``わたしたち‘‘をみつめる芸術祭。すみだチームでSACPに参加してきた。
10月7日(土)〜12月10日の期間、大宮区を中心に開催されている「さいたま国際芸術祭(SACP)」。
今回は、10月19日(木)に行われたトークイベント『「アートの場づくり」リアルミーティング!』に合わせて「すみだ向島EXPO」実行委員長・後藤大輝とEXPO出展アーティストであるテンギョー・クラ、北川貴好、林光太郎の4人でSACPを巡ってきた。
市民の憩いの場に吊るされた、裏と表の``わたしたち‘‘
13時大宮区役所集合。
2019年にオープンした大宮区役所。ガラス張りでとても綺麗である。一階部分には広場があり、市民が思い思いに過ごせるよう机が配置されている。
今回案内してくださるのは、山本未知さん、遠藤一郎扮するカッパ師匠、浅見俊哉さんだ。山本さんはアーカイブ、SACP BASEの設計を行った。遠藤さんと浅見さんは今回、作家として作品を発表している。さらに浅見さんはSACP内で行われるプロジェクトのキュレーターとしての顔も持つ。
実はEXPOとSACP両方にアーティストとして参加しているテンギョー・クラ。彼から浅見さんにプレゼントした青い羽織を浅見さんが着てきてくれたことにテンションが上がる。
「おーブラザ~!イケてるね~」
一行、外へ。
区役所前にはカラフルで大きな作品が。こちらはさいたま誇りの2000年以上の歴史を持つ古社「氷川神社」に鎮座させらるスサノオの姿。地面からニョキッと顔を出している。元廃材を使って作られている。
浅見さんによる作品制作裏話を聞きながら待っていると、大宮一目立つ車が僕らを迎えに来てくれた。
車体にデカく「未来へ」と書いている!よく見ると小さくいろんな字も書かれている。
こちらはカッパ師匠に扮する遠藤一郎が車上生活をしながら、全国各地を巡り、行く先々で出会った人に夢を書いてもらう、という「未来美術家」としての活動を行う彼の家でもあり、作品でもあるのだ
運転するときには必ずかけるというドラクエのゲーム内BGMを聴きながら、車体を揺らして進んでいく。ドラクエのBGMとド派手な車内に興奮する一同。ストーリーテラーとして活動するテンギョーさんが「冒険に向かうみたいだな」と言う。男しかいない車内、さらに盛り上がる。
気が付くと、住宅街の中にある陽だまり当たる素敵カフェに到着していた。作品の展示会場に着いたようだ。
未来へ号を降りると金木犀の香りが心に色を添える。
ヴァガボンドが写した世界の多様な姿
テンギョー・クラは移動と滞在を繰り返しながら生きていくヴァガボンド(よそ者)という生き方を自身の表現としている。そんな彼は2018年より、自身のパッションとして障がいを持つ人との交流を続けてきた。今回は南アフリカ諸国の福祉の現場にカルチャーダイブした際に撮影した写真群を展示している。しかもその展示場所が障がいのある人もない人も楽しく集える「まぜこざ」の場づくりを実践しているマーブルテラスさんなのだから、展示への向き合い方にも深いものが生まれる。
マーブルテラスの方たちに笑顔で見送られながら、お次の場所へ。
未来へ号はこれで6台目。この6台目だけですでに53万km走っているという。運転が安定していて、ランチ後ということもあり、眠くなる者、チラホラ。窓に頭をもたせ掛け、眼を瞑る。瞳を通して、差し込む光が目の裏で踊る…。そうこうするうちに車は住宅街から、土薫る田園地帯へ。
次の会場へ到着だ。
元工場でうごめく若きアーティスト
展示会場の横に設けられているバーカウンターでドリンクをいただきながら、平川さんのお話を聞く。
ここは賃貸物件で、借りている。倉庫にする予定の場所だったが、梅雨になると床から油が染み出してしまうため、倉庫にはせず、油絵を描く画家のアトリエとして一階は貸している。画家だからこそ利用できる場所だという。自分たちでフルリノベしているというから驚きだ。
一階に降りると、スタジオメンバーとして利用中のMOYANさんに出会う。
着せ替え人形をモチーフに作品制作に励むMOYANさんの次の作品を特別に見せてもらい、次の会場へ。
自然と歩む、作品たち
車はさらに自然の多いほうへ。
こちらでは遠藤一郎と、神田神保町に居を構え、誰でも受講できる美術の複合的学び場「未来美術専門学校」の生徒さんたちが展示をしている。
室内だけではなく、外にも作品がちりばめられている。
こちらの剣は浅見さんの作品である。
テンギョーさん「大輝くん、ひっこぬいちゃいなよー」
未来美生が日本地図にダーツの矢を投げて、刺さったところに行き、そこから石を拾ってくる。その石が、上映作品の下に置かれている。
ここは大工さんが利用していたスペースだったそうだ。その大工だったオーナーがこの建物を自分たちで建てた。
今はギャラリーやイベントスペースとして活用されている。市内からは離れているが、この会場を気に入った一郎さんが、「ここでやりたい!」と気持ちを押し通し、展示場所がここに決定した。
元大工のオーナーが顔を出したり、畦道を通りかかったおっちゃんが「なにしてるんだい?」と足を止め話したりと、ワイワイ楽しいティータイムとなった。
暗くなり始め、19時からのトークイベントに間に合うよう、急いで帰る我々。
そんな我々を扉が閉まるまで手を振って待っていてくれる未来美生。
「space845」、自然とともに歩みを進める、温かい場所であった。
アートを問う、熱き夜
自己紹介をして、SACPを巡った感想を話し、それぞれが思うアートと街の関係や芸術祭の在り方など、聞きに来られた20名弱のお客さんも交えて、21時ごろまで約二時間の熱いトークが展開された。
打ち上げは大宮一のネオン街の入口にある居酒屋へ。
さいたま国際芸術祭2023は12月10日まで毎日動き続けている。とても一日では回り切れないほど、会場が充実している。僕らも後日再度訪れる予定だ。
皆さんもぜひ
執筆・編集 林光太郎
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