ZORN / Stay Gold
Stay goldの直訳は、金を維持する。という意味。そこから、色々な意訳が出来る。「輝き続ける」、「成功者であり続ける」など。また、stay goldという単語の並びがはじめて使われたのはロバート・フロストの「Nothing gold can stay.」という詩だそうだ。この詩の内容は、「若さやそれに起因する純粋さはいずれ無くなる」というもの。それに合わせて、stay gold を和訳すると「多義的な若さを保つ」や「純粋な頃を維持する」となるだろう。
私が、このことを最初に説明した理由は「成功者であり続ける」という訳と「多義的な若さを保つ」という訳の両方が、ZORN / Stay Goldの歌詞を理解するのには必要だと感じたからだ。
これから、この曲をhook→第一章→hook→第二章→hookという構造に分けて感想・考察をしていこうと思う。
第一章 回想
第一章は、ZORNの他の曲でも聞くような(多義的な若さによる)過去の出来事と、残酷な諸行無常が文学的かつ具体的に語られ第二章につながる終わり方をする。
30代で、地位・富・名声を得て家族もいてそんなZORNが、金は無いが仲間達(ホーミー)との楽しかった10代の時間を振り返る。
All my homiesでも感じることのできる、葛飾新小岩のやんちゃなZORN。
しかし、そこには確実な悲しさもある。「多義的な若さを維持する」ことの難しさをラップしている。
やんちゃで犯罪もしたホーミーたちも、今や家族・仕事。これは、更生したとかそのような類の美談じゃない。
自分も、家庭を持ち有名なラッパー。葛飾区を日本のHIPHOPシーンを牽引している。
あの頃ような、ガキのままではいられない。でも、戻りたい。
夢かない、すべて手にしたようで、何かが零れ落ちた。
そこからHOOKにつながる。
第二章 今と未来
横浜アリーナを埋め、クロムハーツから連絡が来て、玄関にはゲレンデ(ベンツ)の止まるZORN。
いくら稼いだって、いくら外見が変わったって、いくら年を取ってって、心はいつもあの頃公園にいたガキのまま。見た目は大人、中身子供の逆コナン。これが、ZORNをZORNたらしめる所以。初心忘れず、天狗にならず、ホーミーを大切に上を目指す。その姿こそが、正真正銘仲間たちの夢。
あの頃の夕暮れは、何色だったのだろうか。
いまは、憂鬱なグレー。でも、下は向かない。
ZORNの決意が固く表れているところ。
ここから、未来に向けた内容になっていきます。
今ある幸せを誇り大切にする。そして、てっぺんを目指す。
過去や、経験は価値の下がらない資産。永遠であり、ZORNの中に行きつ続ける。だから、仲間のために家族のために成功者(stay gold)であり続ける。未来に向かい歩き続ける。
最後は、ZORN節満載のバース。
純真無垢(多義的な若さ)に、ゲレンデ(成功者)で向かうチューリップ組(お子さん)。
これ以上ない締めである。
終わりに
いうのも野暮だと思い、最後まで触れてませんが、こんなに文学的で抒情的で高度な内容を、ほとんど韻で表現しているヤバさ。化物以外の言葉が見つからない。
ラッパー界の井上尚弥です。
この曲はアルバムの中でも一番好きです。なので、私のつたない文章ではありますが全力で良さを感想を書かせていただきました。