魂にくちづけを
『魂にくちづけを』
二人用声劇台本(男:女=1:1)
声劇台本置き場…https://taltal3014.lsv.jp/app/public/script/detail/1894
《登場人物》
・明(あきら)…瞳が死んでいることを認識できていない。
・瞳(ひとみ)…死んでしまう。
《本編》
明 「僕は君と一緒にいられるなら他には何もいらない。」
瞳 「私のことは忘れて…。ちゃんと幸せになって。」
明 「おはよう、瞳。」
瞳 「( ………。)」
明 「今日はあいにくの雨だけど、瞳が一緒にいるから僕の心はいつも晴れてるよ。」
瞳 「( 明…。私はもう死んでいるの。)」
明 「最近瞳の声を聞けていないからさみしいな。お話はしたくないのかい?」
瞳 「( 明っ…!気づいてるでしょ?私は死んでるの。もう話はできないのよ。)」
明 「僕、また一緒にダンスがしたいんだ。あの時は下手くそで全然リードできなかったけど、実はあれから練習していたんだよ?」
瞳 「 (……。お願い。お願いだから…。)」
明 「ねぇ、瞳。」
瞳 「( お願いだから…。そんな優しい目で見ないで。)」
─1 年前─
明 「瞳〜!どこにいるんだい?」
瞳 「明、ここよ。」
明 「こんなところにいたのかい?突然いなくなったからびっくりしたよー。」
瞳 「うふふ。ごめんなさい。明からもらったネックレスのチェーンが外れちゃって…。無くさなくてよかった。」
明 ( M)僕が贈ったネックレスを愛おしそうに見つめている彼女の瞳が…とても綺麗でたまらなかった。
明 「愛してる。」
瞳 「…?!どうしたの?突然。」
明 「いきなりごめん。伝えたくなって。」
瞳 「びっくりしたけど、嬉しい。私も愛してる。」
明 「これからも、ずっと一緒にいよう。」
瞳 「うん。ずっと一緒よ。」
─半年前─
明 「ここのステップが難しいなぁ…。結婚式までにはかっこよくリードできるようになりたい…。」
瞳 「まだ式の日取りどころか会場も決めてないんだもの。大丈夫よ。……(咳き込む)」
明 「( 前に被って)瞳?大丈夫かい?」
瞳 「はぁ、最近 1 度咳が出ると止まらなくて…。」
明 「心配だし、お医者さんに診てもらおうか。」
瞳 「ただの風邪だと思うし、大丈夫よ。心配かけてごめんね。」
明 「あまりにも続くようなら、無理やりにでも連れて行くからね?」
瞳 「大丈夫。わかってるから。」
瞳 (M)この時に病院に行っていたら、もしかしたら死なずに済んだかもしれない。
―2 か月前―
瞳( M)ん?ふらふらして立っているのが辛い。
瞳 「( 溜息)はぁ…。」
明 「疲れた?あとは僕がやっておくから、瞳は休みな?」
瞳 「ありがとう。じゃあ少しだけ横になろうかな。」
明 「後で何か飲み物でも持っていくよ。」
瞳 「ありがとう。」
明 「ふらついてるけど一人で歩ける?一緒に行くよ。」
瞳 「ちょっとふらついただけだから大丈夫。」
明 「何かあったら呼んで。何もなくても呼んでくれていいけどね。」
瞳 「うふふ。じゃあ寂しくなったら呼ぼうかな。」
明 「なんだよそれー、可愛いこといきなり言わないの!」
瞳 「じゃあ、寂しくても呼ばなーい。」
明 「どうしてそうなるんだよー。瞳が寂しい思いしてるのに放っておけるわけないだろ。」
瞳 「それって私じゃなくて、明が寂しいんじゃないの?」
明 「そりゃそうだろ?でも、瞳が体調悪い時に僕が「寂しい」なんて男らしくないこと言いたくないんだよ。」
瞳 「男らしくないなんて思わないよ?」
明 「ありがとう、でも僕が気にするの。ほら!少しでもいいから寝ておいで。」
瞳 「うん。部屋行くね。」
瞳( M)まさかこれが最後になるなんて思っていなかった。
明 「瞳ー?水持ってきたけど、飲めそう?」
瞳 「……。」
明 「あれ?寝ちゃったかな。頑張りすぎるところあるし、疲れてたんだろうな。」
明(M)綺麗な寝顔に見とれてしまう。
明 「 (キスする。)おやすみ。またあとで起こしに来るよ。」
瞳(M)うぅ…、気持ち悪くなってきた。
瞳 「あぁ…、苦しいぃ。明…どこ?…苦しい、助けて…。」
