井戸端怪異(いどばたかいい)

『井戸端怪異』
四人用声劇台本(男:女:不問=1:2:1)

声劇台本置き場…https://taltal3014.lsv.jp/app/public/script/detail/2987

《登場人物》
・メリーさん…怪異『メリーさん』。
・人体模型…怪異『夜の学校を走る人体模型』。
・こっくりさん…怪異『こっくりさん』。
・花子さん…怪異『トイレの花子さん』。


《本編》

メリーさん 「私達ってさ、イメージ崩さないように頑張ってるじゃない?」

花子さん 「んー?そうじゃな。」

メリーさん 「毎回同じことの繰り返しでしんどくない?」

人体模型 「俺は好きでやってるから、正直周りが俺のことどんな風に言ってても気にしたこと無いな。」

メリーさん 「そりゃあ、アンタはいいわよね?モテたいからやってんでしょ?」

こっくりさん 「え?そうだったの?知らなかった。理由あったんだね、ただのおバカかと思ってた。」

メリーさん 「は?馬鹿でしょ!『走るのが早いとモテる』なんて信じて毎日夜の学校走り回ってるのよ?」

花子さん 「もうずっとだったから、走ってる理由なんて考えたこともなかったが、モテたいからって理由だったんじゃなぁ。」

人体模型 「俺はモテるためならどんな努力でもするぞ!」

こっくりさん 「そうだとしたらモテるにはどうすればいいのかってのをもっとリサーチしなきゃ駄目だよ。流行り廃りとかもあるんだから。」

メリーさん 「流石こっちゃん!わかってるー!」

こっくりさん 「その『こっちゃん』呼びも最初は嫌だったけど、もう慣れてきちゃった自分が嫌だ…」

メリーさん 「そう言えば、初めの20年くらいは嫌がってたねー。」

こっくりさん 「『ちゃん』なんて付けるような年齢じゃないんですー!」

メリーさん 「『こっちゃん』かわいいじゃん♪私は気に入ってるのになぁー。」

こっくりさん 「そりゃそうでしょ…じゃなきゃ呼び続けてる意味がわからないよ。」

花子さん 「あれ?そういえば人体模型のやつどこに行ったんじゃ?」

メリーさん 「さぁ?走りにでも行ったんじゃないの?暇さえあれば走ってるじゃない、あいつ。」

花子さん 「以前から思っていたんだが、人体模型への当たりが強くないか?」

メリー 「え?!そ、そんなことないと思うけど。ただあいつが馬鹿だから強く言っちゃうだけよ。」

花子さん 「そうなのかぁ?勘違いならよいが…。もし想いを寄せてるなら、私は協力したいと思っておったんじゃけどのぉ…。」

メリーさん 「ぅえ?!」

こっくりさん 「なんかすごい声出たけど大丈夫?」

メリーさん 「え?うん。だ、大丈夫よ?」

こっくりさん 「(小声)これって完全に動揺してるよね?」

花子さん 「(小声)やはりそう思うかの?だが本人が認めていない以上動けないのがもどかしいのぉ…。」

メリーさん 「ちょっと!二人でこそこそ何話してるのよ?」

花子さん 「ん?」

こっくりさん 「ん?」

メリーさん 「二人してとぼけてんじゃないわよ!しかも下手すぎない?」

花子さん 「とぼけることなんてないぞ?」



人体模型 「よーし!今日のノルマ完了!!」

メリーさん 「!?」

人体模型 「ん?大丈夫か?」

メリーさん 「何がよ!」

人体模型 「え?いや、なんともないならいいけど…。」

こっくりさん 「あーぁ、そんなことばっか言ってたらいつまでも距離縮まらないぞぉー?」

メリーさん 「ちょ、こっちゃん!?」

人体模型 「ん?俺になにか言いたいことでもあったのか?」

メリーさん 「そんなの何もないわよ!」

花子さん 「またそんな言い方して…。」

メリーさん 「何よ!私が誰のことが好きでも関係ないじゃない…。放っておいてよ。」

人体模型 「け…喧嘩か?」

メリーさん 「違うわよ!あんたは黙ってて。」

人体模型 「あっ、あぁ。ごめん。俺ちょっと追加で走ってくるわ…。」

こっくりさん 「あぁ、いってらっしゃい。」


メリーさん 「…。」

こっくりさん 「メリー、ちょっと落ち着きなよ。」

花子さん 「私達が協力しても、メリーが素直にならないとなんもならんぞ?人体模型は鈍感だから、はっきり伝えないと気づかないんじゃないかの。」

メリーさん 「素直にって言ったって…。今更恥ずかしいじゃない!」

こっくりさん 「照れなんて捨てなさいよ!どれだけ長い片思いしてると思ってるの?」

メリーさん 「え…。」

花子さん 「人体模型ほどではないが、鈍感な私でも気づいたんじゃぞ?」

メリーさん 「うそ…じゃあ、結構前からバレバレだったってこと?」

こっくりさん 「100年前には確信に変わってたかなー?」

花子さん 「おぉ!そんなに前から…。私はここ数年不思議に思っておっただけじゃった。」

メリーさん 「まさかとは思うけど、私って結構わかりやすかったりする?」

こっくりさん 「そうだね。結構わかりやすいんじゃないかな?」

メリーさん 「(小声)こっちゃんは私が好きなのかなって悩んでたくらいの時に気づいてたんだもんなぁ…。」

花子さん 「それで、告白はしないのかの?」

メリーさん 「ぅえ?!こここっ告白なんて無理だよ!振られたら立ち直れないもん。」

こっくりさん 「なんなら、私が人体模型の好きな人とか気になる人がいないか調べようか?」

