。
ボラゲリナガババは寝ていたので、
勝手にその住処におじゃました。


ババの住処にはババの他にその弟子として3人のサドゥーがいた。
ババは寝ていて、3人のサドゥーはテレビを見ていた。
住処に入ると、
1人のサドゥーがそこに座りなさい。
と言ってくれた。


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サドゥー達


しばらくすると、ババが起きた。
名前を聞かれたので、スミと答えた。
ババは、
「短い名前だな。」
と言った。


「日本人は来ますか?」
と聞くと、

「ああ、たくさん来る。」
と答えた。


ババは、
僕が座っているワラでできた1M四方くらいの敷物を指差して、
「それは死体を焼く前に、死体にかぶせていた敷物だ」
と言った。


冗談なのか、本当なのか分からなかったが、
死が生活に密着している場所なので、
死にまつわるものを、たくさん見た後だったので、
僕は、
「フーン。」
と相槌を打っただけで、
たいして驚きはしなかった。


しばらくすると、雨があがった。


ババとサドゥーにお礼を言い、
外に出て、
目の前の火葬場に目をやった。


泣いていた

大声で泣いていた

遺体に女の子がしがみついていた

たくさんの人達が女の子を遺体から離そうとしていた


寺からゲストハウスまでの帰り道、
1人の物乞いが、寄ってきた。

僕は10ルピーをあげた。

物乞いは手を合わせて、僕を拝んだ。

気分が悪くなった。
先進国に生まれた僕のエゴが見えた気がした。


銀行があったので50オーストラリアドルを両替した。
僕は、ネパール人の月平均収入の半分以上のネパールルピーを手に入れた。
多分、このお金、5日くらいしかもたないのだろう。



僕も含め、欧米人、日本人の旅人達は、酒を飲んだり、話したりしながら、
不細工な顔で、
ゲラゲラ笑っていた。


<次号の旅日記は11月27日です!>

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