居候、20代で家を購入する!
「賃貸を借りたこともない、結婚もしていない25歳の僕が、最初の住まいで家を買ったら面白いと思ったんです」
25歳独身の山本さんは、サラリーマンの特権である住宅ローンを活用して、在職中に家を買うことを決めました。山本さんは当時、パートナーの秦さんが賃貸で借りていた家で同棲していました。
若くして家を購入するのはリスキーと感じる人がいるかもしれませんが、話を聞いていると、実はしっかりした将来設計の結果であるという印象を受けたのです。
自由になるために、家を買う
「スマサガさんは、パートナーのオフィスを設計していただいたときからの知り合いです。そのときの関係値があったので、不動産購入も躊躇なく踏み切ることができました」(山本さん)
スマサガとは、物件選びやリノベーションの方針について、すぐに意気投合できたそうです。中でも、住まいを所有して自由でいるためには「出口戦略」を持つことが大事という点について。だから、自分たちの住まいを自分たちの手でプロデュースするという感覚で、資金計画から物件選定、リノベーションの設計まで一緒に進めることができたといいます。
「家を買うことを通して、同世代同士や、両親とも様々な価値観のギャップを感じました。家を買う決断は気軽ではありませんでしたが、一方で働き盛りの20代は家と仕事場の往復が想定され、必然的に自宅いる時間は長くなります。その中でどう人生のクオリティを高めるかを考えると、家に投資をするのが合理的だという結論に至りました」(山本さん)
「買ったからといって一生住まなきゃいけないマイホームという感覚もないので、一世一代の買い物ではないという意味では気軽だったかもしれません。一般の方が家を買うことに対して抱いている概念は、腹を決めるとか身を固めるというニュアンスだと思いますが、私たちはより自由になるための選択肢でした」(秦さん)
自分の気持ちに蓋をして我慢するのか、育てていくのかの違いだけ
お二人は、賃貸から自由になる、自分たちのサイズにあった身の丈にあった場所に住むという観点から、自分たちがプロデュースした不動産を購入することで「より自由になる」と考えていました。誰かのものに囲まれているのではなく、自分のものに囲まれていることが自由だと言います。
少し前の世代だと、無理してローンを組んで会社に縛られるというイメージを持っている方も多く、買うことが不自由だと感じる方もいると思います。しかしお二人は、家を買うことは無理をするのではなく、自分たちの社会的信用度に合ったお金を借りて家を買うことで「ちょっと仕立てのいいスーツを背伸びせず買ったイメージ」だと話します。
お二人の考え方はとても魅力的ですが、多くの人はそのような考え方ができないのではないか?と。。。単刀直入に聞いてみました。
「たぶんみんな同じ考え方を持っているんです。自由でいたいという気持ちを持っているんです。その気持ちが自分の外に出ているかいないか、という話だと思います。私たちも不安がないわけじゃないのですが、チャレンジしたい、自由になりたいという思いの比率が違うのだと思います。
私たちはチャレンジや自由に対しての気持ちを育ててきました。みんなくすぶっているんだと思います。自分の気持ちに蓋をして我慢するのか、育てていくのかの違いだけだと思います。私たちはたまたま20代でしたが、それが40代の人もいれば60代の人もいるんだと思います」(秦さん)
契約までのタイムリミットはなんと1ヶ月!
