フロッピーでもフロプシーでもなく|ピーターラビットのおはなしをAI翻訳してみた 2
「ピーターラビットのおはなし」の原作はこんなふうに始まる。
おはなしの最初から最後まで全文を一気にDeepL の左ウィンドウに貼り付けた時、右ウィンドウの日本語訳のこの部分は、次のように表示された。
Flopsy は Floppy に似ているため、DeepL は気を利かせすぎて勝手に Floppy の誤入力だろうと思い込んだのか、「フロッピー」と訳してしまった。
大きなお世話だが。
しかし、作品の全文ではなく、冒頭のこの部分だけを DeepL に入力してみたら、日本語訳はこうなった。
Flopsy を原文のスペルのまま表示し、(フロッピー)という提案はカッコでくくられて遠慮がちに表示している。
「あのお…すみませ〜ん…もしかして、Floppy のお間違いではぁ?」と DeepL さんが躊躇しながらきいているみたいだ。
「いえ、間違いじゃありません! Flopsy でいいんです!」
って DeepL さんに言いたい。どうやって言えばいいのかわからないが。
ただ、DeepL さんの気持ちもわかる。
Flopsy の flop は、 形容詞 floppy の flop と同源だ。
ウサギが飛ぶときの「ぴょん」も flop
floppy disk のケースの中身に入っている薄い磁気ディスクがしなるときの「ぷわん」とか「ぺらん」も flop だ。
ビーサン(年配の人はゴム草履と言う)のことを英語で flip-flop というのは、これを履いて歩くときに flip, flop ... 「ぺたんぺたん」という音がするからだ。安物の「ツッカケ」を flip-flop と言うこともある。
floppy は「ぺらんぺらんな」という感じ。
5インチとか8インチのぺらんぺらんなフロッピーディスクが記憶にある人もいるだろう。80年代の初めにワープロやパソコンを使っていた世代なら。
ビアトリクス・ポターがウサギの名前に使ったのは Floppy ではなく、Flop-sy である。ウサギは flop「ぴょん」とか「ぴょこ」と飛ぶのであって、floppy 「ぺらんぺらん」な生き物ではない。
英語で読み聞かせてもらっているイギリスの5歳児は、Flopsy という名前の音から、flop! ぴょん! flop! ぴょこ! と穴から飛び出してきた子ウサギをイメージする。
だから、私は Flopsy をこう翻訳したい。
ぴょこちゃん
そして、次女の Mopsy は
もこちゃん
と翻訳したい。Mopsy の mop は、もこっとしたものを連想する音だから。
では、三女の Cotton-tail は? これはオノマトペではなく、「コットンのしっぽ」つまり、「コットンのように白くてふわふわしたまるいしっぽ」という意味の言葉がそのままこの子の名前になっているのだから
ふわみちゃん
と翻訳したい。というわけで、私の日本語訳はこうなった。
わたしが The Tale of Peter Rabbit の翻訳を出すなら、絵本の題名は
うさぎのぴいた
とする。
けんたくんや、しょうたくんや、ゆうたくんや、りょうたくんや、そのおともだちの日本のこどもたちに ぴいた を大好きになってほしいから。
*見出し画像は The Tale of Peter Rabbit より
★私の翻訳は、私「すみ」の著作物です。無断転載を禁止します。
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*記事中に引用した DeepL の翻訳は 2021年8月当時のものです。DeepL は日々進化中のため、現在は引用とは異なる訳が表示される場合もあります。