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理想の一日。
アラームをかけずに気持ちよく目覚めたタイミングでカーテンを開け、陽の光を浴びる。
太陽の温度を感じながらベランダに出てタバコを一本味わう。
前日の残りのご飯とおかず、インスタントの味噌汁でお腹を満たし、食後にブラックコーヒーを一杯。
仕事でなかなか捗らなかった家事をひと通り済ませ、二度寝する。
理想としては二度寝から目覚めるのは午後3時。
起き抜けにタバコを吸い、覚醒する。
乾いた喉を水道水で潤し、歯を磨く。
シャワーを浴び、髪を乾かし、匂いがつくと勿体無いからIQOSを吸い、一人で美容系YouTuberごっこをしながら化粧をする。
少し小腹が空く頃合い。
ドンキの特用カルパスを丸かじりしながら缶チューハイをあける。
ふと時計を見ると午後5時48分、意外といい時間になっている。
ダーツを投げやすいトップスに、ジーパン。恋人に選んでもらった蝶々のピアス。少し穴の開いた靴下。履き慣れたadidasのスニーカー。
これが今日の私の戦闘服。
エアコンと電気を消し、最後に玄関の全身鏡で自分の姿を見やる。
「大丈夫、今日もかわいい」という魔法の言葉で、外出へのやる気を出す。
ドアを開け地上に降り立ち、そして我が城の鍵をかける。
外の空気を感じながら駅までの道を歩く。
ダーツライブアプリでお気に入りのダーツバーのいまどこを確認しつつ、早くダーツを投げたい一心でつい歩調が逸る。
時刻表を見ずに家を出たが、ぴったりの時間に電車が来た。
いつもの6両目に乗り込み、車両内の人間観察をする。
OL、サラリーマン、カップル、部活帰りの高校生、おばあちゃん。
珍しくバリエーションに富んだ車両であることに密かにテンションが上がる。
ダーツバーまでの2駅分、たった4分。
それすら長く感じるほど、ダーツが投げたくて仕方がない。
目的の駅に着き、人混みを潜りながらいち早く改札を抜ける。
踏切にも信号にも引っかからず、最速記録を更新して店に到着した。
席に通され、店員さんに「ハイボールで。あと灰皿いただけますか?」と伝え、とりあえず一服する。
タバコを燻らせながらマイダーツをバッグから取り出し、準備をする。
シャフトの緩み、チップの確認、今から投げるためのこの時間が割と好きだったりする。
最後のひとくちを吸い終わり、いよいよダーツ台に向かう。
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もしも、そんな一日を過ごすことができたら、私は布団に入る瞬間、「今日もしあわせだった、ありがとう」と生きていることに感謝するかも知れない。