公募戦士たちに捧ぐ記録:その6 面接次第でコネさえも覆せる


コネを覆す唯一の可能性,それが面接

みんなが気になっている「コネ採用はあるのか?」問題。結論から言えば

ありまぁす()

・・・これだけではあまりにも味気ないですが,あるかないかで言えばあります。

ただし,コネと言っても多くの方がイメージするのは,特定の(主に有力者の)先生に「ボクのお世話になった○○先生のお弟子さんがポストを探しているんだ,一つよろしく頼むよ・・・」と頼まれて採用する。あるいは,「(面接官の)教え子に職を用意してやろう・・・そうだな,あいつの経歴と資格に合わせた内容でJrec-INに募集を出すか!」いう感じのやつだと思います。一本釣りとか,そういった類のものですね。
これを仮に「ハードなコネ」による採用と言うとすれば,管見の限りでは多いのは「ソフトなコネ」による採用の方です。

「ソフトなコネ」採用というのは,例えて言えば面接の候補にA氏・B氏
C氏がいたとして,「おっ,A氏は自分がよく知っている△△先生と共同研究をしているな。よし,△△先生にA氏のことをそれとなく聞いてみよう」とか,「B氏はこの前の学会発表の後の懇親会で会話をしたけど,礼儀正しい方だったなあ」とか,「C氏は会話はしたことはないけど,若手の有力な研究者だという評判をこの前の学会で聞いたなあ」といった,「直接・間接にある程度(面接する側やその知り合いと)面識がある」といった類のものです。

最近では任期付きポストやテニュアトラック制によって,人格に問題があった場合は放逐できるようになりましたが,それでも問題が起きないに越したことはありません(それに,問題ある人物を採用すると,面接官の方が学内の立場を失います)。それよりは,一定程度の人格や能力が担保できるという意味で,「ソフトなコネ」というのは無視できない力を持ちます。

Twitterなどをみていると,「コネがない私にどうしろというんだ!」と嘆いている人もいます。しかし,「ハードなコネ」は難しくても「ソフトなコネ」は作れるはずです。具体的に言えば,学会に参加し,色々な方と研究上の交流をし,ある程度人間としての交流を持ち,もしも共同研究などのお誘いがあればそれに乗る,などです。これができないと言うことはあり得ないと思いますし,この程度のことができない人は(よほど極端に実力が突出していない限り)研究者なんかやれません。研究をする人と,研究者は違うのです。

しかし,これは逆に言えば,多くの場合「コネは実力や人格を担保するための手段でしかない」ということです。言い換えれば,実力と人格を面接官に認めさせられたなら,「ソフトなコネ」どころか「ハードなコネ」さえもひっくり返すことが可能だ,と言えます。
このうち,「実力」の大部分は書類審査の段階で把握済みです。面接で見られているのは,書類には出てこないあなたの実力と,そして何より「コイツと一緒に働けるかな?」という人格面なのです。

面接の結果は合否を左右する

他の記事で述べたように,面接に呼ばれている人は「採用してもいい」と思われている人です。よって,ある人物が面接(と模擬授業)で決定的な成功を収めた場合は,例えライバルに「ハードなコネ」による有力候補者がいたとしても普通に採用されます。これは,今の教員人事のポストは人事委員会だけではなく,教授会や,場合によっては学長や理事によって決裁されますので,それらの人に説明できない人を取るのは非常に難しいからです。サクッと言えば「ゴリ押しには限度がある」のです。特に,人事委員会の委員長が,当該募集講座の教授ではないケースは「コネだけ」で通すのが難しくなってきます

一方,逆にいうと致命的な失敗をした場合,あなたが書類選考の段階でどれほど有利であっても,採用されることはないでしょう。例えば,次に挙げる徳島大学は面接での逆転がやりやすい(あるいは逆転されやすい)大学だと思います。

https://www.tokushima-u.ac.jp/fs/7/4/0/3/2/_/201905kyoinsenko_houshin.pdf

(5) 教授会で候補者の最終選考を行う前に,複数(特別の事情のある場合を除く。)の候補者の面接及び公開講演会を行うことを原則とする。ただし,プライバシーの保護等で講演会を公開できない場合は,それに代わる適当な措置をとるものとする。