明 「瞳、もうそろそろご飯にし…え?瞳!?どうした?苦しいの?」
瞳 「息が…苦しい。体が痛いよぉ…明、助けて。」
明 「病院に行こう!救急車呼ぶから!瞳?しっかりして!」
瞳 「明、…ありがとう。……愛してるよ。」
明 「え…今なんでそんなこと言うんだよ!死ぬな!ずっと一緒にいるんだろ?僕を置いていかないでくれ!」
瞳 「死にたくないよ…明。ずっと傍に居て?」
明 「当り前だろ?嫌がったって離れない!」
瞳 「……あり…がとう…。」
明 「瞳?おいっ!瞳っ!!目を開けてくれよ!瞳!!!」
明 ( M)病院に着いた時には既に瞳の心臓は止まっていた。心臓マッサージをされる彼女をどこか夢でも見ているような感覚で眺めていた。
瞳 ( M)意識がなくなるまで、ずっと手を握ってくれていたのが温かさで分かった。最後まで愛する人の温もりを感じながら死ねたのは、幸せだったのかもしれない。
明 「もうこれでサヨナラになっちゃうのか?そんなこと嫌だよ…。ずっと…ずっと一緒にいるって約束したんだ。」
明 ( M)自分がやっていることが狂っていることは十分理解していた。しかし、このまま彼女が炎に焼かれ灰となり消えてしまうことが僕は耐えきれなかった。
明 「はぁはぁはぁ…。ここまでくれば、大丈夫かな。ふぅ…。」
明 (M)改めて連れてきた君を見つめる。小麦色だった君の肌は青白い肌になっていて、いつも僕を笑顔で見つめていてくれたその顔には笑みもない。
明 「瞳。ごめんな、助けてやれなくて。苦しかったよな…。」
瞳 「 明、貴方のせいじゃないの。だから…そんなに自分を責めないで。)」
明 「ずっと一緒にいるって約束…守るから、瞳も僕と今までと変わらず傍にいてくれるかい?」
瞳 「( …え?明?)」
明 「これからも、たとえ肉が腐り落ち骨だけになってしまってもずっと一緒にいるって誓うよ。」
瞳 「 (え…それって…指輪?)」
明 「こんなことなら、もっと早く伝えておけば…渡せていればよかったかな。瞳の反応…見たかったな。」
瞳 「 (そんなっ…嬉しい。でも…。)」
明 「僕の命が消えるその時までずっと一緒にいることを誓います。」
瞳 「(だめ…。それじゃあ、明が囚われてしまう。)」
明 「本当ならここで結婚式をって考えてたんだ…。でも、今ここで瞳への気持ちを誓えたから今日が結婚記念日になるね。」
瞳 「(駄目よ!明!!)」
明 「これからもずっと愛し続けるって約束するよ。」
瞳 「(お願い。もう死んでるの。私のことは忘れて!)」
明 「指輪…似合ってるよ…。」
瞳 「 (明…お願い……私を縛らないで。)」
明 「どうせならドレスに着替えて僕ら二人で結婚式しちゃおうか!」
瞳 「 (お願い…やめて!明!!私は死んでるのよ!)」
明 「瞳…僕の大切な……。ごめんな…守ってやれなくて。ずっと一緒に生きて隣りに居たかった。」
瞳 「( ……っ!明…。)」
明 「瞳…。僕をおいて行かないでくれよ…。一緒に連れて行ってくれよ…。なぁ!!!瞳!!自分で死ねない僕を許してくれるかい?怖くて…。」
瞳 「 (大丈夫よ。生きて…生きて幸せになって。)」
明 「あはははっ…あはははははははは!!!!!」
明 「あれ?瞳?どうしてそんなところで寝ているの?風邪ひいちゃうよ?」
瞳 「( …?)」
明 「ねー!瞳?僕の声聞こえてる?」
瞳 「( 明?…どうしたの?)」
明 「寝顔もかわいいね。大好きだよ。」
瞳 「(明!!!しっかりして!!!)」
明 「手…冷たい…。あぁ、そっか…もう死んでたんだったな…。」
明 「(泣き叫ぶ)あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!うああぁぁぁぁぁー!」
瞳 「(明…ごめんなさい。ごめんなさいっ!!!)」
明 「ははははっ!!!いつまでも綺麗な君でいてもらいたいから、色々準備しなきゃねー。」
瞳 「 (ごめっ…なさい………。もう、私のことは忘れて…お願い。)」
明 「ずっと…傍にいるから、もう一人にしないから。愛してるよ、瞳。」
END