好きな時に好きな場所で。気ままな2人のメゾネット生活
「平坦な景色が続くより、坂や川などの高低差があるほうがおもしろく感じる。家も同じで、さまざまな場が共存する立体的な空間を求めていました」というSさん。 その言葉通り、こだわりのメゾネットにさまざまな表情の空間を共存させている原宿ST邸をご紹介します。
2階建てという特長を活かして、1階はデザインの仕事をされているSさんのワークスペースに、2階は2人のプライベートスペースに。集中できるワークスペースから階段を上がれば、インナーガーデン、広くて気持ちいいリビング、コンパクトで心地いい寝室など、どれも同じ家とは思えぬほど多彩な空間が、ゆるやかに役割を分かち合っています。
実を言うとSさんとTさんは、ちょっぴり気分屋。一緒に楽しく盛り上がっていたかと思えば、急に独りになりたくなったり・・・そんな自由気ままなお2人。だからこそ部屋の区切りにとらわれず、季節や天気や気分に合わせてどの空間も楽しめる家が必要でした。まるで猫のように過ごせる、気ままな住人のための表情豊かな家。 今日もお2人はこの空間で好きなときに、好きな場所でくつろいでいるのです。
出会えたのは、運命のメゾネット
もともと都心の築古の賃貸マンションに住んでいたお二人。こだわりの家具に囲まれ、自分たちのスタイルでゆったりと丁寧な暮らしを楽しんでいましたが、そのマンションの隣に新築のマンションが建つことに。
光の入り方や、落ち着いた雰囲気も損なわれてしまいそうだし引っ越そう、そして、どうせ引っ越すなら、デザインの仕事をしているSさんのワークスペースをオーダーメイドでつくりたいと考えました。当初はコーポラティブハウス(※)で探そうとしたものの、意外とオーダーメイドの自由度が低いことが発覚して断念。
中古マンションをリノベーションするのがいいかも、とスマサガ不動産に来てくれたお2人の物件に関する要望は明快でした。「都心にこだわること」そして「時が経っても価値を持つ物件であること」、最後に「刺激がある住空間であること」
そうしていろいろな物件を探していくうちに出会ったのが、1つの住居が2階建てで構成されているメゾネットのマンションでした。これが、ワークスペースをつくるという目的にハマりました。1階をワークスペースに、2階をプライベートスペースにすれば、家に仕事場と生活場を持つという利便性がありつつも、階段が自然と2つの空間を分け、気分の切り替えもできるのです。
最初は候補になかったものの、内見するうちにメゾネットしかない、と確信したお2人。最終的に、渋谷区にあるヴィンテージのメゾネットを購入することに。落ち着いたたたずまいがお2人の雰囲気にもピッタリでした。
※コーポラティブハウス:入居希望者同士が集まって組合をつくり、自分たちで土地の取得や設計、建設の手配まで行ってつくる集合住宅のこと。 ジョン・レノンが生前住んでいたダコタ・ハウスなどが有名。しかし、現在の日本では民間のプロデュース会社によってつくられる場合がほとんどで、住み手の自由度は比較的低い。
壁を解放し、すべてが有機的につながる家へ
リノベーション計画の際にイメージしたのは「階段を中心に外へ広がっていく空間」でした。 壊せない構造壁以外はすべて無くし、できるだけ仕切りや扉をつくらず、すべての空間と階段が有機的につながる空間。
まず、玄関のある7Fがワークスペースになっていて、そこから吹き抜けのロフトに登っていくような開放的な階段を上がると、まるで街を歩いて路地に吸い込まれるかのような設計に。
階段の左手には、篭れる感じが心地いい寝室。階段をまっすぐ行くとお2人が趣味の盆栽と金継ぎに集中できるインナーガーデン。その場所と一体になった浴室は、モルタルとブロックを使って造作したもの。
階段の右手には「家の中で最も居心地がいい場所」というリビングスペース。キッチンや本棚は、お二人のセンスと感性を最大限に生かし、色味や素材にこだわった造作家具。
階段を下りると、玄関からモルタルの土間でつながるワークスペースが広がり、このメゾネットのポテンシャルが最大限に発揮されています。
それぞれの空間に個性がありつつも、ゆるやかにつながっていることで、SさんTさんが自由気ままに移動できる、お二人らしい空間となりました。