(上記より引用,強調筆者; Retrieved 2022/12/16 12:31)

「公開講演会」だと(おそらく公開質問もあるので)面接官さえ予想できないようなドギツイ質問が飛んでくる可能性は往々にしてあります。逆に言えば,それらに真摯に答えることができれば,あなたの評価はぐっと上がるでしょう。ここらの能力は,学会発表をきちんとこなしていれば自然と鍛えられているはずです。
(蛇足ですが,これだとライバルが誰かわかってしまうんじゃあないでしょうか。なかなかのプレッシャーです。)

よって,少しでも印象を良くするために,綺麗な格好をする,笑顔を見せる,挨拶をきちんとする,などのいわゆる社会人的マナーはきちんとしておきましょう。私は,必ず面接の1〜2日前に美容室に行っていました。

何を質問されるか

大雑把に言えば,教育に関すること,研究に関すること,模擬授業に関すること,大学の運営(平たく言えば雑用)に関すること,外部資金などの獲得に関すること,が質問としてよく飛んでくる内容です。私立大学の場合,学生募集やオープンキャンパスなどに関する質問もよく飛んでくる印象があります。また,あなたに教育経験があったり,現在大学などで勤務しているならば,そこでの話を聞いてくることがあります。
(例えば「成績の悪い学生をどう指導しましたか」といった具合に)

手前味噌ですが,これらに答えるためには下記URLで書いたように,事前の情報収集が必須です。特に,面接まで来ているならば,その大学の基本的な情報(アドミッションポリシーなど)は叩き込んでおきましょう。

質問は考えて意図して喋るというタイプの面接官もいますし,その場のノリで思いついたことを聞くタイプの方もいます。「XXXXを聞かれなかったから落ちたんだ!」というような不安に苛まれる人もいますが,そこは安心してください。例えば,着任後の具体的な居住地や転居時期を聞いてきたり,職階や給与について聞いてきた上で落とすということは往々にしてあります(そういう質問をする方は,大体どの候補者にも聞いています)。やられた側はたまったものではありませんが,様式美だと思って諦めましょう。
質問の1つ1つに一喜一憂しないよう,誠実に,落ち着いて答えましょう。質問内容を忘れたり,意図がわからない場合は遠慮なく(かつ丁寧に)聞き返して問題ないと思います。

やる気のない,パワハラ紛いの質問をしてくる面接官もいないではありません。明らかに応募者と関係がない(勿論公募とも関係がない)専門領域の質問をしてくるような人もいます。しかし,大体の場合はそういう質問をする面接官を,他の面接官は冷めた目で見ていますので,あなたが「大人の対応」をすることで,むしろ評価は高まると言えます。

蛇足ですが,私の経験した最も意味が解らない質問は「研究計画のXXという具体例を,理論的に説明してもらえますか?」⇒「かくかくしかじか」⇒「理論的でわからないので具体的に説明してください」⇒ (゚ω゚) というものでした。あの方が何を考えていたのかは,10年以上経過した今でも全く解りません(ちなみに採用されて辞退した面接です)。

具体的な質問項目&結果通知の時期

以下に続く有料記事では,私が実際に面接で聞かれた質問を(特定されない範囲のものだけ選択して)リストアップしています。また,面接の結果がいつ,どのように来たか,ということも書いています。
ただし,どちらも「個々の大学による」としか言いようがありませんし,場合によっては学部や担当する人事委員長によって違うケースもあります。なので,あくまでもケーススタディです。

国立大学の場合は,人事選考の規定が公開されているところも多いので,チェックしてみましょう。最近では少なくなりつつありますが,人事に関する権利が人事委員会(≒面接する人)にあるところは連絡が早い傾向があり,学長や理事に権利があるところは連絡が遅い傾向があります。

かなり具体的ですので,有料記事にしていますがご了承ください。

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