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すみだ向島EXPOだけじゃない!めざすのは日常からなじみ、ともに成長しあう町とアートの関係性~バーバーアラキにできた世にも不思議な雑器店の謎に迫る(2)雑器店に集う人々
第二話「赤坂VS京島⁉ 人が地元に求めているものって何だろう?」
前回は、雑器店・店主で画家の海野貴彦さんにご自身のことや雑器店に込めた思いを伺いました。今回は雑器店に関わる人から、人が町、あるいは生まれ故郷に対して抱える思いにフォーカスしてみました。
登場人物のお一人目は海野さんを取材していたら雑器店にやってきたMちゃん。昨年のすみだ向島EXPOに遊びに来たのをきっかけに海野さんが海の家をつくる手伝いしてくれた京島ファン。そしてもうお一人は、雑器店の俊敏スタッフSさん。さあ、どんな会話が展開されるのでしょうか。
赤坂になくて京島にあるもの
海野さん:おーよくきたねぇ!!Mちゃん!今何やっているの?
Mちゃん:うーん、最近はコミュニティカフェで焼き芋売りのバイトとかしています。赤坂で仲間を見つけて活動したいんですけどねえ。今日は町づくりに関心がある仲間のSさんと地元・赤坂めぐりをした後、こちらにも立ち寄ってみました。
海野さん:あ、紹介するね。Mちゃんは赤坂生まれの赤坂育ち。赤坂の町を素敵にしたくて、悶々としているんだよね。去年のすみだ向島EXPOに遊びに来てくれたのがきっかけで、こんなお嬢さんなのに、俺の汚いつなぎとヘルメットかぶって海の家をつくる手伝いをしてくれる奇特な人。イベントをやっているとこういう出会いがあるから面白いんだ。で、Mちゃんはどうして赤坂で町づくりをしたいんだっけ?
Mちゃん:都会の中でのつながりの希薄化みたいなものが気になっていて・・・そのためにコミュニティとか作りたくて、どうせやるなら生まれ育った赤坂でと思っています。だけど、今日も友達に赤坂を案内しながら、やはりどうも赤坂に愛着が湧かないなあと感じてしまう自分もいたりして。神社が3つもあり、歴史もあるけど、周囲はチェーンのお店ばかりで、地元の人が気軽に入って楽しめるような居酒屋すらない。京島は古いものや今あるものが大切にされていて、人の交流もあってこの雰囲気がいいなあって感じるんですよね・・・
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受け皿とやりがい
海野さん:地元に愛着が湧かないなら無理しないで好きなところで始めれば?とも思うんだけど。赤坂は間違いなく滅びないし、もっと助けが必要な地域は全国にたくさんあるし。それでも、地元の赤坂にこだわるというところはMちゃんの独特の感覚なので大事にしたほうがいいとも思う。だけど、東京は自由にいろいろやるのには本当に厳しいところなの。例えば大やぐらをつくるにしても土地はないし、建築規制等も厳しい。赤坂なんてその最たるものだから、受け皿になってくれるような人がいてくれると本当に助かる。
Q:そういう意味では、京島は受け皿があったということですね。
海野さん:2年前に国際芸術祭「東京ビエンナーレ2020/2021」に参加して、大やぐらをつくる場所を探していた時、すみだ向島EXPOの仕掛人・後藤さんに「うちでできますよ!」と簡単に言ってもらえた。京島にはそういう受け皿があるし、やることを面白がってくれるからやりがいもある。逆に自分としても「こういうのやりたいんだけど、どうしよう?」と相談を受ければ、差し出がましいけど「こうやったら確率上がるよ」とアイディアを言うことができてうれしい。Mちゃんも早く自分の場所を持つといいよ。そしたら、俺もいろいろ一緒に考えることができる。赤坂でも雑器店を開いてもいいし、廃材を使って東京タワーとか建てたりね(笑)。
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京島っ子の本音
受け皿としては、すみだ向島EXPOの仕掛人・後藤さんは無論ですが、京島の近隣、文花に生まれ八広で育ったという生粋の地元っ子、Sさんも雑器店スタッフとして活躍しています。レジ横で一緒に取材を聞いていたSさん、地元の人から見て、すみだ向島EXPOなどのアート活動はどんな風に見えているのか聞いてみました。
Q:Sさんはどんなきっかけでスタッフになったのですか?
Sさん:実は、私は昨年の秋まで、すみだ向島EXPOすらよく知らなかったんですよ(笑)。2020年秋に何かイベントをやっていたことは知ってたんですが、、、最近、なんかお洒落なバーやカフェが増えたなあ、若者いるなあ、何でけん玉してる人がたくさんいるんだ?(注:京島にはけん玉で有名なカフェがあります)くらいの感じです。なので、海野さんが大やぐらをつくっていた稽古場の前は通っていても、その存在にさえ気がついてなかった。
でも、その後、八島花文化財団(※)の代表理事でもある、すみだ向島EXPOの後藤さんと知り合ってよくよく話を聞いてみたら、この町が死なないようにいろいろやってくれている。実際おしゃれな場所が増えてきているので、これはいいじゃないか!と思いました。ぜひ頑張っていただきたいなと思って、雑器店にも店舗スタッフとして参加しているわけです。
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(※)八島花文化財団:墨田区の北側(≒旧向島区)を活動範囲として、生活文化を継承していくことを目的に、すみだ向島EXPO、まちあるきツアー、「江戸長屋」認定プロジェクトなどの事業に取り組んでいる一般財団法人。
Q:地元出身の方が関わってくれているっていうのは心強いですね。
海野さん:Sさんと雑器店を通じて知り合うことができたし、この雑器店はSさんの能力なくしてできなかったことがいっぱいある。俺にとってSさんはこの先何かあった時に相談できる人だとわかったこと自体がすごい財産になっている。地元にいてやれる、やりたいっていう人がいることは本当に重要だと思う。そういった意味ではMちゃんも赤坂の希望になりうるということだよ。
Sさん: たしかに、私の場合、京島を離れたくても離れられない。親兄弟もいるし、ここで結婚もして子供育てて、家もお墓もここにある(笑)。だから、京島を何とかするしかないという思いも強いし、近いから関わりやすい。アートも愛しているから、楽しいことに参加させてもらっているなあと思っています。
ただ、以前の私のように、地元にいても接点がない人からすると、いったい彼らは何をしているんだろうか、と思っていることも事実です。私もそういう人たちに活動をどう伝えていったらいいのか、気になることはあります。外の人から見ると素敵に見える古い長屋も火災という面ではものすごく危険で、さっさとつぶして現代的なものに建て替えられればいいのに、という本音もあります。そんな地元の人にすみだ向島EXPOやバーバーアラキのリノベーション活用の目指すところを理解してもらえるようになるといいなと感じています。
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Mちゃん、Sさんのお話をお聞きして、個人の中にある「自分の町」に対する思いの繊細さや複雑さを垣間見た気がしました。そして、すみだ向島EXPOや「雑器店」といったイベントや取り組みが刺激剤となって行動し始める個人を生み出していることも感じました。次回(最終回)は、京島でさらに活動を進めていこうとしている海野さんに、町に関わるアーティストの役割についてさらにお聞きします。
取材・執筆:西山由里子
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「雑器店」が8月1日から再オープンします!
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