公募戦士たちに捧ぐ記録:その4 模擬授業の案内は熟読せよ

この記事に興味があるあなたは,無事に書類審査を突破した(しそうな)人でしょう。おめでとうございます。ほとんどのケースで,面接+模擬授業に呼ばれたあなたは「採用してもいい」と思われていると理解してください。採用されるまでは,後一歩です。
近年の公募では,多くの場合(筆者の知る範囲では100%)模擬授業を課すことが多いです。多くの公募戦士を悩ますのがこの「模擬授業」ではないでしょうか。

正直,模擬授業に関しては上のお2つで十分と言えば十分すぎるくらいに書いてくださっています。敢えて二番煎じをやらかすのですが,視点は色々あったほうが判断材料になると思いますので,ご容赦ください。

本記事では模擬授業や面接の準備に取り掛かる,その前段階のお話をします。

模擬授業を行う目的を理解しよう

当然ですが,採用する側も暇ではないので意味のないことはやりません。模擬授業をやるに際しては,少なくとも一定以上の意図があります。そのため,「模擬授業の案内に書いてある情報」は,言い換えれば先方が「あなたについて知りたいことを知るために必要だと考えたこと」のリストなのです。よって,面接&模擬授業案内を見て喜んでSUUM○を見るのもいいですが(やっちゃうよね),まずはその案内を熟読してみましょう。

まず,多くの場合,模擬授業の講義は指定されています。
本学のシラバスに基づいてXXXXという講義の○時間目をやってください,といったような具体的な指定がある場合。講義名のみという緩めの指定がある場合,独自のシラバスの作成を求めるケースもあります。また,稀に講義の指定がない場合もあります。
この「講義の指定」は,言い換えれば「あなたのどの力を見たいか」を向こうが宣言してくれていると理解しましょう。

1つ,具体的な例を筆者が知っている最も特殊なケースを使って紹介します。筆者が芸術系の公募に関わった際に「XXXXという講義の△時間目で,その芸術分野の作品を作る△年生の学生への個人指導をしてください。当日は,本学の△年生の学生から,(応募者から見て)異性の学生1名を指導してもらいます。」といったものがありました。その芸術の領域では,作品などの指導をする際にどうしても距離が近くなったり,場合によっては手などに触らざるを得ない瞬間が出てくるので,異性の学生に対する接し方というのは非常に神経を使うところなのだそうです。一歩間違えればセクハラですからね。よって,この模擬授業の指定をみて「面接する側が何を知りたいか」を理解していれば,当日の面接で大幅に有利になるのです。
(そして,採用された方は見事にこの条件をクリアしていました)

あなたの専門の講義を求めてきた場合(多くの場合はそうだと思いますが),それはあなたの専門家としての能力を見るためではありません。それはもう業績を見ればわかっています。それを,公募先の大学の学生のレベルに合わせる形で,どのように落とし込んでいくかという部分を見ているのです。
非常勤をやっている方で,非常勤先の講義をそのままやるような方が受かる可能性はほぼありません。なぜなら,2つの大学が求める能力と,学生のレベルは一致しないケースが大半だからです。
模擬授業を見ている教授の中には,確実にあなたの専門領域ではない人がいます。その領域に対しては,その教授と一般的な学生はある意味で同じ状況(その内容をよくわかっていない)だということを意識しておきましょう。

シラバスの作成を求める場合は,上記に加えて「カリキュラムを編成できるか」「育成する能力を具体的に示せるか」といったことをチェックしていると考えられます。
専門とは少し外れた講義を指定されるケースもあると思います。この場合は,上記に加えて専門外のことに対するあなたの理解や態度を知りたいと考えているのでしょう。いわゆる教養課程の講義を指定された場合は,その講義の内容を広く知らしめることができるか,ということを知りたいと考えているのでしょう。
講義の指定がない場合は,あなたの授業に対する工夫や,学生への接し方に強い関心があると言えます。

この他,色々なケースが考えられますが,相手がどうしてこの講義を指定しているか,という意図には注意を払いましょう。

情報は力

いずれの場合でも,大事なのは当該大学の,その講義に関するシラバスと,カリキュラムを参照することです。何年生のどの講義で,どういう役割が期待されているかをしっかりイメージしておくことが大切です。一見すると同じような講義でも,1年前期に実施するものと,3年前期に実施するものでは目的が違います。シラバスに教科書の指定があれば,できれば軽く目を通しておきましょう。その大学で行われている講義のレベルやねらいを推察することができます。
稀にですが,講義の様子などがHPなどで公開されていたり,教材とその一部がネット上で無料配布されているケースもあります。その場合はしめたものです。是非とも目を通しましょう。
ディプロマ・ポリシーやアドミッション・ポリシーなどを踏まえた講義をすることが重要なので,それらもチェックしておくとなおよいでしょう。

模擬授業の様態に注意せよ

模擬授業の通知には,どのような様態で模擬授業を実施するかも書いてあるはずです。面接をする教員は確実に参加しますが,それらの教員が学生役を実施する場合,実施しない場合,稀にですが本物の学生を呼ぶ場合,などがあります。
教員が学生役を務める場合,学生とのやり取りや具体的な指導などを相手がチェックしたいと考えていると言えます(例えば,講義中に聞かれた問いに頓珍漢な回答を学生が返したときにどのように反応するか?)。そうでない場合は,俯瞰的な立場からあなたの教育に対する姿勢をチェックしたいと考えていることが推定されます。
本物の学生を呼ぶケースは,よりリアルな学生の反応に対するあなたの態度や臨機応変さ,授業の空気の作り方などを見ていると推定されます。

また,用意される道具も書いてあるはずです(応募者側に聞いてくるケースもあります)。これらの選択の仕方も,面接する教員が何を知りたいのかという一助になっています。例えば,安全のために取り扱いに注意が必要な実験器具を指定された場合は,学生に対して安全をどの程度配慮できているかをチェックする,といったことが考えられるでしょう。

わからないことは聞いておこう

あなたに連絡をしてきた方が不慣れだった場合,模擬授業に際して情報が不十分であることは往々にしてあります。例えば,模擬授業の会場に何を用意しているか,何を持ち込んでいいか,といったことは,気の利く方なら書いてくれていますが,書いてないこともしばしです。
こういった場合は,(もちろん,社会常識を維持した丁寧な文面で)メールで問い合わせるとよいでしょう。それで気分を害するような人はいませんし,逆に言えばそれで気分を害するような相手の大学に行くと苦労すること必至です。

模擬授業の設計と中身に続きます。
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