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婚活女子が、ペンギンに激しく憧れた理由

石原さとみもいい。
北川景子もいい。
菜々緒もいい。憧れの女性を思い浮かべることをもう何度したことだろう。
同じ日本人、女、30代。
大きくくくれば、一緒。だけど、収入、キラキラ感、美人度。ここまで違うのは、不公平過ぎると呪った。
彼女たちみたいになりたい。なったら、飲み会に行って、必死にお皿を配ったり、聞きたくもない道の駅の話に
「そうなんですかー!!」なんて愛想を振りまいて、頷かなくてもいい。
いいなー……美女。
いつも思っていた私は、今猛烈にうらやましいと思っているものを見つけてしまった。

いいな……
いいな……

ペンギンいいな。
ペンギンに私はなりたい。

また来たよ。日曜日の夕方。日本的国民アニメ
サザエさんが流れる時間。
「こんばんはー!」勢いよく扉が開くと、ぞろぞろと入ってくる。
30過ぎても1人ものの私とは対照的に、弟は20半ばで早々と結婚し、子どもも2人いる。
週末になると遊びに来るというていで、ごはんを食べにくるのだ。

「ばあば! あのねー」
そんなにでっかい声を出さなくても分かる。子どもはなんでああも声が大きいのだろう。保育園で働いている時を思い出すから、ちょっと凹む。

ごはんを食べながら、習い事の話
学校の話を聴いて
私も子どもを産んだらこうなるのかー……
想像すると、ちょっと怖くもなる。

家にウサギや、モモンガを飼うほど弟家族は動物好きだ。
テレビを見ていると
”ざんねんなどうぶつたち”というコーナーが始まった。
普段知らない、動物たちの不思議というか、何で??という習性について説明してくれていた。

コアラの離乳食は母親のフン。
クジラの耳アカは〇メートル。
そうなんだーと片耳で聞いていると
次の声で、箸を置いた

「ペンギンのモテ基準は、石をたくさん積んだ者」

なに?どういうこと?
姪っ子たちと一緒になって、画面に集中した。
ペンギンはオスがまず、石を積んで巣作りをする。
そこにメスがやってきて、いかに安心する巣なのかを見る。石が多ければ多いほど、卵を産みやすいと判断される。
安心する家を作れる男が、モテるのだ。

いい!
なんていい!

激しく感動した。
だって、基準が分かりやすいじゃないか!
石が多ければモテる。

人間基準って多すぎると思う。
外見。
中身。
仕事。
家族。
収入。
センス……
とにかく誰かにモテたかった。彼氏がいないということが、最大の劣等感だった私は、自分がモテる武器が欲しかった。
見た目に自信がなかったから、料理を極めた。ことあるイベントにお菓子、料理を差し入れした。
気配り出来ると思われたくて、飲み会の時は常に相手のグラスを見て、いいタイミングでメニューを渡した。
全く興味ない道の駅の話だって
相槌して
「いいですねー」にこにこしてた。

多くすれば、どこかに当たる。
モテの基準を制覇すれば、誰かに拾われると思っていた。
全てを極めるのは、難しすぎる。
ほとほと疲れた。
ペンギンになれば、石を集めるのに集中すればいい。
単純明快な基準がうらやましかった。

この発見を伝えたい!
珈琲と、ねっとりとしたチョコケーキを、つつきながら、友人に話した。
「ねえ、ペンギンってよくない!?」って話すと
「は!?」
「だって石集めたらモテるんだよ」
「あー……でもさ、石集められなかったら、アウトだよね」

そうか……
1つしか基準がないと、出来ないヤツは、何をやっても巻き返せない。
単純だからこそ、厳しい。
友人の冷静な判断に、興奮がサーっと引くのが分かった。

私は誰かに気に入られようとして、とにかく手を出して色んなことをやった。
気配り
メイク
相槌。
どれもハマらないことに、疲れた。
相手に気に入られようとしている時点で、私ではなくなっている。相手の好みになろうとしているから。

モテる評価項目は確かに多い。
だけど最終的には自分は自分でしかない
という1つしかない気がする。
がむしゃら過ぎない自分を好きになってもらえること。
私も、作られていない相手を好きになること。
それがモテということなのかもしれない。

ペンギン。
頑張れ。
たとえ石が少なくても
毛並みとか、色がいいとか
あなたの魅力を見ているメスはいる。
少なくても、私は応援しているとエールを送った。

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