自分を生きるために、まず「振り回されている自分」に気づくこと

◆相手の期待に応えようとするたびに、自分が遠ざかる

「こうしたほうがいいよ！」
「もっとこうしてくれたら助かるのに」
「君ならきっとこれができるよね」

誰かからのこうした言葉を、あなたも日々どこかで耳にしているのではないでしょうか。
そしてそのたびに、つい「そうだよな」「期待に応えなくちゃ」と自分を奮い立たせ、相手の期待に応じるように行動してしまう。

もちろん、他者の期待に応えること自体は悪いことではありません。むしろ社会の中ではそれが「善」とされることも多いでしょう。

ですが、気づけば「自分が本当にどうしたいのか」がわからなくなっている――そんな経験はないでしょうか？

たとえば、こんなシチュエーション。

上司から「この仕事、君じゃないと頼めない」と言われ、忙しくても無理をして引き受けてしまった。

友人に「相談に乗ってほしい」と言われ、気が乗らないのに都合をつけて時間を割いた。

家族に「こうすべきだ」と言われ、自分の意見を押し殺して従ってしまった。

その場では「これでよかったんだ」と自分を納得させようとするけれど、心のどこかで違和感が残る。

「何かが違う」「これが本当に自分がやりたいことなのだろうか」と、モヤモヤした気持ちが消えない。

こうして、相手の期待や思惑に応えようとするたびに、自分の本音や本質がぼんやりと遠ざかっていくのです。

◆振り回される理由は「自分を守りたい」という気持ち

では、なぜ私たちはこんなにも簡単に「振り回されてしまう」のでしょうか？
その理由の一つは、私たちの中にある「自分を守りたい」という気持ちにあります。

たとえば、上司の期待に応えようとするのは、「仕事ができないやつだと思われたくない」という気持ちからかもしれません。

友人の頼みに応じるのは、「冷たい人間だと思われたくない」という恐れがあるからかもしれません。

家族の言うことに従うのは、「反発することで嫌われたくない」という不安があるからかもしれません。

私たちは、誰かに否定されたり、評価を下げられたりすることを無意識のうちに恐れています。

その恐怖から逃れるために、相手の期待や思惑に応じて「安全な自分」を作り上げようとするのです。

しかし、その結果、どうなるでしょうか？

相手の期待に応え続けることで、他人からの評価や承認は一時的に得られるかもしれません。

でも、そのたびに自分の本音や本質はますます遠ざかり、「自分って何だっけ？」と迷子になってしまうのです。

◆「自分の思惑」に振り回されることもある

振り回されるのは、何も他人だけではありません。

実は、私たちは自分自身の「思惑」にも振り回されてしまうことがあります。

たとえば、「こうあるべき」という自分なりの理想やルール。

「私はこれくらいできる人でなければならない」
「相手を失望させてはいけない」
「弱音を吐くなんて情けない」

こうした思い込みが強くなると、誰かから求められてもいないのに、自分で自分を追い詰めてしまうことがあります。

たとえば、こんな場面。

仕事で誰も責任を追及していないのに、「自分がもっと頑張らなかったからだ」と勝手に自分を責めてしまう。

誰も頼んでいないのに、「私が助けなきゃ」と無理をして人の世話を焼いてしまう。

「こう見られたい」という理想の自分を守るために、無理をして笑顔を作り続けてしまう。

自分の思惑に振り回されるとき、そこには「こうでなければならない」という強いプレッシャーがあります。

それが、いつの間にか心を疲弊させ、「本当は何が大切なのか」という視点を見失わせてしまうのです。

◆「振り回されている自分」に気づくことから始めよう

では、どうすれば相手や自分の思惑に振り回されずに、自分の本質を取り戻すことができるのでしょうか？

その第一歩は、「振り回されている自分」に気づくことです。

たとえば、次のような瞬間に意識を向けてみてください。

誰かに頼みごとをされたとき、自分の心に「やりたくないな」という違和感が生まれていないか。

何かを決断するときに、「自分がどうしたいか」ではなく「相手にどう思われるか」を優先していないか。

「こうしなければならない」と自分に言い聞かせているとき、その理由を本当に納得できているか。

こうした瞬間に立ち止まり、「自分は今、何に振り回されているのか？」と問いかけてみるのです。

ただその問いを持つだけで、少しずつ「自分が本当に求めているもの」が見えてくるようになります。

◆自分の本質とつながるために

振り回されることを手放すためには、もう一つ大切なことがあります。

それは、「自分の本質とつながる時間を持つ」ことです。

たとえば、次のような方法があります。

一人で散歩をする時間を作る。

日記を書いて、自分の本音を整理する。

誰かの期待や評価を一切気にしない「自分だけの趣味」を楽しむ。

呼吸を整えながら、自分の内面に意識を向ける。

これらの行動を通して、他人や外界から一度距離をとることで、自分自身の声を聞き取りやすくなります。

「私は本当はどうしたいのか」「何を大切にしたいのか」という問いが、少しずつクリアに見えてくるでしょう。

◆自分を取り戻すのは「今」からでも遅くない

相手や自分の思惑に振り回されて、自分の本質が見えなくなってしまうのは、誰にでも起こりうることです。

大切なのは、「振り回されている自分」に気づき、それを手放すプロセスを始めること。

それは決して一瞬でできることではありません。むしろ、少しずつ丁寧に取り組むべきことです。
でも、そのプロセスを始めることで、あなたは自分の本当の姿を取り戻し、より自由に、より自分らしく生きられるようになるはずです。

そしてそのとき、あなたはきっと思うでしょう。

「ああ、これは私の人生だ」と。

振り回される日々を終わらせるのに、遅すぎるということはありません。
今、この瞬間からでも、自分を生きる旅を始めてみませんか？