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常に変化する家のつくりかた

うかがうたびに変化する家があります。まるでガウディの代表作「サクラダ・ファミリア」のように変化を続ける家。
シンプルで余白が多く、そこに住むご夫妻曰く「退屈しない家」は、最初からそのコンセプトありきで作られた家だと思っていましたが、それは徐々に整理されて生まれたテーマだと話してくれた、用賀Y邸の事例です。

用賀Y邸リノベーション

DATA

エリア 東京都世田谷区(用賀周辺エリア)
家族構成 夫婦+子供1
プラン 2LDK→1ルーム
面積 78.67㎡(壁芯)
構造 RC造
所在階 5階建の5階
主採光 南(四面採光)
建築竣工年 1974年(昭和49年)
不動産購入 2017年3月
リノベ完成 2017年9月
権利 所有権
工事費用 950万円(設計料・税込)

CREDIT
プロデュース・設計  |  不動産
施工  |  株式会社BACON
写真  |  平林克己


一度、考え方を整理してみる勇気

お引越直後の様子。部屋に余白をつくることで、日々自分たちでアレンジしながら楽しく暮らす

二人にとって、物件探しは時間がかかるイメージがあったので、早めに行動を開始したといいます。いろんな情報を調べる中で、スマサガ不動産のHPにたどり着いたそうです。

そこで、会社のスタンスや親身になって相談に乗ってくれそうな雰囲気に共感し、不動産セミナーにも足を運び、個別面談を経て物件探しが始まりました。物件を数件ほど内見した後、よりしっかりとした資金計画など、本格的な準備をしてから再度住まい探しにのぞむため、物件購入から一度距離を置くことを選択しました。

実は、物件探しから距離を置くことが、その後の家のコンセプト作りの整理に大きな意味をもたらすことがあります。

急がば回れで、決まった住処

自分たちで手をかけながら住むことを楽しむため、あえて下地現しにした天井とラーチ合板の床。壁は生活しながら、Iさんご夫婦がDIYで塗装したもの

物件探しから距離を置いていた期間は、頭の片隅にそのことを思いながらも基本的には特にアクションを起こすことなく過ごしていたお二人。
約1年間の準備期間を経て、物件購入のための内見を再開することになりました。1日3、4件の内見を2ヶ月程度続ける中で、希望していたエリアに現在の物件を見つけます。決断したポイントは、通勤圏内であること、共用部分の管理が良いこと、見てグッとくること。金額はもちろん、広さや眺めなど複合的な判断で決めたといいます。他のエリアでも、広くて管理は良いもののセンスが合わず断念した物件もありました。この用賀の物件は、内見をする前にも外観を見に行ったり、印象が既に良かったというのも決め手になりました。

住まいのコンセプトが生まれた秘密

床の黒い塩ビタイル、ラーチ合板と白タイルの壁にステンレスの業務用キッチン。
設計者と検討を重ねながら選択したこともあり、様々な素材が空間でうまく調和している

購入当初からほとんどスケルトンだった部屋を、実際に素敵な部屋に作り込んでいくのに重要なのは、もちろん設計です。今回ご紹介している用賀Y邸、設計スタッフとの打合せは4ヶ月間、22回に及びました。

先にも触れましたが、当初は現在のようなあえて「未完成の家」をつくろうとしていた訳ではなく、家に反映したい要素がてんこ盛りで、どちらかと言えば、やりたいことを盛り込んだデコラティブな要望がたくさんありました。

そんな志向が決定的に今の方向性へと転換したのは、準備期間の1年間でした。お二人が考えていた家に関する様々な理想や条件が、緩やかに整理されていき、自然とシンプルな方向へ気持ちが向かっていたといいます。さらに、スマサガ不動産のオープンハウスにも参加して出会った目黒I邸の設計にも多くの影響を受けたそうです。

(お二人が影響を受けた目黒I邸リノベーション事例はこちら)

設備配管をつなぎ合わせて作ったオリジナルの水栓

実際に完成した家のレイアウトで、とても印象的なのが大きな土間です。この部分は、当初からDIYを行う場所としてお二人が要望していたもので、家全体をワンルームのように使いたいという希望もありました。

他にも印象的なのが、どちらかと言えば無機質に見える業務用キッチンを採用した造作のキッチンスペースです。機能美や工業製品が好きな二人にとってシステムキッチンは好みではなく、業務用キッチンに憧れがあったといいます。機能性が高くて無駄がなく、家にいるのに厨房のような雰囲気が出るように周りの素材なども工夫して仕上げたスペースです。

最後に待ち構えていた難問は、予算との戦いでした。特に希望していた床の素材は、予算との整合性を取りながらどうやって現実的なところに落とし込んでいくか、葛藤があったと話してくれました。

今回の用賀Y邸は、自分たちが本当に何を求めているのか?という整理が準備期間にできたことがポイントとなり「ずっと作り込んでいける部屋」というコンセプトが完成したのでした。

実際に住んでみて、どうですか?

部屋中央の箱の中には浴室などの水回りがまとまっている。この箱を中心に回遊性がうまれた

それまで住んでいた部屋でも自分たちで工夫しながら余白を楽しむ生活をしていましたが、今回の部屋ではより余白の多い、良い意味で「未完成の家」を作りたいと思い、最初はその感覚を養うところから始めました。

マンションの最上階で、窓も多い環境なので、時間帯ごとに光の差し込み加減によって違う場所がハイライトされるのがお気に入りポイント。西側に光があたる加減が特に好きだといい、設計したスタッフもその部分を気に入っています。

以前住んでいた家では、DIYをすると部屋に余裕がなくなり、DIYだけしかできないような環境でしたが、今は広い土間があるおかげで、DIYをしていても他のことも出来る環境になり、とても満足されています。そんな土間のあるリビングは、最近までずっとレイアウトの試行錯誤を繰り返していたという、広さゆえの嬉しい悩みもあったり。

住み始めから作り込んでいく過程は、住むことを作り上げることを勉強しているような段階だと語るお二人。そこからモノたちを上手に見せていきたい想いがひしひしと伝わってくるように、家の中は日々進化しています。
この家に何をあてはめればもっとグッとくるのか、まるでパズルの最適なピースを探すように、ゆっくりと生活をつくっていく面白さを探求しているお二人。そんな人たちが住む家は、いつ伺っても、新たな発見が見つかりそうな雰囲気が佇んでいます。

「常に変化する家の作り方」 用賀Yリノベーション


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