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『刑事とミツバチ 白の構造的知能暴力事件』 1

警電が鳴った。

「はい<サポートデスク>です」

八坂十百華(やさかともか)情報官は電話を取った。

<サポートデスク>は符牒だ。名前も名乗らない。

「あら、ちょうど良かった。私よ」

年配の女性だった。明るい声だ。

「行政解剖に立ち会って欲しいの。ええ、今からよ。町田署の捜査員がA大学の附属病院に向かってる」

30平米ほどの事務室にブラインドの隙間から西日が差し込む。

「すみません、対策官。今、私一人しかいないんです……」

「お供の<孫悟空>はどうしたの?」

「椿さんは、お昼前に裏付けに出てから、まだ」

対策官が溜め息をつく。

デスクは10人分あるが、実際に詰めているのは二人だけ。

ここは都内の廃校に間借りする「構造的知能暴力事件調査室」。

内務省から派遣された十百華は、調査室の室長だ。

「どんな案件ですか?」

「子どもよ。かわいそうに。小学校の教室から転落したそうなの」



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