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脳内はしりがき。
とても久しぶりに文章を書く。
この1週間で私には大きなことが起こりすぎた。
もっとはやく気付けばよかった、もっとはやく正直になっていればよかった、いま思い起こしてもたくさんやれることはあった。
結果私は職を失った。
毎日が新鮮でキラキラして楽しい職場だった。
辞めなくてよかったはずが、事が大きくなりすぎて辞めざるを得なくなった。
一瞬恨んだが、それもすべてお門違い、私のせいだった。
躁鬱。
失ったものも多いが、手に入れたものもある。
ゆっくりと過ごす時間、甘えられる空間、こんな私でも大切にしてくれる人。
甘美な夢を見ているかのような1週間だった。
寝て起きてご飯を食べて少し散歩してまた寝て食べて。
時々セックスをした。
楽しさと躁で連勤バグを起こしていた私には得られなかった、別ベクトルの充足感。
「生きることは食べること」とはよく言うが、この1週間でそれを実感した。
私のせいで傷付けた恋人、最初はポンデリング一個でお腹いっぱいと言っていた。
食欲がないと言っていた彼には生気がなかった。
いまは彼もきちんとご飯を食べる。
肌も潤い、目に光が宿っている。
私自身、仕事をしていたときは賄いで適当に作ったものを食べて、ただ腹を満たすためだけの食事をしていた。
そこに食べること、生きることの喜びはなかった気がする。
ただ、食べなければ働けないという義務感で食べていたのかもしれない。
この1週間、彼が私のためにたくさんの美味しいご飯を作ってくれた。
そこには味はもちろん、気持ちがこもっていた。
だからなのか食べれば食べるほど私の心身は回復していった。
当初希死念慮で押し潰されそうな夜を過ごしていた私が、いまはもう彼の腕の中でゆっくり眠れるようになった。
「食べることは生きること」
それをまさに感じた1週間だった。
それでもやはり眠れない夜もある。
そわそわして寝付けなくて、目を閉じたら夜に飲み込まれてしまいそうな気がして。
眠れないまま私は一人、夜中に神社へ向かった。
鳥居の前で一礼、鳥居をくぐるとさっきまで吸っていた空気と変わった気がした。
冷えた空気がツーンとする、その奥にもっと冷たい何かを感じた。
境内には誰もいない。
ぽつぽつ灯る境内のあかりを頼りに石畳を歩く。
呼吸をするたびに身体の中の靄が神社の神聖な空気と入れ替わる心地がした。
本殿に近づけば近づくほど、畏れなのか心臓がキュッとした。
と、同時にそわそわして眠りにつけなかった自分が薄れていった。
二礼二拍手一礼。
何も持たずに家を出たためお賽銭できないことを申し訳なく思いながら、神様に事の顛末を白状した。
すべて話すと心が楽になった。
そのまま境内をゆったり歩いた。
分社、お神輿、神楽殿、慰霊碑、見れるものは全部見た。
境内を一周し、ふと空を見上げると、澄んだ空気に星が散りばめられていた。
決して田舎ではないこの地に、こんなにも星は瞬いていた。
ずっと空を見ていた。
空を見続けていたら目が慣れたのかもっと星が見えた。
この星々に比べりゃ、私の今回の不始末なんてほんの些細な事だった。
小さな自分を、狭い世界で大きく感じすぎていたのかもしれない。
世界は広い、宇宙はもっと広い、私一人の命なんてなんてちっぽけなのだろうと。
そんなちっぽけな私を、私の命を、大事だと言う変わり者が居てくれるうちは、まだ死んじゃダメなのかもと思えた。
灯篭の脇で少し休んでから家に帰った。
最後、鳥居を潜って一礼。
鳥居を抜けるといつもの空気に戻った気がした。
玄関のドアを開けるといつもの荒れた私の部屋。
でも不思議ともう希死念慮は湧いてこなかった。
すやすや眠る恋人の寝顔を横目にタバコを吸った。