「あの子」の気持ちを、知る
ひょんなことから、師匠の「ぬいぐるみ」をリーディングすることになりました。
少しくすみがかったグレージュの色味に、手と耳がひょろりと長く、お口を「への字」に結んだそのうさぎさん(以下うさちゃん)は、どこか目が寂しそうなのが印象的でした。
言いたいこと、思ってることは沢山あるのに、どこか「魂を抜かれてしまった」ような、中身はもぬけの殻状態。
ひょうたん型の胴体はグッタリしていて、それらの様子から、もう何かを「諦めて」しまっているようにも見えました。
『痛い―』
それが、私がうさちゃんから聞いた第一声でした。
そのことを師匠にお伝えしたところ、こんな話を聞きました。
そのうさちゃんは、昔、師匠の息子さんがまだ小さかった頃、彼の友達が遊びに来た時に「要らない」と言って、そのまま置いていったものだ、と。
「そうか」って、思いました。
うさちゃんはそれ以前にも、そしてその時も、だいぶ「痛い思い」したんだろうって。
師匠に、「この子はどうして欲しいか」を聞かれ、私は、「何か覆うものが欲しい。タオルでもなんでも、何か体(お腹)をくるんでもらうようなものがあれば、これ以上痛みに晒されなくて済む」とお伝えしたところ、即興で師匠が作ってくれたのは真っ赤な毛糸で編まれた、あったかそうなエプロンでした。
最初はワンピースだったそうですが、「なんか違う」と、解いてエプロンにされたそうで、「確かに、うさちゃんは『着たい』っていうより、『覆って欲しい』感じだったからな」と、後で勝手に腑に落ちた私がいます。
エプロンをまとったうさちゃんは、それはなんとも誇らしげで、まるで鼻歌交じりに、「見て見て」と言わんばかり。
その表情がとても愛くるしく、「よかったな」って、何だか妙に安心したと言うか嬉しいと言いますか、そんな私がいることにも気付きました。
今回は「ぬいぐるみ」でしたが、今後はそれだけに留まらず、その人が何かしら想い入れのある「物」を通じての「あなたへのメッセージ」を、もっと色々な方向から、読んでみたいと思いました。
ちなみに…
師匠のうさちゃん、次は、紺色メインのチェック柄のお洋服を着たいそうです。