花子さん 「おー、それは名案じゃな!」

メリーさん 「それは…。」

こっくりさん 「どうする?」

メリーさん 「んー。」

人体模型 「(走りながら向かってくる。)あぁぁぁぁぁぁぁぁー!」

花子さん 「人体模型は今日は一段と騒がしいのぉ。」

こっくりさん 「悩んでる間に帰って来てるけど?」

メリーさん 「心の準備が…。」

こっくりさん 「(小声)100年片思いしてて何いってんだよ…。」

人体模型 「話はすんだか?まだならもう一セット追加するけど。」

花子さん 「あぁー、もう大丈夫じゃよ。」

人体模型 「そうか、ならよかった!」

こっくりさん 「人体模型さ。」

人体模型 「ん?どうかしたのか?」

メリーさん 「ちょっと?こっちゃん!?」

こっくりさん 「今、好きだって言ってくれる子が現れたらどうする?」

人体模型 「今?唐突だな。」

メリーさん 「(小声)こっちゃん、何でそんなこと聞いたの?」

こっくりさん 「(小声)いいから。」

花子さん 「ほれ、どうするんじゃ?」

人体模型 「えっ、んー。気持ちは嬉しいけど、俺は好きな人からモテたいから…。」

こっくりさん 「へー?意外だな。」

人体模型 「モテたいっていつも言ってるけど、誰彼構わずモテたいって意味で言ったことなんて一度もない。」

花子さん 「男らしいのぉ…。」

メリーさん 「好きな人…いたんだ。」

人体模型 「あぁ、何にでも一生懸命で頑張り屋なところに惹かれて…。ここ数十年はツンツンしてるところも可愛くってな。」

花子さん 「え…それってまさか?!」

こっくりさん 「告白しないの?」

メリーさん 「……。」

人体模型 「いや、きっと俺のことなんてなんとも思ってないだろうし、話ができなくなるかもしれないと思うと残りの肌も剥がれそうだ。」

こっくりさん 「ふーん?相手が好きな人、知ってるって言ったら、…どうする?」

メリーさん 「え?」

人体模型 「聞かないよ。自分の知らないところで嫌だろ?」

メリーさん 「…その人って、私も知ってる?」

人体模型 「え?あぁ、知ってるというか…。」

メリーさん 「何よ。」

人体模型 「…(深呼吸)俺が好きなのは…メリーさんなんだ。」

メリーさん 「(前の台詞に被る)いやぁぁぁぁー!聞きたくないっ!」

こっくりさん 「いい加減にしなよ?」

メリーさん 「こっちゃんは私をどうしたいの?やめてよ!」

人体模型 「?」

花子さん 「人体模型はメリーのことが好きだったのか?」

人体模型 「えっ…。あぁ、言うつもり無かったんだけどな。」

メリーさん 「…え?」

こっくりさん 「はぁ、両想いなの!わかる?」

人体模型 「両想いって…。」

メリーさん 「…私、人体模型のこと好きなの。」

人体模型 「それって…本当か?俺をからかってたり…。」

メリーさん 「流石にそんなことしないわよ!」

人体模型 「そうだよな。ごめん。」

メリーさん 「あんたこそ、私のこと好きって…本当なの?」

人体模型 「俺はずっと、メリーさんのことが好きだった。一目惚れだったんだ。」

花子さん 「え?!一目惚れだったんか?」

こっくりさん 「これは驚いたね…。」

メリーさん 「それって、何百年も前じゃない。」

人体模型 「そうだな。」

こっくりさん 「まさか、走るようになった理由って…。」

人体模型 「足が速いのが好きだって話してたときあっただろ?」

メリーさん 「そんなことあったっけ?」

こっくりさん 「足が速い人の方が追いかけがいがあるって話してたときじゃないかな?」

花子さん 「言われてみれば、それまでは走ったりしていなかったなぁ。」

メリーさん 「そんなこと知らなかった…。」

人体模型 「改めて、俺はメリーさんが好きです。お付き合いしてもらえませんか?」

メリーさん 「付き合うに決まってんでしょ?」

花子さん 「わぁー。めでたい!」

こっくりさん 「おめでとう。」

人体模型 「じゃあ、やるか!」

メリーさん 「ん?なにするの?」

人体模型 「足が早い方が追いかけがいがあるんだろ?」

メリーさん 「えっ?…うん!」


花子さん 「おうおう、早速イチャついておる。」

こっくりさん 「そうだねぇー。」

花子さん 「ふふふ、お主は昔から損な役回りばかりじゃなぁ。」

こっくりさん 「仕方ないさ。」

花子さん 「いっそ、私にしておけばいいものを。」

こっくりさん 「今そういう事言われると、後々後悔するよ?」

花子さん 「ん?お主から好いてもらえるなら後悔なぞせんぞ?」

こっくりさん 「……本当にやめて。」

花子さん 「だてに何百年も想うておらんからなー。」

こっくりさん 「はぁ、なんだって私なんか…。」

花子さん 「あれ?言っておらんかったか。初めて私のこの髪を褒めてくれたときから好いておるぞ?」

こっくりさん 「あの時かぁーって。」

花子さん 「ふふふふ。まぁ、私はいつでもええでのぉ。」

こっくりさん 「私の初恋は実っていたってことか…。未熟だったあの日の自分を呪い殺したいね。」


END








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