山本さんには諸事情があり、探し始めから1ヶ月以内に物件を契約したいと考えていました。そのため、契約の手続きが1〜2週間とすると、2週間以内に物件を決める必要がありました。
「当初は代官山や中目黒が候補でしたが、街は好きだけど、内見すると物件の雰囲気が違うなと思うことが多かったんです。そこから現実的にこの短い期間で買える物件と出会う方針を探っていきました」(山本さん)
一度申し込みを入れたものの土壇場で購入できなかった物件もあり、タイムリミットが近づきつつあった頃、スマサガから新たな物件候補の報告がありました。
「最初に具体的に希望されたエリアではありませんが、赤坂に立地の価値と物件価格のバランス的に山本さんの購入コンセプトに合致して最適と思える物件を見つけたので、ぜひ内見しませんか?」という話でした。
「もともと赤坂が職場だったので、正直、赤坂周辺は購入希望エリアではありませんでした。ただ、赤坂周辺でも乃木坂に近いこのエリアならいいなと肌感はあったので、最終的に購入を決断しました。最後の最後のタイミングでした」(山本さん)
「間取り図を見たときはピンときてなかったのですが、実際に足を運んでみると、あ、いいね、という感じでした」(秦さん)
山本さんは立地を、秦さんは間取りを重視していました。急いでエリアや物件の雰囲気などを絞り込み、バランスを考えながらお二人といっしょに物件探しをし、ギリギリで購入することができました。
自分たちにとって、必要なものと必要でないもの
今回の物件では銀行からのローンは物件購入に当て、リノベーションはお二人で資金を出し合って進めていくことにしました。
「最初はあえて予算を決めずに、スマサガさんに任せて設計をしていきました。まずは、既存の空間が持つ可能性を最大限に引き出すデザインをいっしょに考えたかったからです。スマサガさんは、同じプロジェクトのメンバーというイメージ。同じ目線で同じゴールに向かいました」。(山本さん)
山本さんは家に対して特別なこだわりはなく、いろんなお友だちの家に行って、どこでも居心地よくいられるタイプの人。秦さんは、部屋に仕切りがあると隣の部屋が気になってしまうので、オープンにして全て見えているのが心地良いという感覚がありました。
そこで、大枠の間取りをデザインするにあたって、すべての壁や床、天井を取り払ってスケルトンにした空間の真ん中に箱を置き、その周りを回遊できる動線を考えました。そして、間仕切りの代わりに床の段差を設定し、壁がなくてもいろいろな居場所が自然に生まれるような設計にしています。このコンセプトから始めていって、お二人の暮らしに必要な要素を詰めていきました。
「今の自分の好き嫌いで判断してしまうと、そこから何も変わりません。自分も変わっていくし更新されることがわかっているので、今の状況にしがみつきません。
最初はカウンターキッチンが欲しいと思っていたのですが、私がカウンターキッチンに求めていたことを別の方法で解決した方がこの空間がより良くなりそうだという、スマサガさんのプレゼンテーションに衝撃を受けて。
図面でいくつかのキッチン配置のアイデアを見せてもらい、『あ、カウンターキッチンいらない』と思いました。そこからいろいろリノベーションが進めやすくなりました」(秦さん)
見積もりが全て出た時に、自分にとって本当に必要な要素がどれなのかがわかります。最終的な予算を決めて、そこに向けて見積もりを調整するには多少なりとも要素を削ぎ落とすことになり、自分の潜在意識と真剣に向き合う必要が出てくるからです。
例えば、浴室では扉をなくしました。もちろん、扉がなくても成立するように空間の寸法を設計で調整してもいるのですが、実際に生活してみても扉がないことで問題は全くなかったと言います。要素を削ることは必要なものを研ぎ澄ますことであり、悪いことではありません。
「削らなくてよかったのはウッドデッキです。見積もりの中で大きなウエイトをしめていたウッドデッキですが、それがあることで空間の質が大きく変わるものだったので、良い選択でした」(山本さん)
「設計では自分の常識を疑った方がいいと思います。プロに任せて、自分たちの望んでることを引き出してもらうようにすると、想定外のいいものが生まれる気がします。そうすると、自分の好きなものがレベルアップするので、おすすめです」(秦さん)
半年住んでみてどうですか?
「買うまでのプロセスの中でいろいろなものを得ることができ、自分たちが人生に求めているものを、ひとつコンプリートした感じがあります。帰る時間が早くなり、家で仕事をしなくなったことで、生活がより丁寧になりました。大きな変化を求めて買ったわけではないので、これからは楽しむフェーズです」(秦さん)
「自分の人生の中での未体験ゾーンを選択するというチャレンジでした。家を買うことをやったことがある状態にできたことに意味がありました」
(山本さん)
現在では、山本さんはベンチャー企業を立ち上げており、お二人の仕事やライフスタイルに合わせて家をカスタマイズしていくのが楽しみだと言います。今後、海外に住みたいという夢もあるそうで、その際にはこの家を売るか賃貸に出し、お二人のステップアップにも一役買いそうです。
▼乃木坂Y邸の事例写真はこちら
▼メディア掲載