「20代前半男警察官」嘘日記
注:警察について調べきれてないので業務内容が変かもしれませんが、フィクションということでお許し下さい。
1月13日(土)
曇り
今日は大学入学共通テストの一日目だ。交番の前を行きかう受験生たちに道中何のトラブルも起きないよう祈りながら、自分の受験期を思い出した。あの頃は難関大学を複数志望していて、ひたすら予備校に通い詰めていた。当時は「将来のこと」なんて自分で想像できる範囲を超えていた為、ただ有名で、女子が可愛いと評判で、サークル活動が活発な大学に入ることがモチベーションになっていた。今考えると計画性なんてあったもんじゃないが、あの頃の真っ直ぐさが羨ましいと思う。今日見てきたあの子たちの中にも、そういう気持ちの子がいたに違いない。そんな思春期の熱に当たって思わず彼らに挨拶しに表へ出ようとしたが、今の彼らにそんな余裕があるわけがなく、大人しく座っていることにした。そういえば田宮の方は駅前で警備の担当だと言っていた。最近は共通テストの日の痴漢被害の対策がかなり強化されていて、警戒態勢の為に動員されている。
今日も自分の方ではいつも通り、遺失届や交通違反の通報などを処理した。一番厄介だったのが喧嘩騒動で、アーケード商店街にあるパチンコ屋の前で30代くらいの男二人が殴り合いに発展したらしい。らしいというのは、もう自分らが現場に到着した頃には片方が逃亡していて、通報者の男と当事者の男が揉めている所だった。両人に話を聞くも当時の現場状況の説明にかなりの齟齬があり、唯一噛み合っていた喧嘩の元凶があの逃げた男だった為に兎に角その場を納めるくらいの事しかやりようがなかった。このような時に一番厄介なのが通報者の取り巻きでスマホカメラを掲げていた中学生だ。何度注意してもスマホ越しにしかこちらと接触しようとしなかった。他の警官が対応している隙に、好奇心からその中学生に話しかけてみた。警戒されないように、まずは彼のスマホについて触れると、嬉々としてガジェットだのスペックだのと話してきた。どうやら通報者はこの町で通報系Youtuberをやろうとしているらしく、そのガジェットの改造を餌にこの中学生をカメラマンとして雇っているらしい。こんな片田舎でそんなものに興じる大人も大人だし、中学生も少しは今日頑張っている受験生を見習って学校の勉強をしてほしいと思った。