SUMESHI、冬を写す
この日は前もって会う約束をしていた。
たしか、彼女が新しくMacを購入したいということで、
その相談に乗るべく新宿で落ち合うつもりだった。
モデルとは別にクリエイターの顔を持つ彼女には、
相応のMacを購入してほしいという気持ちがあったのだ。
当日、まさかの大雪。
この約束も、手に乗せた雪がすぐ溶けて消えちゃったみたいに
中止か延期にでもなるかと思っていた。
しかしこの日の雪はとても彼女によく似て、頑固だった。
この日は本当に寒かった。
肌に降り注いできた雪は容赦無く体温を奪っていくし、
足下はみぞれみたいな半溶けの上にぼたっとした雪がどんどん積み重なり、
カフェから出てすぐに靴下までビショビショになってしまった。
それでも東京の新宿で、こんなに雪が降っている状態で
こんな綺麗な人を撮影できるタイミングなんて、きっとそうそう無いことだ。
それが直感的にわかっていたのか、
全身雪だらけになりながら夢中でシャッターを切り続けた。
nikonのオールド35mmの黒縁レンズフードに触れると、
ボコボコに曲がったフード部分はキンキンに冷え切っていた。
そもそもこんなに雪が降っているのに、
撮影させてくれというのもちょっと烏滸がましいことだ。
風邪を引かせてしまうかもしれない。
こんな雪だらけの状態で、彼女を電車に載せることになる。
しかし彼女は、すっかり乗り気だった。
嫌な顔ひとつせず楽しそうに雪降る新宿の道を傘も差さずに歩き続けてくれた。
彼女と出会ったのは、まだ自分がスタジオマンだった頃。
10年近く前からの付き合いである。
そう頻繁ではないけれど、ずいぶん長いスパンで撮影させてもらっている。
ずっと撮影をさせてもらうということは、ありがたいことだ。
おそらく撮影していた時間は、ほんの10分ちょっと。
でもこの日のことは今でも鮮明に残っている。
とても寒い日の、熱い想いが。
model:yasuha endo